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■専門家インタビュー

2021/10/29

相続は事前対策が肝です!残す方はしっかりと意思表示をしましょう

今回はかわぐち税理士事務所代表の河口正剛さんに、相続の事前対策についてお話を伺ってきました。


揉めないためには被相続人の意志表示が何よりも大切なんだとか。

生前対策についてお考えの方必見です。ぜひご覧ください!


聞き手:こんにちは。よろしくお願いいたします。
河口さんは生前対策を重要視されていらっしゃいますよね。それはどうしてですか?

河口さん:相続で揉める場合、相続人が相続する財産の分け方に対して不満を持ち異議を唱えるケースが大半だからです。

聞き手:そうなんですね。では、具体的にはどういった揉め事が起こるんですか?

河口さん:揉めるのは不動産の相続に関係することが多いですね。例えばこういうケースです。
お父さんが賃貸業をやっていてそれを長男に継がせたいと考えている、しかし、長男の下には弟、妹がいるとします。
いくつも不動産を持っていれば、これはあなたの、こっちはあなたの、と分けることができますが、不動産が1つだった場合に長男が継ぐと、弟妹は不満に思います。お金と違って不動産は分けることが難しいですし、大きな資産である不動産をお兄さんが継ぐことで弟、妹は「お兄ちゃんばっかりずるい」と思ってしまいます。
他にも、お母さんはすでに亡くなっていて、お父さんの相続だとします。
残されたのは姉妹で、姉は家を出ていて、妹がお父さんの生前に実家で同居していたら、不動産は妹へ行くことが多いです。
ですが、ここでもやはり姉からすると「妹だけ相続して不公平」といったことになりやすいんです。

聞き手:1人だけが大きな財産を継ぐとなると、やはり不満がでるのも仕方がないように思います。
では、これらはどういった対策をすればいいんですか?

河口さん:例えば被相続人は事前に遺言を残して「後継者には事業と不動産を継がせるけど、他の兄弟には損にならないようお金を渡すからね」というように気持ちが分かるようにしておく必要があります。
不動産が分けられない分、お金で決着をつけられるように対策をしていきます。

聞き手:分けることが難しい不動産の代わりに、それ相応のお金の準備をしておくのはいいですね。
ですが、不動産をお持ちの方は意外とキャッシュが手元にない方も多いと聞きますが、その辺はどうなんでしょうか?

河口さん:そうですね。仰る通りで、不動産を多く保有されている方は、その不動産の価値に見合う現金をあまりお持ちでない傾向があります。
修繕費や管理費、借入金の返済等があるため、お金が貯まりにくいんです。
なので、まずはその方の相続税の計算を行い、そこからどれだけのお金が足りないのかを調べます。
そして、不動産で収益が入るようにしたり、場合によってはお金を作るために不動産を売ることも視野に入れて対策を練ります。

聞き手:不動産の対策というと、民事信託、家族信託を検討される方もいらっしゃるかと思いますが、いかがでしょうか?

河口さん:私は、信託は、「遺言の代わり」であったり、お父さんが色々と実権を握っていて、利益だけは欲しいけど管理は息子にしてほしい、というような「役割分担」には最適だと思います。
そのためには、被相続人がまずはどうしたいのかという意思表示が何よりも大切で、その手法として民亊信託や遺言を活用していくことが必要だと考えます。

聞き手:そうなんですね。

河口さん:まずは、被相続人が「自分が亡くなった後、財産をどうしたいか、誰に継がせたいか」というのをはっきりと決めてもらう必要があります。それがわからないと私も対策を練れませんからね。
また、どうしたいかというのは、お金を作るといった技術的な問題だけではなく、気持ちの問題が重要です。

聞き手:財産をどうするか、ではなく誰にどんな財産を継がせたいかを考えるのは時間がかかりそうですね。

河口さん:はい。「うちの子どもたちは仲が良いから大丈夫」と仰る方も多くいらっしゃいますが、蓋を開けてみたら仲が悪くなるというのもよくあるんです。
縦の関係である親がいれば主張をしにくくても、兄弟は横の関係なので、双方が主張しだしてまとまりがつかなくなりがちです。
そのため、お父さん、お母さんがどうしたいかをしっかりと考えて、家族に伝えてもらうことが重要です。

聞き手:親の前だと心配させないようにとか、良い顔を見せようというので、わざと仲良く振る舞うこともあるかと思います。
河口さんは、生前対策を考える方とはどのくらい時間をかけて相談にのっていらっしゃるんですか?

河口さん:長いお付き合いになることが多いですね。時間も回数も重ねていきます。
お会いする頻度でいうと3か月に1回くらいが多いです。
元々顧問をしていてよくお互いを理解していたとしても1年以上はかかりますし、1から関係性を作っていくケースですと、通常は3年~5年ほど時間をかけて対策を練っていきます。

聞き手:とても時間がかかるんですね。また、それだけ時間がかかるなら早めに対策をとる必要がありますね。

河口さん:そうですね。また、私は何よりも心を開いていただくことを最初の1歩と考えています。
そうでないと申告にも影響してきますから。

聞き手:というとどういったことでしょうか?

河口さん:漏れの無い申告書を作るためには、やはり隠し財産、相続人などの情報を把握して、きちんと申告していくことが重要です。
また、その方の死後、ご家族に説明するときでも「なぜこう分けているのか」ということをしっかりと説明する必要があります。
その為には、まずは被相続人となる予定の依頼者の方に心を開いて頂いて、ご本人のルーツやご家族のことなどをお話しいただく必要があります。
税理士の本業からは外れてしまうかもしれませんが、地ならしをしっかりとしておかないと相続の仕事はできないと考えています。

聞き手:それだけ被相続人に寄り添った相続、生前対策ができる方も少ないと思います。

河口さん:私は、専門家は専門サービス業だと思っています。究極的なことを言うと、顧客満足度が大切です。
相続における生前対策は調整することが主な仕事で完璧なものはないんです。どっちかが財産の配分が大きくなれば、片方は下がりますし、でもそうすると相続人は不満を持ちますよね。なので私は多少の不満は上手く抑えて全体を見ながらしっかりと収まるようにしていきます。
私が依頼者の方によくお伝えするのが、「平等に分ける」ではなく、相続される方の属性や役割に応じた「公平性」を重視して考えていただきたい、ということです。
ですから、平等ではないので相続人間で相続する財産におのずと差が出ますが、その差の意味を家族でしっかりと共有していくことがバランスの取れた相続に繋がっていくと考えています。
全体がしっかりといい形に収まって皆さんが納得する形になれば満足して頂けますし、それが専門家のサービス提供だと考えています。
税計算、財産評価を下げる、節税などは「当然」のことで、その前に何ができるかという部分が専門家としての差別化になると考えています。

聞き手:とても素晴らしいお考えですね。

河口さん:中には生前対策が1年くらいで終わる方もいらっしゃって、「こうしたい」という意志が固まっていればその後の相続になったときも揉め事は起こらないんです。
しかし、どうしたいのか、どうすべきかがわからないから皆さん専門家へ相談をしているんだと思います。
私は「ゆっくりやりましょう」と声をかけて、その方に合った良い期間で対策を進めていきます。

聞き手:相続は事前対策が肝になってきますね。
また、意外と生前対策がどのくらいかかるものか知らない方も多いと思うので、貴重なお話がきけたかと思います。
本日はありがとうございました。

河口さん:こちらこそ、ありがとうございました。

詳しくはかわぐち税理士事務所紹介ページをご覧ください。

はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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