「はじめての相続」だけの特別なインタビューです。
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聞き手：行政書士には、どういった相続案件を相談すれば良いのでしょうか？

松尾さん：相続には、相続人調査や財産調査、遺産分割協議、その結果としての相続登記や金融機関の手続きなど、局面ごとに対応しなければいけない事柄があります。
その際に、まずはフットワークの軽い（方ばかりではないかも知れませんが）行政書士が、どのような相続案件でも一番最初にご相談いただく相手としては適しているのではないかと感じています。
私自身がお手伝いさせていただいて「自分にご相談いただいてよかった」と強く感じるのは、相続人同士での意思疎通が難しいような相続案件です。ご本人同士でお話すると感情が先に立って、遺産分割協議のテーブルにつく事さえ困難なケースもあります。
そうした場合に、「メッセンジャー」として双方のご意見やお考えをお伝えし、それぞれのご意見や希望を取り入れながら遺産分割協議をまとめていくお手伝いをさせていただく事になります。
このようなケースでは、当事者間だけでは遺産分割協議の成立が難しかったと予想されますので、第三者が関与することによってスムーズな合意形成が図れたと言えるのではないかと思います。

また、そもそも相続人がどこにいるかわからない、音信不通状態で生きておられるのかすらわからない時もあります。

聞き手：そういった場合はどのように調査するのでしょうか？

松尾さん：基本的には戸籍や住民票で調査を行った後、郵便等でやり取りをさせていただきますが、それでもご返信がいただけない等、状況がつかめない場合は現地に行って相続人の方に直接お話を伺うケースもあります。

聞き手：なるほど、なかなか大変ですね。松尾さんは石材事業もされておりますが、お墓についての事前対策などはありますか？

松尾さん：最近は田舎にある古いお墓をどうするかという問題が多いですね。
手続き上は現在の墓地の使用者を特定し、その方が手続きを進める事によってお墓の移設や解体、お骨の改葬を行うことになります。
ただ、手続き上の問題とは別に、何代も続いている古いお墓の場合には、お身内の中での調整や話し合いをしていただく方が望ましいと思われます。
何故なら、数代前からのご先祖のご遺骨が埋葬されている場合、多くの親族にとっても『自分のご先祖様』が埋葬されているお墓であったりするからです。
事前に何も知らないまま、ある年お墓詣りに行ってみたらお墓がなくなっていた・・・！となると、親族間でトラブルになってしまったりします。
ですから、手続き上は必須ではないのですが、可能であれば事前にお墓じまいのご意向を伝えるなど、情報共有に努めていただけるとよいのではないかと思います。
また、そういった事前の相談があると、解体しようと考えていたお墓を引き継ぎたい方が出てきたりするケースもあり、ご負担の軽減につながる場合もあります。

聞き手：身内との関係性が肝になりますね。

松尾さん：そうですね。もちろん普段のコミュニケーションも大切ですが、問題に対して一つ一つ丁寧に対応していく事によって、結果として課題解決がスムーズに進む場合が多いのではないでしょうか。

聞き手：そうですね。相続は進める側も分からないことが多いですし、相談される側も全てを理解することはできないですね。

松尾さん：お墓の業者であればお墓のこと、士業であれば相続のことと、それぞれ自分の守備範囲しかカバーできないケースが多いように思いますが、相続遺言からご供養のことまでカバー出来る当事務所としては、お客様が抱える問題についてトータルでサポートするように心掛けています。

聞き手：なるほど、トータルでサポートしてもらえるのはお客様にとって、とても良いですね。

松尾さん：例えば、お墓を改葬したい場合に手続きを調べるとインターネットでも見つけることができると思いますが、手続き以外の見えないことが問題になるケースが多いです。
ですので、もし迷われたら早めにご相談していただきたいです。

聞き手：相続人が事前に調べておいた方が良いことはありますか？

松尾さん：よくあるご相談の１つに、日本人は無宗教のことが多いので、自分の家の宗教や宗派が分からないことがあります。葬式の時に違う宗派のお坊さんを呼んでしまい、お身内の方とトラブルになることもあるので、親世代が元気なうちに確認していくのが良いですね。

聞き手：若い世代に向けてこれだけは知っておいた方が良いことなどありますか？

松尾さん：最近の傾向としては供養に対する考え方が核家族化しています。
私がお墓の仕事を始めた約25年前は、お墓は家単位で作る意識がすごく強く、一族全員が同じお墓に入るというイメージを強く持ってお墓づくりされていた方が多かったです。それに対して、最近はお亡くなりになった故人に対する気持ちを表す意識が、ますます強くなってるような気がします。お墓の彫刻などに「故人が好きだった〇〇」を表すことが増えたのも、その一面かなと感じます。
また、できればお墓選びは、ご家族皆さんがお元気なうちに、場所やどのような形が良いか話し合っていただけたらと感じています。どなたかが亡くなってからのお墓探しは、まず場所を探し、お墓の形を選び、文字や石種を決めて・・・と、これを相続の手続きと並行して進めていくとなるとかなり大変ではないかと思います。ですから、最近は生前にお墓を決めておくという方も増えてきております。

聞き手：分かりました。最後に何かメッセージはありますか？

松尾さん：特に認知症対策を始めとする生前対策に関しては、気になることがあれば早めのタイミングでまずはご相談だけでもしてください。
相談を受けていて、依頼者とプランを作っているうちに、ご本人の状態が変わってしまい、プランが実行できなくなったこともあります。

聞き手：相続関係のことは早めに相談したほうが良いですね。本日はありがとうございました。



はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。