■遺言
2021/04/10
遺言がある場合の相続について
被相続人(亡くなった方)が遺言書を作成したことを知らせずになくなるケースは珍しくありません。そのため、被相続人が亡くなって遺品整理をしている最中に遺言書が見つかった場合は驚く方も多いと思います。しかし、見つかった遺言の種類によっては、誤った行為をしてしまうと、法律により5万円以下の過料が科されてしまう可能性があります。
遺言によって取るべき手続きが異なりますので、しっかりとした知識を身につけ、適切な対応ができるようにしましょう。
今回は、被相続人の遺言書が見つかった場合の相続手続きについて詳しく説明していきます。
遺言の有無を確認する
被相続人が亡くなり相続が開始したら、遺言書がないかを確認しましょう。遺言書は単に被相続人の想いを綴った手紙ではなく、自分の財産をどのように扱ってほしいかについて書かれた書面です。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3種類がありますが、主に自筆証書遺言または公正証書遺言で作成されることが多いです。
自筆証書遺言の場合は、被相続人の自宅で保管しているか、もしくは信頼できる友人に預けている可能性が高いため、身内のほか友人・知人にも確認し、自宅も探してみましょう。
また、2020年7月から「自筆証書遺言の法務局保管制度」がスタートしました。法務局に被相続人の遺言が保管されていないかも忘れずに確認してください。
公正証書遺言の場合は、遺言の原本が公証役場に保管されているため、全国の公証役場で遺言の有無を検索することができます。相続人であれば照会できますので、確認してみましょう。
では、被相続人の遺言が見つかった場合には、どのような手続きを行えばよいのでしょうか?
自筆証書遺言が見つかった場合
自筆証書遺言が見つかった場合は、勝手に開封してはいけません。
自筆証書遺言は、被相続人以外は内容を知らないことが多く、勝手に開封してしまうと内容が改ざんされたとしても分からないからです。誤って開封してしまった場合は、法律により5万円以下の過料が科されますのでご注意ください。
自筆証書遺言が見つかったら、そのままの状態で家庭裁判所にて「検認」の手続きを行います。検認とは、相続人に対し遺言の存在を通知し、遺言の偽造・変造・隠匿・滅失などを防止するための手続きです。
家庭裁判所へ検認の申立てをした後、検認期日の連絡がありますので、指定された日に家庭裁判所へ行き検認を立ち会う流れとなります。
検認が終了すると、いよいよ遺言書の内容に基づいて遺産を分割していきます。預貯金や不動産の名義変更など、早めに行うべき手続きもありますので、検認が終わったらすぐに手続きを行えるようにしておきましょう。
これらの手続きは相続人が行いますが、遺言で「遺言執行者」の指定がされている場合は、遺言執行者が相続人を代表して相続手続きを行うことになります。
公正証書遺言が見つかった場合
公正証書遺言が見つかった場合は、自筆証書遺言の場合とは異なり、検認の手続きをする必要がありません。これは、作成に公証人が関わっており、公証役場で原本が保管されているため、偽造や変造などの恐れがないからです。
したがって、公正証書遺言を見つけたら、すぐに遺言書の内容に従って相続手続きを進めることができます。
また、自筆証書遺言と同様、遺言執行者が指定されている場合は、遺言執行者が相続人を代表して相続手続きを行うことになります。遺言執行者の指定がなく、手続きに不安がある場合は、相続に詳しい専門家へ依頼することをおすすめします。
遺言の内容と法定相続の関係
相続には、民法で定められた相続人(法定相続人)と、法定相続人が相続できる割合(法定相続分)が存在しており、被相続人の財産は、原則として法定相続人が法定相続分を引き継ぐことになります。
しかし、遺言がある場合は遺言の内容が優先されます。そのため、法定相続分と全く異なる内容の遺言を作成したとしても全く問題はないのです。
また、遺言では相続人でない人に対する財産の贈与も認められています。例えば、生前に面倒を見てくれた近所の人や、友人などに財産を引き継がせるケースや、愛人に財産を贈るケースも法的には問題ありません。
ただし、法定相続人である配偶者や子が一切財産をもらえないとなれば、財産形成の貢献度を考えると不公平な相続となってしまいます。そこで、配偶者や子、直系尊属が法定相続人となる場合は、最低限相続できる「遺留分」を受贈者等に請求することができます。
遺言書に記載のない財産がある場合
遺言があるからといって、相続財産の調査を行わないわけにはいきません。被相続人が全ての財産について遺言に記載していない可能性や、遺言を作成した時点から財産構成が変わった可能性も十分に考えられるからです。そのため、遺言がある場合でも相続財産の調査は慎重に行う必要があります。
遺言に記載されていない財産が見つかった場合、その財産については相続人全員で遺産分割協議を行って分割内容を決めます。
遺産分割協議とは、被相続人の財産について「誰が、何を、どのくらい相続するか」を決める話し合いのことです。そして、この話し合いの結果を遺産分割協議書に記載し、やっと遺産分割ができるようになります。
遺産分割協議で取り分を決めた財産の相続手続きに関しては、遺産分割協議書の提出が必要になる場合があります。そのため、協議書は記載漏れのないようにしっかり作成しましょう。
遺言の内容とは異なる遺産分割をする場合
遺言書がある場合、原則としてその遺言の内容に沿って財産を分けなければなりません。しかし、被相続人が遺言を残している場合でも、相続人全員がその内容に納得ができない場合は、遺言と異なる分割内容にすることも可能とされています。
この場合は、相続人全員で遺産分割協議をして新しい遺産分割を決めることになります。遺産分割協議で相続人全員が納得できる内容になったら、遺産分割協議書を作成し相続人が署名押印をすることで、その内容通りに相続手続きを進めることができるようになります。
ただし、遺言の内容と異なる遺産分割をする場合は、相続人全員の意見が一致していることが条件です。1人でも「遺言の内容に沿って遺産分割をしたい」という人がいると、遺産分割協議を行うことができないのでご注意ください。
まとめ
今回は、遺言がある場合の相続手続きについてご説明しました。
被相続人の遺言が見つかった場合は、その遺言の種類によって取るべき手続きが異なります。特に、自筆証書遺言が見つかった場合は、慌てずに的確な手続きが求められますので、被相続人の想いを無駄にしないためにも、正しい手続きについての知識を身につけておきましょう。
また、遺言があったとしても遺産分割協議が必要になるケースがあります。遺産分割協議は相続人同士の争いが起こりやすい場ですので、あらかじめ流れを確認しておくなどの対策をとっておくと良いでしょう。
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