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■遺言

2021/04/10

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言に書かれている内容を正確に実現するために必要な手続きを行う人のことです。

例えば、遺言に「私の所有する不動産を長男に相続させる」と書いてある場合は、遺言執行者は遺言の通りに長男への不動産の名義変更を行う必要があります。

「手続きは相続人だけでできるから、遺言執行者はいらない」と思うかもしれません。しかし、遺言執行者がいない場合、相続人の誰かが率先して名義変更などの手続きを行わなければならず、遺言の内容に納得できない相続人がいると、遺言通りに手続きが進まないことがあります。そうならないためにも、遺言を残した人に代わって遺言通りに手続きを進めていくのが遺言執行者です。

ここでは、遺言執行者が必要になるケースや、その選任方法について詳しく解説していきます。


遺言執行者が必要な場合

遺言があるからといって、遺言執行者を必ず選任しなければいけないわけではありません。ただし、次の場合は遺言執行者が必要になります。

・遺言で相続廃除があった場合

・遺言で相続廃除の取消しがあった場合

・遺言で子の認知がされた場合

これらに該当しない場合は、遺言執行者はいなくても問題ありません。

以下、それぞれについて詳しく解説します。

① 遺言で相続廃除があった場合

相続廃除とは、推定相続人(財産を相続する権利がある人)の中に遺言者を虐待したり重大な侮辱を行っていた人がいた場合に、遺言者の意思でその推定相続人の相続権を剥奪することです。

遺言によって相続廃除をする場合は、家庭裁判所で相続廃除の手続きを行う必要があるため、法律上、遺言執行者が必要です。

② 遺言で相続廃除の取消しがあった場合

相続廃除は遺言で行う他にも、被相続人(亡くなった方)が生前に家庭裁判所に申し立てて行う方法もあります。

③ 遺言で子の認知がされた場合

認知とは婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、自分の子であると認めることです。

子であることが認められると、相続人として財産を受け取ることができるようになります。

認知は生前に行うこともできますが、遺言で行った場合には、認知届けなどの手続きが必要になりますので、遺言執行者を選任しなければなりません。

遺言執行者を選任するメリット

「遺言執行者が必要な場合」に該当しないケースでも、遺言執行者を選任しておくことは有意義な選択です。特に、次の場合は遺言執行者を選任することをおすすめします。

・相続人の人数が多い

・相続人同士の仲が悪い

・相続財産に不法占有者がいる

相続人の数が多いと、手続きに膨大な時間がかかるため、なかなか相続手続きが進みません。

遺言執行者には、遺言の内容を実現するために必要な行為をする権利と義務があります。そのため、相続手続きがいつまでも放置されたり、相続人が勝手に財産を処分したりするのを抑止することができます。

一方で、遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者が相続手続きを行うことになります。そのため、相続手続きがなかなか進まず争いに発展してしまうことも少なくありません。

誰が遺言を執行するかを決めておくことで、円満な相続が実現でき、時間短縮にもつながります。

遺言執行者の業務内容

遺言執行者は具体的にどのような業務を行うのでしょうか。相続の開始から業務完了までの流れは次の通りです。

【遺言執行者の業務の流れ】

①遺言者が死亡し、相続開始

②遺言執行者への就任を承諾

③遺言執行者に就任したことを相続人全員に通知

④相続財産と相続人の調査

⑤財産目録の作成

⑥各金融機関への解約手続き

⑦法務局に対する登記申請手続き

⑧株式等の名義変更

⑨換価手続き

⑩相続人全員に業務完了の報告

遺言執行者はこれだけの業務を行わなければならないため、知識がなければ非常に大変な役割です。特に、不動産を売ってお金に換える手続きは負担が大きく、長期に及ぶ可能性があります。

身近に知識のある人がいない場合は、専門家に依頼する方法も検討しましょう。

遺言執行者になれる人物

遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば、個人・法人問わず誰でもなることができます。

しかし、誰でも遺言執行者になれるからといって何も考えずに決めてしまうと、後々争いに発展するおそれがあります。

例えば、遺言執行の知識がない人や、相続人からの信頼がない人を遺言執行者に選任してしまうことで、遺言の内容を正確に執行してもらえない可能性も考えられます。

そのようなトラブルを防ぐためにも、相続人の中で信頼できる人や司法書士、行政書士などの専門家に依頼することをおすすめします。


遺言執行者の選任方法と手続き

遺言執行者の選任方法には以下の3つがあります。

①遺言による遺言執行者の指定

もっとも簡単な方法は、遺言者が遺言で遺言執行者を指定することです。遺言書に「遺言執行者として次の者を指定する」と記述した後、指定する人の氏名と住所を記載します。

遺言執行者に指定された人が就任を拒否する可能性もありますので、事前にお願いしたうえで指定するのが望ましいと言えます。

また、遺言執行者に指定した人が遺言者よりも先に亡くなっていた場合や、気が変わって就任を拒否した場合に備えて、予備の遺言執行者を指定することをおすすめします。

②第三者による遺言執行者の指定

①のように、遺言で遺言執行者を指定する方法は、遺言執行者が先に亡くなっていた場合や気が変わって就任を拒否した場合に、遺言執行者がいなくなってしまうリスクがあります。

このようなリスクを避けるために、遺言執行者そのものではなく、遺言執行者を選任する人を指定する方法があります。

遺言書に「遺言執行者の選任を〇〇に一任する」と記載しておくことで、その時の状況から遺言執行者にふさわしい人を選ぶことができます。自分が亡くなった後の状況は予想ができないものなので、いざという時のためにも第三者による指定も選択肢として考えておくと良いでしょう。

③家庭裁判所による遺言執行者の選任

遺言に遺言執行者の指定や第三者による遺言執行者の指定についての記述がなかったり、遺言執行者に指定された人が既に亡くなっていた場合や就任を拒否した等の理由により遺言執行者がいない場合には、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てを行います。家庭裁判所を通さず、勝手に遺言執行者を選任することはできませんが、申立ての際に遺言執行者の候補者を伝えることができます。

申立てをできるのは、相続人、受遺者(遺言により財産を受け取る人)、遺言者の債権者などの利害関係のある人のみです。申立てに必要な書類と費用は以下の通りです。

【申立てに必要な書類】

・申立書

・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本

・遺言執行候補者の住民票または戸籍謄本

・遺言書のコピー

・申立人の戸籍謄本

【申立てにかかる費用】

・遺言書1通あたり収入印紙800円

・連絡用の郵便切手



申立て先の家庭裁判所は、被相続人が最後に住んでいた住所を管轄している家庭裁判所になります。家庭裁判所によって必要書類が異なる場合がありますので、事前に申立てを行う家庭裁判所に問い合わせましょう。

遺言執行者の解任方法

正当な理由がある場合や、任務を怠っている場合には、遺言執行者を解任することができます。解任の方法は以下の2通りです。

①遺言執行者本人の意思で解任する場合

遺言執行者に就任した場合は、速やかに任務を開始する必要があります。いったん遺言執行者に就任したらその地位から自由に辞任することはできません。しかし、正当な理由があって任務を行うことができなくなってしまった場合には、家庭裁判所に申し立てて遺言執行者を辞任することができます。正当な理由とは、例えば、長期にわたる病気や、高齢、転勤や引越しによる移転などが挙げられます。

解任を認めるか否かについては、家庭裁判所が遺言執行者の事情や任務の難易度などを調査して決定します。もし、家庭裁判所から解任が認められた場合は、遺言執行者としての任務は終了し、相続財産の管理処分権は相続人に移ります。

②利害関係者の申立てによる場合

相続手続きは複雑なものが多いため、丁寧かつ迅速に進めなければなりません。遺言執行者本人は真面目に努めているつもりでも、任務を遂行できていない場合や、任務を怠っている場合など、遺言執行者としての義務を果たさない時は、義務違反として解任をすることができます。解任の手続きは遺言執行者本人の意思によって辞任する場合と同様、家庭裁判所に申立てをして行います。

なお、単純に遺言執行者のことが気に入らないからといった理由では解任の申立てをすることはできません。

遺言執行者の報酬

遺言執行者の報酬は、遺言書に報酬額の記載があればそれに従います。しかし、非常に煩雑で大変な業務を行う役割ですので、あまりにも低廉な金額では遺言執行者の就任を拒否されてしまいます。

遺言執行候補者とあらかじめ話し合ってから、報酬額を決めて記載するのが良いでしょう。

また、遺言執行者を専門家に依頼する場合は、専門家の提示した額を支払う必要があります。報酬額は専門家によって相場が決まっていることが多いので、確認しておきましょう。

報酬の相場① 司法書士の場合

司法書士の報酬額は、一般的に相続財産の1%ほどと言われています。

例えば、相続財産が5000万円の場合、司法書士に遺言執行者を依頼すると、報酬額の目安は50万円です。

依頼する司法書士事務所によっても異なりますが、他の専門家に比べて比較的安いのが特徴です。

報酬の相場② 弁護士の場合

弁護士の報酬額は、一般的に相続財産の1〜3%ほどです。金額にすると、およそ30万円〜100万円前後となっているケースが多いようです。

弁護士は訴訟等にも対応できる専門家ですので、相続人間で争いが起きると予想できる場合は、遺言執行者を弁護士に任せると良いでしょう。

報酬の相場③ 金融機関の場合

金融機関に遺言執行を依頼する場合、一般的な報酬額は相続財産の1〜3%と言われています。

しかし、金融機関に依頼すると遺言執行者の役割だけでなく遺言書の保管などのサービスがついていることがあるため、さらにサービス代がかかってしまいます。

また、最低報酬額が設定されているところもありますので、ご注意ください。

まとめ

遺言執行者とは、遺言に書かれている内容を正確に実現するために必要な手続きを行う人のことです。

遺言の執行は相続人や受遺者にもできますが、知識がなければ難しい手続きもやらなければなりません。遺言執行の業務は、身内だけで解決しようとせずに専門家に依頼することをおすすめします。

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