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■遺言

2019/04/10

遺言書と遺留分について

遺留分とは

遺留分(いりゅうぶん)とは、特定の法定相続人に対して認められる最低限の相続分のことです。
法定相続人は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続する権利がありますが、遺言によって他人に財産が与えられてしまうと、本来受け取ることができるはずの財産が無くなってしまう可能性があります。

例えば、父が亡くなった時に相続財産の全てが内縁の妻に引き継がれてしまい、子である自分が相続できる財産がなくなってしまった場合、非常に不公平な遺産分割であると判断できます。このような場合に、子が請求することができるのが遺留分です。


遺留分権利者

遺留分が認められている人のことを「遺留分権利者」と言います。具体的に、遺留分権利者は以下のような人を指します。

・配偶者
・子(およびその代襲相続人)
・父母、祖父母など

代襲相続とは、本来相続人になるはずの人が、被相続人よりも先に死亡していた等の理由で相続できない場合に、その人の子が代わりに相続することを言います。
一方で、下記に該当する人は遺留分権利者にはなれません。

遺留分権利者ではない人① 兄弟姉妹とその代襲相続人

被相続人の兄弟姉妹とその代襲相続人(甥や姪)には遺留分が認められていません。

遺留分権利者ではない人② 相続欠格人

相続欠格とは、被相続人を死亡させようとしたり、詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消させたりした人の相続権が失われることを言います。
相続欠格により相続権が剥奪された人には、遺留分が認められません。

遺留分権利者ではない人③ 相続廃除になった人

相続廃除とは、生前に相続人から虐待や侮辱を受けていた場合に、被相続人の意思でその相続人の相続権を失わせることです。
相続廃除により相続権が剥奪された人には、遺留分が認められません。

遺留分権利者ではない人④ 相続放棄をした人

相続放棄とは、被相続人の財産を相続する権利を放棄することです。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになりますので、当然遺留分は認められません。


遺留分の割合と計算

認められる遺留分の割合は、誰が相続人になるかによって異なります。基本的には法定相続分の2分の1ですが、相続人が直系尊属(父母、祖父母)のみの場合は3分の1になります。
以下に、分かりやすくまとめています。




具体的な遺留分の計算は、遺留分権利者の法定相続分に遺留分の割合を掛け合わせて行います。複雑な計算になりますので、それぞれケースで例を交えながら説明していきます。

ケース① 相続人が配偶者のみの場合

相続人が配偶者のみの場合、配偶者の遺留分は相続財産の2分の1です。

例えば、相続財産の合計が1億円であれば、2分の1の5000万円まで請求することができます。

ケース② 相続人が子のみの場合

相続人が子のみの場合、子の遺留分は相続財産の2分の1です。子が複数人いる場合は、子が受け取ることができる割合の中で平等に分け合います。

例えば、相続人が3人の子のみの場合、子1人あたりの遺留分は2分の1×3分の1で相続財産の6分の1となります。

ケース③ 相続人が配偶者と子の場合

相続人が配偶者と子の場合、遺留分の合計は相続財産の2分の1です。そのうち、配偶者が2分の1、子が2分の1の割合で受け取ることができます。子が複数人いる場合は、子が受け取ることができる割合の中で平等に分け合います。

例えば、配偶者と子2人が相続人の場合、遺留分は、配偶者が相続財産の4分の1で、子はそれぞれ8分の1ずつとなります。

ケース④ 相続人が配偶者と直系尊属の場合

相続人が配偶者と直系尊属のとき、遺留分の合計は相続財産の2分の1です。
そのうち、配偶者が3分の1、直系尊属が6分の1の割合で受け取ることができます。

例えば、配偶者と父、母が相続人の場合、それぞれの遺留分は配偶者が3分の1、父が12分の1、母が12分の1となります。

ケース⑤ 相続人が直系尊属のみ場合

相続人が直系尊属のみの場合は、遺留分の合計は相続財産の3分の1です。これを直系尊属の人数で平等に分け合います。

例えば、相続人が父、母、祖母の3人の場合、それぞれの遺留分の割合は3分の1×3分の1で9分の1ずつとなります。


遺留分の対象になる財産

こちらでは、どのような財産に対して遺留分の請求ができるのかを説明していきます。

対象となる財産① 遺贈

遺贈とは、遺言によって財産を贈与することです。例えば、被相続人の愛人や孫、生前に介護をしてくれた近所の人などが考えられます。
遺贈により相続人以外の人に財産が渡ってしまうと、相続人が財産を受け取ることができなくなってしまうため、遺贈された財産に対して遺留分を請求できます。

対象となる財産② 死因贈与

死因贈与とは、被相続人の死亡を原因として贈与する契約です。例えば、「私が死んだら、孫に〇〇の不動産を贈与する」という内容の契約をすることなどです。
遺言とは異なりますが、死亡を原因に贈与されるものですので、遺言と同じように扱われることが多く、遺留分の対象となります。

対象財産となる財産③ 生前贈与

生前贈与とは、被相続人が生きている間に相続人となり得る人に対して財産話や贈与することです。生前贈与は生きている間であればいつでもできますが、遺留分の対象となるのは死亡前1年以内に行われた贈与のみです。


遺留分を侵害した遺言

遺言の内容が自分の遺留分を侵害するものだった場合、遺留分の請求権が優先されます。つまり、どれだけ不公平な遺言であっても、最低限の相続分は受け取ることができるということです。
本来、遺留分制度は遺言で他人に相続財産が渡ることによって、自分の取得できる財産がなくなってしまった人を救済するための制度ですので、当然遺言よりも遺留分が優先されます。

ただし、遺留分を侵害したからと言ってその遺言が無効になるわけではありません。遺留分を侵害された人が遺贈や贈与を受けた人に対して、「遺留分侵害額請求」を行うまでは、遺言の内容に沿って財産が引き継がれることになります。
また、遺留分侵害額請求があったとしても、侵害している部分の変更がなされるだけで、他の部分の遺言は有効です。


遺留分侵害額請求とは

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害された人が、遺贈や贈与を受けた人に対して、侵害額を請求することです。
なお、遺留分侵害額請求はあくまでも権利ですので、必ず請求しないといけないわけではありません。遺留分を侵害された人が権利を主張をするかしないかは個人の自由となります。

例えば、遺言者が「長男と次男には、生前に家を買うための資金を贈与したが、三男には何もしてやれなかった。だから三男には私の財産の全てを相続させる」といった遺言を残すことも考えられます。
遺言の内容だけでなく、生前贈与の内容や遺言者の気持ちなどを考慮して遺留分侵害額請求をすると良いでしょう。

遺留分侵害額請求の手続き

遺留分侵害額請求を行使するときは、以下の流れで進めていきます。

手順① 内容証明郵便で遺留分侵害額請求書を送る

遺留分侵害額請求は、「相続と遺留分侵害があったことを知ってから1年以内」に行わなければなりません。
口頭など、証拠が残らない方法で請求をすると、時効が消滅した後に相手から「請求された証拠がないから権利は消滅した」と言われるおそれがあります。
そのようなトラブルを防ぐため、遺留分侵害額請求書は必ず内容証明郵便で送るようにしましょう。内容証明郵便を利用すると、手元に証拠(控え)が残るため、話し合いが長引いた場合でも時効により権利が消滅することはありません。

手順② 相手と話し合う

遺留分侵害額請求書を送ったら、相手と話し合いをして遺留分の返還を請求します。
相手に遺留分を返還できるだけのお金がない場合は、相続財産の売却や分割払いを提案してみましょう。
双方の合意があれば、合意書を作成して遺留分を受け取ることができます。合意書がなければ、後で訴訟になったときに、合意があったことの証明ができなくなってしまうため、必ず作成しておきましょう。

手順③ 遺留分侵害額調停を申し立てる

話し合いでは合意に至らない場合、家庭裁判所に対して遺留分侵害額調停を申し立てます。
調停では、調停委員が間に入って話し合いを行うため、自分たちだけで話し合いをするよりも合意を得やすくなります。
遺留分侵害額調停の申立てに必要な書類や費用は以下の通りです。

【申立てに必要な書類】

・申立書とその写し1通

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・不動産が含まれる場合は、登記事項証明書

・遺言書の写し

【申立てにかかる費用】

・収入印紙1200円

・連絡用の郵便切手

家庭裁判所によって必要な書類や費用が異なりますので、調停を申し立てる家庭裁判所にあらかじめお問い合わせください。

手順④ 遺留分侵害額請求訴訟を起こす

調停が成立しなかった場合は、遺留分侵害額請求訴訟を起こすことになります。
訴訟によって遺留分の侵害が明らかになれば、裁判所が相手方に対して侵害額の支払い命令を下します。
なお、請求金額によって裁判所は異なり、請求金額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所で訴訟を行います。

遺留分侵害額請求権の消滅時効

消滅時効とは、その権利が一定期間行使されないと権利が消滅してしまう制度です。
遺留分侵害額請求権は、以下のいずれかに該当する場合、時効で消滅します。

・遺留分権利者が、相続開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないとき ・相続開始から10年を経過したとき


「相続開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知ったときから1年間」が過ぎる前に請求をすれば、時効を止めることができますが、「相続開始から10年間」の時効は止めることができません。
したがって、10年以内に訴訟を起こしても、訴訟の途中で10年が経過したら請求棄却されてしまいます。
遺留分の侵害が分かったら、すぐに遺留分侵害額請求の準備を始めましょう。


付言事項による遺留分対策

遺留分侵害額請求は、相続人間の争いを招く原因になり、なにより遺言の内容を変更することになります。できるだけ遺言者の意思を尊重するため、遺留分侵害額請求をさせないような対策が必要になるでしょう。

遺留分対策には、遺言に「付言事項」を記載する方法があります。
付言とは、財産の配分などの法定遺言事項以外で、自分の気持ちや残される家族に伝えたいことなどを書くことです。
付言事項には法的効力はありませんが、なぜそのような遺言内容にしたのかを伝えることで、相続人間の争いを防ぐことができます。
例えば、特定の人に多くの財産を遺贈する旨の遺言をする場合、付言事項がなければ、相続人は遺言の内容に納得できず、遺留分侵害額請求権を行使してしまいます。
しかし、懸命に介護をしてくれたことや会社の経営を承継したいことなど、それぞれの事情を付言として書いておくと、遺留分侵害額請求を思いとどまってくれる可能性があります。


遺留分の放棄について

遺留分を放棄すると、放棄した人は遺留分侵害額請求ができなくなります。
被相続人の生前に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所に対して放棄の申立てを行います。そこで、家庭裁判所から放棄の許可をもらうためには、以下の条件に該当する必要があります。

【遺留分放棄の条件】
・放棄が本人の自由意志によるものであること
・遺留分を放棄する相当の理由があること

遺留分の放棄は、本人の意思に基づいて行われなければなりません。したがって、無理やり遺留分を放棄させることはできませんので、注意してください。

まとめ

遺留分は特定の法定相続人に認められる最低限の相続分であり、たとえ遺言により侵害された場合でも主張することのできる権利です。
しかし、自分の遺留分を主張することは、相続人間の争いを招くおそれがあります。遺留分権利者だけでなく、被相続人が対策を取り、円満に相続手続きを行うことができるようにしましょう。

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