■相続
2019/04/09
相続人になれる人、なれない人
財産を持っている親族が亡くなった時、気になるのが「誰が亡くなった人の財産を相続するか」だと思います。
実際に誰が相続できるのかを知っている方はあまり多くないでしょう。
しかし、スムーズな相続手続きのためには相続人を把握しておくことはとても重要です。
今回は、相続人になれる人となれない人について詳しく解説していきます。
相続人は民法で決まる
親族が亡くなった時、誰でも財産の相続人になれるわけではありません。
誰が相続人になれるかは、民法886条〜895条によって定められています。民法で定められた相続人のことを「法定相続人」と言い、法定相続人の範囲に含まれている人が相続権を得ることができます。
ただし、被相続人(亡くなった方)が遺言書を残している場合は、法定相続人以外にも財産を与えることが可能です。
遺言がある場合の相続については後述します。
法定相続人になれる人
法定相続人に妻や夫(配偶者)がいる場合、配偶者は必ず法定相続人となることができます。ただし、内縁関係にある場合やすでに離婚している場合は配偶者ではないため、法定相続人にはなれません。
配偶者の他には、被相続人の血族も法定相続人になります。血族の中には優先順位があり、上の順位の人が存在しない場合でなければ下の順位の人が法定相続人になることができません。
血族の優先順位は以下の通りです。
第1順位:子
被相続人の子供は血族相続人の第1順位です。被相続人に親や兄弟姉妹がいたとしても、子がいる場合は子が相続人となります。
生物学上の子だけでなく、養子縁組などの法律上の子も該当します。
被相続人の子が被相続人の死亡前に亡くなっている場合や、相続欠格・廃除などの理由により相続権を失っている場合は、子の子(孫)が代わりに相続人になります。
このように、相続権が無くなった人の代わりにその人の子が相続人になることを代襲相続と言います。
第2順位:直系尊属
第1順位の子がいない場合は、被相続人の直系尊属が相続人になります。直系尊属とは、父母や祖父母のことです。
もし、父母も祖父母も存命の場合は、被相続人により近い世代の方が相続人となります。
第3順位:兄弟姉妹
被相続人に子も直系尊属もいない場合は、兄弟姉妹が相続人になります。
兄弟姉妹が被相続人の死亡前に亡くなっている場合や相続欠格・廃除などの理由により相続権を失っている場合は、兄弟姉妹の子(甥や姪)が代襲相続します。
被相続人に遺言がある場合
これまで法定相続人について説明してきましたが、必ずしも法定相続人のみが財産を承継できるわけではありません。
被相続人に遺言がある場合は、法定相続よりも遺言の内容が優先されます。したがって、遺言に「愛人に〇〇を贈与する」と書いてあれば、法定相続人ではない愛人が財産を承継することになるのです。
このように、遺言の指定によって財産の受取人となる人のことを「受遺者」と言います。
しかし、被相続人が遺言によって自分の財産を自由に分割できるとはいえ、それを無制限に認めてしまうと、法定相続人が一切相続できないといった不条理なことが起こる可能性もあります。
そのようなことを防ぐため、一定の法定相続人には最低限の財産を承継できる「遺留分」が認められています。
遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。被相続人の遺言が、自分の遺留分を侵害する内容であった場合は、家庭裁判所で「遺留分侵害額請求の手続き」を行うことで、遺留分を取り戻すことができます。
相続人になれない人
被相続人の親族であっても、前述した法定相続人に該当しない人や遺言による指定のなかった人は、財産を相続することができません。
しかし、本来は法定相続人の範囲内にいる人でも、相続人から除外されてしまうケースもあります。
以下では、相続人になれないケースをいくつかご紹介します。
相続人になれない人① 相続欠格者
相続欠格とは、特定の相続人が遺産を得るために不正行為をしたなどの理由により、相続権を剥奪されることです。
被相続人は、以下の相続欠格事由に当てはまる相続人の相続権を特別な手続きなしで剥奪することができます。
【相続欠格事由】
・故意に被相続人または同順位の相続人を死亡させた、あるいは死亡させようとした
・被相続人が殺害されたのを知りながら告発や告訴をしなかった
・詐欺や脅迫によって被相続人の遺言の取り消し・変更を妨げた
・詐欺や脅迫によって被相続人の遺言を取り消し・変更・妨害させた
・被相続人の遺言書を偽造・変造・隠蔽した
もし、相続欠格人に子供がいた場合は、その子供が相続欠格者の代わりに代襲相続人になることができます。
相続人になれない人② 相続廃除者
相続廃除とは、被相続人に対して虐待や侮辱を行なっていた相続人の相続権を剥奪することです。
被相続人が相続人を廃除するためには、生前に家庭裁判所で手続きをする方法と、遺言書で相続人の廃除をする方法があり、どちらかを選ぶことができます。
相続廃除事由は以下の通りです。
【相続廃除事由】
・相続人が被相続人に対し虐待、または重大な侮辱を加えた
・相続人に著しい非行があった
もし、相続廃除者に子供がいた場合は、その子供が相続廃除者の代わりに相続人になることができます。
なお、被相続人が生前に相続廃除の手続きをした後、相続廃除者の心が入れ替わったことにより被相続人が許した場合などは、相続廃除の撤回をすることができます。
相続人になれない人③ 相続放棄をした者
相続放棄とは、相続人が被相続人の財産の相続を望まない場合に選択できる相続方法です。相続放棄をすると、被相続人のプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も一切相続することができなくなります。
家庭裁判所に対して相続放棄の申述をして行いますが、相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に申し立てなければなりませんので、相続放棄を検討している際は早めに準備しておくことをおすすめします。
なお、相続放棄をした場合は代襲相続が適用になりません。したがって、相続人が相続放棄を選択した際、相続放棄者の子供が代わりに相続人となることはできません。
相続人を把握するための手続き
被相続人が亡くなったら、誰が相続人になるかを把握する必要があります。
以下では、相続人を把握するための手続きについて説明します。
手続き① 遺言書がないか調べる
被相続人が亡くなってから1番最初に行うことは、遺言書の有無の確認です。
自宅の机や棚、貸金庫などを探してみましょう。遺言が公正証書遺言の場合は、全国の公証役場で遺言の有無を検索することができます。
また、最近では自筆証書遺言を法務局で保管することができるようになりました。あらゆる可能性を考えて隅々まで探しましょう。
手続き② 相続人の調査・確定
遺言書の有無を確認しながら、誰が相続人になるのかを調べ出す作業を行います。被相続人に前妻との間の子がいる場合や養子縁組を結んだ子がいる場合も考えられます。
相続人調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を漏れなく取得して行います。戸籍を調査し、新たな相続人が出てきた場合や相続人の中に行方不明者がいる場合は、連絡先を調べて相手に連絡する必要があります。
まとめ
円滑な相続を実現するためには、誰が相続人となるかを把握しておくことが重要です。
前妻との間に子どもがいる場合や親族が多く関係が複雑な場合などは、相続人の調査に時間がかかってしまう可能性があるため、生前に遺言を残しておくことをおすすめします。
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