■遺言

2019/04/10

遺言の種類

遺言とは

遺言とは、残された相続人に対する被相続人(亡くなった方)の最後の意思表示です。自分の死後、財産を誰に・どのような形で残すかを決めたいと思う人は多いでしょう。遺言書を作成することで、自分名義の土地や家を誰に引き継がせたいか、自分の預金を誰にどのくらい分け与えたいかなどを自分の希望通りに決めることができます。また、遺言書があることで、実際に相続が発生した後もスムーズな相続手続きを実現することができ、遺言を残す側・残される側ともに多くのメリットがあります。

しかし、単に遺言書を作るとは言っても様式もなく思いのままに書いていいわけではありません。そのような遺言書が見つかったとしても、書かれている内容が本当に被相続人の意思に基づくものなのかを確認できないからです。
そこで、民法では、遺言書についての方式を定めています。その方式に従って書かれている限り、その遺言の内容を被相続人の意思として法的な効力を持ちます。
また、遺言には5種類もの方式があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットが存在します。どの方式を選ぶべきなのかは遺言者(遺言を書く人)の財産状況や環境によっても異なります。

この記事では、遺言の種類の紹介やそれぞれの特徴について解説していきます。

遺言の目的

遺言は被相続人の最後の手紙として様々なメリットがありますが、遺言を残す最大の目的は相続人同士の争いを防止することです。
遺言がない場合、相続が発生すると、誰がどのくらい財産を相続するかを話し合う「遺産分割協議」を行います。この遺産分割協議が成立すれば、土地の名義変更や財産の移転などの相続手続きを進めることができますが、協議の成立には相続人全員の意見が一致する必要があります。
相続人はそれぞれ自分の考えを持っているので、なかなか全員の意見が一致せず争いに発展するケースも少なくありません。遺言で誰に・何を・どのくらい相続させたいかを決めておくことで遺産分割協議が不要になり、相続人同士の争いを防ぐことができます。
なお、あまりにも不公平な遺言は、逆に争いの火種となってしまうこともあり、注意が必要です。例えば、「私の全財産を妻に相続させる」や「すべての財産を〇〇団体に寄付する」などの偏った内容は、そのほかの相続人から反感を買う可能性があります。自分の希望を貫きたい場合もあるとは思いますが、相続人への公平さも配慮した上で遺言を作成しましょう。

遺言の種類

遺言には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言・危急時遺言・隔絶地遺言の5種類があります。
自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の三種類は「普通方式」、危急時遺言・隔絶地遺言の二種類は「特別方式」と呼ばれており、それぞれ決められたルールに従って書かなければ遺言としての効力が無くなってしまいます。日常の生活で遺言をする場合には、「普通方式」を用いて作成します。普通方式の三種類の遺言については、後ほど解説をします。
他方で、緊急事態などにより「普通方式」で遺言をすることができない状況下の場合に用いられるのが「特別方式」の遺言です。

「特別方式」の遺言は、その時の遺言者の状況や環境によって作成方法が異なります。病気や怪我等により死亡の危急が迫っている場合や、乗っている船が遭難した場合に作成できる遺言を危急時遺言と言います。伝染病などにより隔離された場合や、長い間船で仕事をしている場合に作成できる遺言は隔絶地遺言と言います。いずれの場合も特別な状況下でのみ認められる方法ですので、危機が去り遺言者が普通方式で遺言ができる状態になってから6ヶ月間生存していた場合は、特別方法で作成した遺言は無効となります。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が紙とペンを用意し自筆で遺言書を作成する方法です。特別な手続きは必要なく、紙に本文・日付・氏名を書いて押印するだけで遺言書としての効力が認められるため、「普通方式」の三種類の中でもっとも簡単な遺言です。また、自分一人で作成できるため、遺言の存在や内容を秘密にしておくことができます。
一方で、自筆証書遺言では、本文はもちろん、日付や氏名を自分で書く必要があり、PCでの作成や遺言に添付する財産目録以外の代筆は一切認められていません。したがって、体力の衰えや病気等により自分で遺言を書くことができない人は自筆証書遺言を作成することができませんのでご注意ください。

また、自分一人で作成することにより、不適切な表現や要件を満たしていないことで無効となるケースが多いこともデメリットの一つです。例えば、「〇〇を遺贈する」と「〇〇を相続させる」では全く意味が変わってきます。些細な点に見えますが、表現ひとつで相続人同士の争いにつながる可能性もあります。さらに、本文や日付の自書以外にも、内容の訂正方法などの要件が法律で定められており、この要件を満たしていないと、遺言としての効果を発生させることができません。「要件不備による無効」を避けるために、要件に照らし合わせながら慎重に遺言を作成しましょう。
作成した遺言を自身で保管する場合には紛失・変造・隠匿のおそれがあり、これらの点も自筆証書遺言のデメリットと言えます。遺言を勝手に見てしまった家族が遺言の内容に納得できず、自分で遺言を書き換えたり隠したりする可能性が考えられるため、保管には十分な注意が必要です。

なお、2020年7月に「自筆証書遺言書保管制度」が開始され自筆証書遺言を法務局で保管できるようになりました。法務局に遺言を預けることで紛失・変造・隠匿を防ぐことができ、遺された家族も遺言がないか探す手間を省くことができるため自身で保管するよりも安心です。また、法務局で保管された自筆証書遺言には「検認」が必要ありません。
検認とは、相続人に対して遺言の存在を知らせ、遺言書の状態や内容を確認することです。遺言者自身で自筆証書遺言を保管していた場合、家庭裁判所での検認手続きを経てから遺言の内容を実行することになります。検認手続きはおよそ1〜2ヶ月ほどと非常に長く、相続人に大きな負担がかかってしまいますので、自筆証書遺言を作成した際は法務局で保管することをおすすめします。

【自筆証書遺言のメリット】

・いつでもどこでも作成できる

・費用がかからない

【自筆証書遺言のデメリット】

・紛失のおそれがある

・要件不備による無効のおそれがある

・検認が必要(法務局の保管制度を利用した場合は不要)

公正証書遺言

公正証書遺言とは、専門家である公証人が作成に関わるため、もっとも安全で確実な遺言方法となります。遺言の内容は遺言者自身で決めることができますが、作成は以下の手順で行われます。

①遺言の証人を二人以上用意する
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口述する
③口述の内容を公証人が筆記し、遺言書を作成
④遺言者および証人が筆記の正確なことを確認し、署名押印する
⑤最後に公証人が署名押印する

作成した公正証書遺言の原本は公証役場で保管してくれるため、遺言書の紛失・変造・隠匿のおそれはほとんどありません。また、公証人が遺言の内容や作成に携わるので「要件不備による無効」のおそれや、曖昧な表現で相続人間の争いが発生するのを防ぐことができます。そして、自筆証書遺言や秘密証書遺言では必要な検認手続きを行わず、速やかに遺言の内容を実現することができます。

一方で、公正証書遺言には、作成に費用がかかることや、遺言の内容を証人に知られてしまうこと等のデメリットもあります。作成費用は手数料令という法令によって定められており、遺言により相続を受ける人ごとに手数料を算出し、最後に合算する仕組みです。相続させる財産が大きければ大きいほど手数料も高くなります。
原則として公正証書遺言の作成は公証役場に出向いて行いますが、遺言者が高齢で体力が弱っている、あるいは病気等のため公証役場に出向くことが困難な場合は、公証人が遺言者の自宅または病院へ出張して遺言書を作成することができます。
多少の費用や時間はかかりますが、作成に公証人が関わることで確実に遺言者の意図を相続人へ伝えることができますので、遺言書の作成方法としては公正証書遺言を選択することをおすすめします。

【公正証書遺言のメリット】

・紛失のおそれがない

・遺言の存在と内容を明確にできる

・要件不備による無効のおそれがない

・検認手続きが不要

【公正証書遺言のデメリット】

・時間と費用がかかる

・遺言内容を秘密にできない

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にして保管することができる方法です。作成手順は以下の通りです。

①遺言者が、自分で遺言書を作成し、署名押印をする

②遺言者が、その遺言書を封筒に入れ、遺言書に用いた印章で封印をする

③遺言者が、公証人一人と証人二人以上の前に封筒を提出し、自分の遺言書である旨とその筆者の氏名・住所を申述する

④公証人が、その遺言書を提出した日付と遺言者の申述を封筒に記載する

⑤遺言者および証人が、封筒に署名押印する

秘密証書遺言は、遺言の内容は誰にも知られたくないが遺言の実行を確実にしておきたい場合に利用されます。
公正証書遺言では遺言の内容や相続財産の内容を公証人および証人に見られてしまいますし、自筆証書遺言ではその遺言が本当に被相続人によって書かれたものなのか争いになるおそれもあります。遺言の内容を第三者に知られることなく、かつ被相続人によって書かれたことを証明できる点が秘密証書遺言の最大のメリットです。
また、自筆証書遺言とは異なり、氏名だけを自署していれば、遺言の本文を自書する必要はなく、信頼できる人の代筆やPCでの作成も認められている点もメリットと言えます。

一方で、作成手続きには公証人が携わりますが、遺言の内容を確認することができないため、「要件不備による無効」の可能性が考えられます。また、作成した秘密証書遺言は公証役場が保管してくれるわけではありません。遺言書の紛失・変造・隠匿のおそれがあるため、保管には十分な注意が必要です。
秘密証書遺言には法務局での保管制度もありませんので、必ず検認手続きを経てから相続手続きに移る必要があります。他にも、作成に一律11,000円の手数料がかかる等、デメリットの多い遺言方法ですので利用を検討している方はその点も頭に入れておきましょう。

【秘密証書遺言のメリット】

・遺言の内容を秘密にできる

・遺言の存在を明確にできる

【秘密証書遺言のデメリット】

・要件不備による無効のおそれがある

・費用がかかる

・検認手続きが必要(法務局保管制度による検認免除なし)

遺言の撤回

遺言は遺言者本人の死亡と同時に効力が発生します。もし、遺言作成後に内容の全てまたは一部を変更したい場合は、遺言者が生きている限り遺言の撤回(取り消し)をすることができます。例えば、過去に遺言を作成したが、その後家族とけんかをして関係が変わった場合や、遺言により財産を相続させるはずだった人が自分より先に亡くなった場合も撤回の要因になります。
撤回の方法は、作成した遺言の方式に従って行わなければなりません。作成した遺言が自筆証書遺言か秘密証書遺言の場合は、遺言書を破棄することで遺言を撤回したことになります。つまり、破いたり燃やすことによって完全に復元できないようにします。

しかし、公正証書遺言の場合は手元にある遺言書のコピーを破棄しても撤回することはできません。公正証書遺言を撤回するためには、新しい遺言を作成する必要があります。新しく作成する遺言は自筆証書遺言や秘密証書遺言でも可能ですが、紛失や未発見のおそれがありますので、公正証書遺言による撤回をおすすめします。
また、遺言が複数ある場合は、一番日付の新しい遺言が有効となります。古い遺言と新しい遺言の内容が矛盾している場合には、その部分についてのみ新しいものが有効です。

まとめ

遺言の種類とそれぞれの特徴について解説いたしました。
遺言には、自分の思い通りに財産を相続させることの他に、相続人同士での争いを防ぐ意味があります。遺言の方式によって注意するべき点は様々ですので、せっかく書いた遺言書が無効にならないためにもしっかりと確認してから作成に取り組むことをおすすめします。

遺言書の作成には、可能な限り早めの対策を心がけましょう。

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