■遺産
2019/04/10
遺産とは
遺産の中には、不動産や預貯金などのわかりやすいものから、権利や借金などの目に見えないものまでもが含まれ、相続される遺産と相続税のかかる遺産にも違いがあります。
今回は、意外と知られていない「遺産」について詳しくご説明していきます。
遺産とは
相続の際によく使われる「遺産」とは、被相続人が亡くなったときに有していた一切の権利義務のことを指します。遺産は有形無形やプラスマイナスに限られません。また、相続の対象となるものだけでなく、相続の対象とならないものも含まれます。
相続の対象となる遺産
遺産相続というと、不動産や預貯金などの、分かりやすく価値のある財産を受け継ぐことができると思われがちです。しかし、法律上、遺産相続の対象となる財産には、受け取って嬉しい財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も含まれます。
以下では、相続の対象となる遺産を「プラスの財産」と「マイナスの財産」に分けてご紹介します。
【プラスの財産】
・現金や預貯金
・建物や土地などの不動産
・有価証券(国債、公社債、投資信託、株式など)
・借地借家権
・債権(貸付金、売掛金など)
・家庭用財産(車、家具家電、時計、宝石、美術品など)
・事業用財産(事務所として使っている不動産、棚卸資産など)
・ゴルフ会員権
・慰謝料請求権、損害賠償請求権
・知的財産権(特許権、著作権など)
【マイナスの財産】
・借金(住宅ローンやクレジットカードの未払金など)
・医療費や水道光熱費の未払金
・未払いの税金
・買掛金
・預り金(敷金、保証金など)
・保証債務
被相続人が保証債務の連帯保証人になっていた場合、相続発生時には支払請求がなかったとしても、その後、相続人に対して支払請求がされる可能性があります。被相続人が連帯保証人になっていないか、慎重に調査することをおすすめします。
相続の対象とならない遺産
相続の対象となる遺産があれば、相続の対象とならない遺産もあります。具体的には次のようなものです。
① 被相続人の一身専属権
被相続人の一身専属権は相続の対象となりません。一身専属権とは、その性質から本人にのみ認められた権利や義務のことです。具体的には、年金や生活保護の受給権、国家資格、離婚請求権などがこれに当たります。
例えば、被相続人が司法書士として事務所を開設していた場合、相続人は司法書士の事務所用不動産や家具は引き継ぐことはできても、司法書士という地位まで引き継ぐことはできません。司法書士事務所の経営を続けたい場合は、相続人が自ら資格を取得する必要があります。
② 生命保険金
被相続人が亡くなると、保険会社から生命保険金が支払われることがあります。この生命保険金が相続の対象となるかどうかは、受取人が誰に指定されているかで決まります。
受取人が被相続人本人、または「相続人」とされている場合は、通常の相続財産と同じ扱いがされます。この場合、支払われた生命保険金は各法定相続分で分けられます。
しかし、受取人に妻や子などの特定の人が指定されている場合は、相続の対象とはなりません。これは、生命保険金は受取人固有の財産として考えられているためです。
ただし、相続税を計算する上では、相続税の課税対象として相続財産に含まれる場合があります。
③ 死亡退職金
死亡退職金とは、被相続人が死亡時に会社に勤めていた場合に支払われる退職金のことです。死亡退職金が相続の対象となるかどうかは、一概に言えるものではありません。そのため、「支給規定があるか」「誰に支給されるのか」などを考慮し、最終的には訴訟で判断されます。
ただし、支給規定があり受給者が決まっている場合、その死亡退職金は受取人固有の財産であると考えられますので、相続の対象となりません。
④ 祭祀(さいし)財産
祭祀財産とは、墓地や墓石、仏壇、仏具など、神仏や先祖を祀るための道具のことです。通常の相続財産は、複数の相続人で分け合ったり共有したりすることができますが、祭祀財産に関しては相続人同士で分け合うと不都合が生じてしまうため、特定の人が承継することになっています。したがって、祭祀財産は相続財産に含まれないと言えるでしょう。
なお、あまりにも高価で仏具とは言えないような場合には、相続財産として相続税がかかってしまう可能性があります。
⑤ 遺族給付金
遺族給付金とは、被相続人と一定の関係がある人に対して給付される金銭のことです。遺族給付金には様々な種類があり、具体的には遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金などがあります。
生命保険金等と同様に、受取人固有の財産であると考えられているため相続の対象とはなりません。
⑥ 遺産からの収益
被相続人がアパートやマンションなどの収益不動産を所有しており継続的に賃料が入ってくる場合や、遺産の中に株式が含まれており定期的に配当がある場合があります。このような遺産からの収益は、遺産本体ではなく遺産から発生する財産ですので、相続の対象とはなりません。
しかし、特定の相続人が収益を独り占めしている場合は、不公平な遺産分割になってしまいます。継続的に発生する収益に関してどのように分け合うかは、あらかじめ遺産分割協議の中で決めておくと良いでしょう。
みなし相続財産
みなし相続財産とは、法律上は相続財産として扱われないが、相続税を計算する上では相続財産とみなされる財産のことです。
先程ご紹介した「生命保険金」や「死亡退職金」は、このみなし相続財産に該当します。その他にも、年金や保険金などを受け取る権利である定期金の権利や、被相続人の死亡前3年以内に贈与された財産などがあります。
ただし、生命保険金と死亡退職金を受け取った場合は、全額に対して相続税が課されるわけではありません。どちらにも「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、非課税額を超えた額に対して相続税がかかる仕組みです。
みなし相続財産は、遺産に含まれないにも関わらず相続税の課税対象となるため、ややこしいと感じる方も多いものです。財産調査や相続税の計算をする際は、みなし相続財産を見落としていないかしっかりと確認しておきましょう。
まとめ
今回は、実はよく知られていない「遺産」について説明しました。
遺産相続と聞くと、不動産や預貯金などのプラスの財産をイメージしがちですが、実は借金などのマイナスの財産も含まれます。また、相続人同士で分けることができる財産だけでなく、生命保険金や死亡退職金、遺族給付金などの相続の対象とならない財産についてもご紹介しました。
スムーズな財産調査や相続税の計算を行うために、今のうちに遺産についての知識を深めておきましょう。
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