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■遺言

2019/04/10

遺言書の検認と執行

検認とは

亡くなった方の遺言書を発見した場合、勝手に開封して内容を見てはいけません。遺言の開封には「検認」という手続きを受ける必要があります。
検認とは、相続人に対して遺言の存在を知らせ、遺言書の状態や内容を確認・保存することです。そのため、遺言書を開封する前に家庭裁判所へ提出し、遺言のその時の状態を保存しておきます。
なお、勝手に遺言書を開封した場合や、検認せずに相続手続きを進めた場合は5万円の過料に課せられます。


検認の目的

検認は、遺言の偽造や変造を防ぐために行います。遺言が発見されてからそのままにしておくと、遺言の内容に納得できない相続人が勝手に内容を書き換えたり、破棄したりするおそれがあります。そのようなトラブルを防ぐため、家庭裁判所において遺言の状態を確認し保存しておくのです。
ただし、検認を受けたからといって、その遺言の有効性が確実になるわけではありません。遺言の有効性を争う場合は、「遺言無効確認訴訟」を起こす必要があります。遺言無効確認訴訟の結果、遺言の無効が確定した場合には、その遺言は存在しなかったことになります。

検認が必要な遺言書

全ての遺言書に検認が必要なわけではありません。公正証書遺言と法務局で保管していた自筆証書遺言は、検認の手続きをせずに遺言の内容を実行することができます。
検認が必要な遺言書は以下の通りです。

・法務局で保管していない自筆証書遺言
・秘密証書遺言
・特別方式で作成された遺言

亡くなった方の自宅や貸金庫などで「遺言公正証書」が見つかった場合のそれは公正証書遺言のコピーであり、原本は公証役場に保管されています。
もし、「遺言公正証書」以外の遺言書を見つけた場合、自筆証書遺言や秘密証書遺言の可能性が高いため、検認の手続きが必要になります。

検認手続きの方法と流れ

検認が必要な遺言書が発見されたら、以下のように手続きを進めていきます。

流れ① 検認の申立て

家庭裁判所に対して検認の申立てをします。申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

【申立てに必要な書類】

・検認申立書

・遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本

・相続人全員の戸籍謄本

・申立人の戸籍謄本

【申立てにかかる費用】

・遺言書1通につき収入印紙800円

・連絡用の郵便切手

流れ② 検認期日の通知

検認の申立てをすると、申立てから約1ヶ月後に家庭裁判所から相続人全員に「検認期日」の通知があります。
申立人は検認期日に必ず家庭裁判所へ行かなければなりませんが、相続人は出席しなくても構いません。

流れ③ 検認実施

検認当日になったら、申立人は印鑑と遺言書を持参します。
家庭裁判所に集まると、申立人・相続人が立ち合いのもと遺言書を開封し、日付や筆跡などの確認を行います。結果をもとに検認調書が作成され、検認の終了です。

流れ④ 検認済証明書の発行

検認終了後、家庭裁判所に対して「検認済証明書」の発行を申請します。
検認済証明書は、遺言の内容通りに相続手続きを進める際に必要な書類です。不動産の移転登記や銀行での名義変更など、検認済証明書がなければできない手続きもありますので、必ず申請しましょう。なお、検認済証明書は1部につき150円かかります。

検認手続きにかかる期間

裁判所の混み具合にもよりますが、申立てから検認の終了までの期間は、約1〜2ヶ月です。
また、検認の申立てには、申立書や戸籍謄本などの書類を準備する必要があります。特に、亡くなった方の戸籍謄本は出生までさかのぼって取得する必要があるため、準備だけでも1ヶ月程かかってしまうことがあります。

状況にもよりますが、遺言書を発見してから検認が終了するまでは、2〜3ヶ月ほどの期間を要すると考えておきましょう。

検認が終わったら

検認手続きを終えて検認済証明書の交付を受けたら、いよいよ遺言の内容を執行し、相続財産の分割を行います。
遺言の執行については、次の項目から説明していきます。

遺言の執行

遺言の内容を実現するためには様々な手続きがあり、その手続きを執行してくれる人が必要になります。
遺言で「遺言執行者」の指定がされていた場合は、遺言執行者が相続人を代表して遺言の執行を行いますが、指定がされていない場合は受遺者や相続人が自ら遺言を執行するか、遺言執行者を選任して執行してもらいます。

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言に書かれている内容を正確に実現するために必要な手続きを行う人のことです。例えば、遺言に「私の所有する不動産を長男に相続させる」と書いてある場合は、遺言執行者は遺言の通りに長男への不動産の名義変更を行います。
ほとんどの手続きは遺言執行者を選任しなくても実行できますが、遺言の内容によっては、遺言執行者を選任しなければならない手続きもあります。

遺言執行者が必要な場合

以下の場合は、遺言執行者を必ず選任しなければいけません。

・遺言で子の認知がされた場合
・遺言で推定相続人の廃除がされた場合
・遺言で廃除の取り消しがされた場合
・遺言に遺言執行者を定める旨の記載がある場合

これらに該当しない場合は、遺言執行者を選任する必要はありません。ただし、相続人同士の仲が悪い場合や、相続人の数が多い場合はなかなか手続きが進まないことがあるため、遺言執行者を選任した方がよいでしょう。

遺言の実行手順

遺言内容は以下の流れで実行していきます。

手順① 遺言者の財産目録を作る

遺言執行者は、財産を証明する登記簿や権利書等を揃えて財産目録を作成し、相続人に提示します。
財産目録には、預貯金や不動産、株式などのプラスの財産だけでなく、債権などのマイナスの財産についても記載します。

手順② 財産の分配を実行する

遺言の内容をもとに、財産をそれぞれの相続人に分配します。
例えば、「〇〇の不動産を長男に相続させる」という遺言であれば、不動産の登記を遺言者から長男へ移転する手続きを行います。

手順③ 相続財産の不法占有者に対して明渡し・移転の請求をする

遺言執行者は、遺言の執行に必要な一切の行為をすることができます。そのため、相続財産である不動産を不法に占有している人がいる場合には、不動産の明渡しや移転の請求を行います。
また、相続するべき人以外の人が勝手に不動産登記を自分の名義へ変更していた場合、遺言執行者は不動産の名義変更の取消しを求めることができます。

手順④ 遺贈受遺者に相続財産を引き渡す

遺贈とは、遺言によって相続人以外に財産を譲り渡すことです。遺言に遺贈に関する記載があった場合は、その配分・指定にしたがって受遺者に財産を引き渡します。
遺言執行者がいる場合には、遺言執行者と受遺者のみで所有権移転登記の申請を行うことができますが、遺言執行者がいない場合は、受遺者と法定相続人全員が共同して申請をしなければいけません。

手順⑤ 認知の届出をする

認知とは、法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子について、父または母が自分の子だと認めることです。
遺言で子の認知された場合は、遺言執行者の選任が必須となります。遺言執行者は就任から10日以内に、役所に対して認知の届出をしなければいけません。

手順⑥ 相続人廃除、廃除の取消しを申立てる

相続人の廃除とは、被相続人が相続人から虐待や重大な侮辱を受けていたり、著しい非行があったりした場合に、相続人の地位を奪うことです。
遺言で相続人の廃除や廃除の取消しがあった場合は、遺言執行者の選任が必要です。遺言執行者に就任したら、家庭裁判所に対して廃除や廃除の取消しの申立てを行います。

まとめ

遺言の発見から執行完了までは、様々な手続きを経なければいけません。
相続手続きは煩雑で時間のかかるものが多いため、検認の必要のない公正証書遺言にしたり、遺言で遺言執行者の指定をしたりと、出来るだけ相続人に負担のかからないような対策が必要です。

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