■専門家インタビュー

2021/12/24

上手な遺産分割の仕方

今回は、税理士法人ブライト相続の天満亮さんにお話を聞いてきました。


「はじめての相続」だけの特別なインタビューです。
ぜひご覧ください!

税理士法人ブライト相続紹介ページはこちら!

聞き手:こんにちは。よろしくお願いします。
天満さんが、相続人の方々に向けて、対策や知って欲しいことは何かありますか?

天満さん:そうですね。税理士である私が言うのも矛盾しているように思われるかもしれませんが、「税金だけに目がくらまないようにする」ということでしょうかね。
やはり多くの方々は、「相続対策と言えば税金」、「税金を安くするために色々と対策をしたい」という感じで、節税のことばかりに目が行っているような印象があります。
税金をいかに抑えるかももちろん大事ですけど、遺産分割、つまり財産をどう分けるかや、納税資金に困る人がいないかどうか等、他の問題をバランスよく考えていく必要があると思います。

聞き手:遺産分割とはどういったことをするのですか?

天満さん:亡くなられた方が遺した財産を、法定相続人でどのように分けるかということです。法定相続人で話し合って決めることを遺産分割協議といいます。

聞き手:法定相続人とは誰のことを指しますか?

天満さん:例えば、旦那様が亡くなって、残されたのが奥様とお子様だと、奥様とお子様が法定相続人です。
お子様がいらっしゃらなければ親御さん。親御さんがご両親とも、さらに祖父母以上の方々も亡くなられていれば、ご兄弟が法定相続人になることもあります。

聞き手:そうなんですね。最近の相続の傾向って何かありますか?

天満さん:お子様がいらっしゃらない方のご相談は、徐々に増えてきているかもしれませんね。
お子様がいらっしゃらない方から、生前にご相談を受けた場合には、「遺言を遺しておいた方がいいですね」とお伝えします。仮に遺言を遺さないで亡くなった場合、夫を亡くした奥様は夫の親と、親が亡くなっていれば夫の兄弟と、遺産分割協議をしなければなりません。
夫の親兄弟とは必ずしも親密なご関係でないこともあると思いますので、お子様がいない場合は、将来いざという時に遺産分割協議をしないで済むように、遺言書の作成をお勧めしています。

聞き手:遺言には強い効力があるのでしょうか?

天満さん:そうですね。「配偶者+兄弟姉妹」が法定相続人の場合には、遺言を遺しておけば、全て奥様に遺産を渡すことも可能です。
子や親が法定相続人の場合であれば、遺言があっても遺産をもらえない人が一定額を請求する権利があるのですが、兄弟姉妹が法定相続人の場合は、遺言さえあればそういった請求する権利はありません。ですので、遺言を準備することによって事前に対策をすることができますよね。
遺言が無い場合は、その亡くなった方の財産をどう分けるかという遺産分割協議を、冷静にできるような家族間の人間関係が大切です。

聞き手:冷静な話し合いができなさそうな場合は、遺言が大事なんですね。

天満さん:結局、税金の対策ばかりをご生前にあれこれと考えていても、税金を抑えるための特例は遺産分割協議がまとまらないと使えないものばかりなんです。
遺産分割協議が難しそうであれば、遺言書を作っておけば大丈夫です。しかし、遺言書を作ったら特例が使えますが、遺留分を侵害しているなどの他の問題を考えずに作成をすると、新たな問題が発生する場合があります。
何かしら対策をしたいと思ったら、税金ばかりに目を向けるのではなく、遺産分割、納税資金などもきちんと考慮する必要があります。

聞き手:では、遺言が無くて遺産分割協議になった場合のポイントはありますか?

天満さん:賛否の分かれる意見かもしれないですけど、「法定相続分にこだわり過ぎない」、ということが大事かもしれませんね。今まで見てきた、遺産分割協議が長引いているケースの多くは、意外と最初お会いした時に「うちは法定相続分で分けるから大丈夫」と仰るご家族だったりします。
そういうケースほど長引いたり、こじれたりしているような印象があります。

例えば、相続する子供が2人いる場合、現金だけの相続なら2分の1ずつ割ることが出来るので分かりやすいと思います。
しかし、財産に不動産が含まれていて、その不動産を売る予定もなく、どちらかが住む場合は、どうやって法定相続分とするかで協議に時間がかかります。不動産の評価額は1種類ではないですからね。
また、1人は親の介護をしていて、もう1人は親を泣かせ、親もその方に対してずっと文句を言っていたという状況があったりすると、「なぜお前が半分も遺産を貰うんだ」と揉めることもあります。
今や70代の方々でも戦後の生まれで、「相続は均等」という法律の中で育ってきています。法律はあくまでも、揉めた際の最後の落としどころに過ぎません。ご家族ごとで個々の状況は違う訳ですから、法定相続分にこだわり過ぎない、という認識が必要かもしれませんね。

聞き手:そうなんですね。では、納税資金について、何かアドバイスはありますか?

天満さん:納税資金を確保するための方法として、例えば不動産売却などの方法もあります。
ですが、基本的に売りたくない不動産を売らないで済むように、納税資金が本当に足りないのかどうかを早い段階で把握して、相続手続きを進める必要があると思います。

聞き手:お話を聞いていると、早めに対策をしておくほうが良さそうですね。
では、最後に相続対策に関わられる方々にメッセージをお願いします。

天満さん:生前の相続対策は、財産を持っているご本人の意思があるかが重要になります。財産を持っている人が、相続に対してその気にならないと何も実行されません。
とはいえ、遺言も含めた生前の相続対策は、ご自身の最期に心を向き合わせることになるので難しいところだと思います。

聞き手:なかなか伝えづらい部分もありますね。

天満さん:はい。ですが相続は必ず発生しますので、お元気なうちにお子様にきちんと考えを伝えておく必要があります。形式的な遺言は専門家が作成できますが、お気持ちまでを正確に伝えることはできません。
例えば、2人お子様がいて、片方に財産を寄せるという遺言を作ったら、もらえない方はおそらく納得しないと思うんですね。ご両親がご存命でお元気なうちに、そのように考えた理由を、ご両親の口から、きちんと伝えておくと良いですね。

聞き手:確かに少ない方は「なんで自分だけ少ないの?」と疑問に思いますね。

天満さん:はい。例えばご両親が、「長男が自分たちの面倒を今まで見てくれていたんだし、長女は嫁いだきりほとんど自分たちとは関わっていないんだから、当たり前だよ」、と思っていたとしても、きちんと言葉で伝えていないと、せっかく遺言を作っていても、亡くなった後に揉めて、法定相続分どころか遺留分も侵害している、という話に発展する恐れがあります。
繊細な話になってしまいますが、事前に相続に関わる人同士で腹を割って話し合っておくことがポイントでしょうね。

聞き手:本日はありがとうございました。



※当ページに記載されている情報について 当ページに記載した情報は、はじめての相続編集部スタッフが専門家への直接取材を基に作成したものです。 中立な立場からの情報提供が重要であると考えているために、専門家ではなく第三者が情報を作成するという形をとっております。 万全を期してはおりますが、その正確性、信頼性、安全性について保証するものではありません。 ご利用は利用者様の判断と責任のもとに行ってください。

この記事の関連記事

女性に寄り添う相続専門税理士が教える、相続発生前にできること

今回は、久保順子税理士事務所代表の久保順子さんに「女性に寄…

今回は、久保順子税理士事務所代表の久保順子さんに「女性に寄…

元国税調査官の税理士が教える!税務調査対策のポイント!

今回は、元国税調査官である稲川善文税理士事務所代表の稲川善文…

今回は、元国税調査官である稲川善文税理士事務所代表の稲川善文…

まずは話してみることから。アットホームな相続事務所

今回は司法書士・行政書士菅井事務所、菅井之央さんにお話しを伺…

今回は司法書士・行政書士菅井事務所、菅井之央さんにお話しを伺…

若手税理士の視点でみる「相続」

今回は新宿税理士事務所代表、坂根崇真さんにお話しを伺ってきま…

今回は新宿税理士事務所代表、坂根崇真さんにお話しを伺ってきま…

札幌遺産相続手続き専門代行所について教えてください!

今回は札幌遺産相続手続き専門代行所(行政書士 千田 大輔 行…

今回は札幌遺産相続手続き専門代行所(行政書士 千田 大輔 行…

親が死んだらどうしよう!?  一般社団法人OSDよりそいネットワークについて

今回は、野口敏彦弁護士が副代表をしている、「一般社団法人OS…

今回は、野口敏彦弁護士が副代表をしている、「一般社団法人OS…

不動産に強い税理士が教える生前対策について

今回は渡邉優税理士事務所代表、渡邉優さんにお話を聞いてきまし…

今回は渡邉優税理士事務所代表、渡邉優さんにお話を聞いてきまし…

こんなことまでできるんです! 相続手続き代行の専門家に依頼できることとは!?

今回は遺産相続手続まごころ代行センター代表、嶋田裕志さんにお…

今回は遺産相続手続まごころ代行センター代表、嶋田裕志さんにお…

人気記事ランキング

女性に寄り添う相続専門税理士が教える、相続発生前にできること

今回は、久保順子税理士事務所代表の久保順子さんに「女性に寄…

元国税調査官の税理士が教える!税務調査対策のポイント!

今回は、元国税調査官である稲川善文税理士事務所代表の稲川善文…

まずは話してみることから。アットホームな相続事務所

今回は司法書士・行政書士菅井事務所、菅井之央さんにお話しを伺…

若手税理士の視点でみる「相続」

今回は新宿税理士事務所代表、坂根崇真さんにお話しを伺ってきま…

札幌遺産相続手続き専門代行所について教えてください!

今回は札幌遺産相続手続き専門代行所(行政書士 千田 大輔 行…

不動産に強い税理士が教える生前対策について

今回は渡邉優税理士事務所代表、渡邉優さんにお話を聞いてきまし…

こんなことまでできるんです! 相続手続き代行の専門家に依頼できることとは!?

今回は遺産相続手続まごころ代行センター代表、嶋田裕志さんにお…

負債物件はどうすればいいの?

今回は、株式会社ファースト不動産鑑定代表、古家一郎さんにお話…

元国税OB税理士の目線で見極める、いい税理士の見分け方

今回は新百合ヶ丘相続税理士事務所【しんゆり相続・しんゆり相続…

時間や労力を惜しまずに、お客様と真摯に向き合う姿勢

今回は、司法書士法人花沢事務所の花沢良子さんにお話をうかがい…

人気記事ランキング

相続簡単資料ダウンロードはこちらから