以前働いていた税理士法人は会社の顧問をメインとした、いわゆる一般的な総合型の事務所だったそうです。
　その中でもやはり相続は起こるので相続業務も行いますが、普段力を入れている業務が会計や法人税が中心だったため、相続税に関して強くはない事務所だったそうです。河口さんはこのままではいけないと、自分から積極的に相続業務を行っていました。
　ですが、法人顧問の担当案件数が多く時間的な余裕がなかったことや、ご自身の理想とする相続案件への取り組み方が思うようにできないこと、また、税理士法人との方向性の違いから独立を決意されました。
　その経験から、現在はしっかりとお一人おひとりと向き合って一緒に相続に対して考えていけるよう、時間を確保してお仕事をされていらっしゃいます。

　では、なぜ河口さんは相続を専門としたいと考えられたのでしょうか？
　それは、以前働いていた税理士法人で担当した相続案件がきっかけだったそうです。
　 元々河口さんが担当していたお客様に経営者の方がいらっしゃいました。その方のお父様が亡くなられたことがきっかけで、河口さんは相続業務もすることになりました。
　ですが、その経営者の方は妹さんとはお世辞にも仲が良いとは言えない関係性だったそうです。
　そのため、通常ならまとめてご兄妹の申告書を作るのですが、その時は兄である経営者の方の申告書は河口さんが、妹さんの申告書は別の税理士の方が作成しました。
　しかし、遺産分割協議の際、お互いの見解において利害関係が重要視される部分で相違があったため裁判になり、結局決着がつくまで５年もかかりました。
　河口さんは妹さんについた税理士の申告書を見たとき、自分もこんな申告がしたいと思いました。というのも、その税理士さんは名の知れた先生だったそうで、とてもクオリティの高い申告書を提出されていたそうです。
　税理士としてこうありたいという目標ができたことが、河口さんが独立を決意する一つの理由となりました。
　また、この件がきっかけで、「相続において重要なのは相互理解であり、生前にしっかりと地ならしをしていれば、こんな長期に渡って兄妹が争うこともなかったのではないか」と思ったことも独立へのきっかけとなったとのことでした。
　ただ、そのためには長い時間をかけて根気強く依頼人と向き合っていく必要があります。
　相続は人生で何回も起こることではないですが、その際揉める相手は家族です。
　１回の申告で家族の形が壊れてしまわないようにするためにも、河口さんはしっかりと余裕を持って向き合える働き方を選んだのです。

　河口さんは、相続手続きにおいて税務は最終的な結果にすぎず、その前に揉めないようにすること、納税資金を確保することといった事前対策が一番大事だと考えていらっしゃいます。
　そのため、まずは相談者に信頼して心を開いてもらえるよう、河口さんは相談者としっかりと時間をかけて向き合われます。
　財産状況を教えてもらうのと、心を開いてもらえるか、というのは全くの別物だそうで、心を開いてどんな小さな不安でも遠慮なく話してもらわないと、揉めないための解決策というのは見えづらいそうです。また、財産状況を教えてもらっただけだと、例えば後から隠し子がいたとか、隠し財産があったということが判明した場合など大変なことになります。
　なので、そうならないためにもお子さんのこと、パートナーのこと、財産のこと、ご本人のルーツなどをしっかりと把握した上で、他のご家族との関係性を見ながら財産の分け方について考えていきます。
　単に税金が安くなる分け方ではなく、相続人の人たちが納得できる分け方をご提案するので、ケースバイケースではありますが、生前対策には通常２年～５年ほどはかかるそうです。

詳しい生前対策についてはこちらの専門家コラムをご覧ください。

相続は事前対策が肝です！残す方はしっかりと意思表示をしましょう