■遺産
2019/04/10
土地評価について
しかし、不動産はお金ではないため、相続税の計算をする際は不動産の「評価」を行い、金額に換算する必要があります。
では、不動産の評価はどのようにして行うのでしょうか。
今回は、不動産の中でも主に土地の評価について、評価方法や調べ方を詳しくご説明していきます。
相続における土地の評価方法
相続における土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。どちらの方式を使用するかは、その土地が存在するエリアにより決まっているため、自由に選択することはできません。次に、「路線価方式」と「倍率方式」の2種類について、具体的な評価方法をご説明します。
路線価方式とは
路線価方式は、毎年7月に国税庁から発表される路線価を用いて土地を評価する方法で、路線価が定められているエリアでのみ使用することができます。
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地1㎡あたりの価額を千円単位で表示しているものです。路線価方式で土地の評価をする際には、その土地の奥行きや間口の広さなどの形状に応じて各種補正を行い、評価額を計算します。
例えば、150㎡の土地が1㎡当たりの路線価が50万円のエリアにある場合は、評価額は150㎡×50万円=7,500万円と計算できます。
全国の路線価は国税庁のサイトに載っていますので、ぜひご確認ください。
倍率方式とは
倍率方式は、路線価が定められていないエリアのみで使用できる評価方法です。倍率方式における土地の評価額は「土地の固定資産税評価額」×「評価倍率」で計算されるため、比較的簡単に求めることができます。
例えば、固定資産税評価額が1億円の土地が倍率1.2倍のエリアにある場合は、1億円×1.2=1億2000万円と計算されます。
固定資産税評価額は、毎年4月頃に送付される固定資産税納税通知書でご確認ください。また、倍率は国税庁のサイトに載っている倍率表で確認することができます。
土地の状況によって評価額が異なる
先ほどご説明した通り、路線価方式での評価をする際、対象の土地の形状によっては求めた評価額からさらに減額することができます。これは、その土地が標準的な宅地と比べて「使いづらい土地」であるとみなされた場合に、補正の目的で行われるものです。
土地には1つとして同じ形のものがないため様々な減額補正が存在しますが、この章では代表的な「不整形地補正」、「間口狭小補正」、「奥行長大補正」の3種類をご説明します。
ケース① 不整形地補正
不整形地補正とは、土地の形状がいびつな場合に、いびつな部分の割合に応じて土地の評価額を減らすものです。形状がいびつな部分のことを「かげ地」といい、このかげ地の割合が高ければ高いほど減額率も高くなります。
例えば、普通住宅地区で65%以上がかげ地の場合は、30〜40%の減額補正が可能です。
ケース② 間口狭小補正
間口狭小補正とは、土地の間口(道路に面している部分)が狭いことによる減額補正です。例えば、普通住宅地区で間口が4m未満の場合は10%の減額補正が可能となり、間口距離が小さければ小さいほど減額率が高くなります。
ケース③ 奥行長大補正
奥行長大補正とは、土地の間口の広さに対して奥行きが長すぎることによる減額補正です。普通住宅地区の場合、奥行距離÷間口距離が3以上4未満であれば奥行長大補正率は0.96となり、奥行距離÷間口距離の数値が高ければ高いほど減額率も高くなります。
例えば、間口距離が3mで奥行きが10m弱の土地の場合、奥行距離÷間口距離は約3.3mとなるため、奥行長大補正率は0.96となります。
利用状況によって評価額が変わる
土地の形状だけでなく、その土地の利用状況によっても評価額は変化します。今回は、以下の5つの状況によってどのように評価額が変わるのかをご説明します。
ケース① 賃貸マンションや賃貸アパート
対象の土地の上に賃貸マンションや賃貸アパートが建っている場合は、土地評価額が下がります。これは、その土地を自分で利用している場合よりも、第三者が使っている場合の方が自由な活用ができなくなるからです。
マンションやアパートが建っている土地の評価額は、「土地の評価額−(土地の評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算されます。
借地権割合とは、その土地の権利のうち借地が何割を占めるか示す数値のことです。地域によって異なりますので、国税庁のサイトでご確認ください。また、借地権割合は全国一律で30%と定められています。
例えば、更地の場合の評価額が1億円の土地に賃貸マンションが建っており、相続が発生した時点で10部屋中7部屋が埋まっていたケースを考えてみます。このエリアの借地権割合を60%とすると、土地の評価額は1億円−(1億円×60%×30%×70%)=8,740万円と計算することができます。
ケース② 借地
対象の土地を第三者に貸している場合は、評価額を下げることができます。これもマンションやアパートが建っている場合と同様、通常の土地と比べて土地を自由に使用できなくなるためです。
借地の場合の評価額は、「土地の評価額×借地権割合」で計算されます。
例えば、借家権割合が50%のエリアで、もともとの評価額が1億円の土地を他人に貸しているケースでは、土地の評価額は1億円×50%=5,000万円と計算することができます。
ケース③ 私道
土地の一部が私道となっている場合は、その部分の評価額を下げることができます。ただし、対象の私道が「通り抜け私道」か「行止り私道」かによって評価が異なりますのでご注意ください。
対象の土地が「通り抜け私道」の場合は、不特定多数の人によって利用されており公共性が高いため、評価額は0円になります。
一方で、「行止り私道」である場合は、特定の人しか使用しないため公共性が低いことから、通常の評価額の30%で評価します。
例えば、路線価が30万円で40mの行止り私道を所有している場合は、30万円×40m×30%=360万円の評価額となります。
ケース④ 駐車場
土地を駐車場として活用している場合は、原則として評価額を減額することができません。そのため、更地と同じ評価額となります。
ただし、駐車場として第三者に貸しており、借主がその土地に車庫等を作った場合には、賃貸期間の長さに応じて最大20%の減額をすることができます。
小規模宅地の特例で土地評価額を大幅減額
相続が発生した際、亡くなった人が持っていた土地に「小規模宅地の特例」を適用すると、土地評価額を大幅に減額することができます。
小規模宅地の特例とは、「亡くなった人が住んでいた土地」「事業をしていた土地」「貸していた土地」について、一定の要件を満たす人が相続した場合に、土地の評価額を最大80%減額することができる制度です。
減額率は土地を使っている目的によって異なりますが、具体的には以下のようになります。
【小規模宅地の特例による減額率】
・亡くなった人が住んでいた土地:330㎡までの部分について80%
・事業をしていた土地:400㎡までの部分について80%
・貸していた土地:200㎡までの部分について50%
例えば、亡くなった人と一緒に住んでいた人が実家の土地を相続するケースを考えてみましょう。その土地のもともとの評価額が1億円、面積が400㎡とすると、土地の評価額は1億円−(1億円×330㎡÷400㎡×80%)=3,400万円となります。
小規模宅地の特例は土地の評価額を大幅に減額することができるため、相続税の節税に有効な制度です。適用条件を確認し、積極的に活用していきましょう。
まとめ
今回は、相続財産の中でも特に大きな財産である土地の評価についてご説明しました。土地の評価方法には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があり、さらに土地の利用状況も評価額に影響します。
土地には1つとして同じものはありません。計算方法や評価額もそれぞれ異なるため、思ったよりも評価額が高くなり多額の相続税がかかってしまう可能性も考えられます。
そのようなことを防ぐためにも、相続発生前から土地の評価額を計算し、余裕を持った節税対策を行いましょう。
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