■相続
2019/04/08

相続とは?
「相続」と聞いて、何を想像しますか?
資産家の相続財産をめぐって家族同士で喧嘩をするシーンをドラマで見たことがある人もいるでしょう。相続問題はお金持ちの家にしか関係ないと思われがちですが、それは大きな誤解で、実際はどのような家庭でも起こりうる問題です。
このような相続問題を防ぐためには、あらかじめ相続に関する知識を深め、適切な対策を取ることが必要です。
今回は、相続の基礎知識と、相続についてのよくある誤解について説明します。

相続とは
相続とは亡くなった人の財産を引き継ぐことです。
亡くなった人の財産には預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金や固定資産税などのマイナスの財産も全て含まれます。
相続では亡くなった人のことを「被相続人」、財産を受け継ぐ人のことを「相続人」と言います。
相続はいつ始まるのか
相続は、被相続人が亡くなった時に始まります。
相続人が被相続人の死亡を知らなかったとしても、被相続人が亡くなった時点で財産の権利は相続人に移ることになります。
誰が相続するのか
誰が被相続人の財産を相続するかは民法によって定められており、この定めに従って相続人となる人のことを「法定相続人」と言います。
法定相続人に妻や夫(配偶者)がいる場合は、配偶者は必ず法定相続人となることができます。ただし、内縁関係にある場合や既に離婚している場合は配偶者ではないため、法定相続人にはなれません。
配偶者の他には、被相続人の血族も法定相続人になります。血族の中には優先順位があり、上の順位の人が存在しない場合のみ、下の順位の人が法定相続人になります。
血族の優先順位は以下の通りです。
第1順位:子
被相続人の子供は血族相続人の第1順位です。生物学上の子だけでなく、養子縁組などの法律上の子も相続人となります。
被相続人の子が被相続人の死亡前に亡くなっている場合や相続欠格・廃除などの理由により相続権を失っている場合は、子の子(孫)が代わりに相続人になります。
これを代襲相続と言います。
第2順位:直系尊属
第1順位の子がいない場合は、被相続人の直系尊属が相続人になります。直系尊属とは、父母や祖父母のことです。
父母も祖父母も存命の場合は、被相続人により近い世代の人が相続人となります。
第3順位:兄弟姉妹
被相続人に子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人の死亡前に亡くなっている場合や相続欠格・廃除などの理由により相続権を失っている場合は、兄弟姉妹の子(甥や姪)が兄弟姉妹の代わりに相続人になります。
どのくらい相続するのか
相続人が複数人いる場合は、相続人全員で「誰が、何を、どのくらい相続するか」を話し合います。全員の合意があればどのような割合で分割しても良いのですが、基本的には民法で定められた「法定相続分」に従って分割することになります。
誰が相続人となるかによって法定相続分が異なりますので、以下でご説明します。
ケース① 配偶者と子
相続人が配偶者と子の場合は配偶者が2分の1、子が2分の1の割合で相続します。子が複数人いる場合は、子の相続分2分の1を平等に分け合います。
例えば、被相続人に1000万円の財産があり、相続人が配偶者と子2人のケースでは、配偶者の相続分が1000万円×2分の1=500万円、子の相続分はそれぞれ1000万円×2分の1÷2人=250万円ずつとなります。
ケース② 配偶者と直系尊属
相続人が配偶者と直系尊属の場合は配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1の割合で相続します。
例えば、被相続人に3000万円の財産があり、相続人が被相続人の父と配偶者のみの2人のケースでは、配偶者の相続分が3000万円×3分の2=2000万円、父の相続分は3000万円×3分の1=1000万円となります。
ケース③ 配偶者と兄弟姉妹
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合で相続します。
例えば、被相続人に4000万円の財産があり、相続人が被相続人の兄と弟、配偶者の3人のケースでは、配偶者の相続分が4000万円×4分の3=3000万円、兄と弟それぞれの相続分が4000万円×4分の1÷2人=500万円ずつとなります。
被相続人に遺言がある場合
これまで、法定相続人や法定相続分についてご説明してきましたが、必ず法定相続に沿って相続しなければならないわけではありません。被相続人に遺言が残っている場合は、法定相続よりも遺言の内容が優先されます。
そのため、遺言書に「長男に預貯金3000万円を相続させる」と書いてあれば、法定相続分とは異なっていたとしても、遺言通りに財産が承継されます。
なお、法的に無効な遺言であった場合や、遺言に記載のない財産については法定相続に基づいて遺産分割がされます。

相続のよくある誤解
相続は多くの人に関わる可能性のある問題です。しかし、なかなか経験することがないため誤解が多く、思わぬトラブルが起こりやすいのが現状です。
以下では、よくある相続の誤解を紹介します。
誤解① まだまだ元気だから大丈夫
家族が争わないための「争族」対策や、相続税額を抑える相続税対策の中には、被相続人が元気な状態のときでなければできないものもあります。
例えば、家族のために遺言書を作成したいと思っていても、被相続人が認知症の場合は意思能力がないとみなされ、作成できなくなってしまう可能性があります。
相続対策には早すぎるということはありません。まだ元気だからと先延ばしにせず、なるべく早めに対策をしましょう。
誤解② 相続はお金持ちの家にしか関係ない
ドラマなどでよく見る相続争いは資産家の家庭がモデルとなっていることが多いため、相続はお金持ちの家にしか関係がないと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際に相続で争いになる割合は、相続財産が1000万円以下の家で3割、5000万円以下の家で7割と、相続財産の少ない家庭でも争いになりやすいと言えます。
財産の多い少ないに関わらず、遺言などの対策をとっておくと良いでしょう。
誤解③ 借金をすれば相続税が減る
相続税は相続財産が一定の金額を超えた場合にかかります。この相続税を減らすために、借金をすると良いと聞いたことがある人もいるかもしれませんが、実は借金をするだけでは相続税を減らすことはできません。
例えば、1億円の財産がある人が1億円の借金をするとします。このとき、相続税のかかる対象額が1億円(財産)−1億円(借金)=0円となるでしょうか?
1億円の借金をすると、1億円のお金が増えて、手持ちの財産が2億円になります。プラスの財産が2億円でマイナスの財産が1億円となるため、実質的には財産が1億円であることに変わりはありません。
まとめ
相続は頻繁には経験することのない問題ですから、知識がなくトラブルに発展するケースが多くあります。
家族が相続トラブルに巻き込まれないように、今からできるだけ知識を身につけておきましょう。
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