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■専門家インタビュー

2022/02/14

自分らしい老後をデザインできる「任意後見制度」とは?

今回は、「渡井マネジメントオフィス」代表の渡井保仁さんに「任意後見制度」についてお話を伺いました。


日本ではまだ普及していないものの、欧米ではポピュラーな任意後見制度。
どういった制度なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかなど、気になるポイントについて丁寧に語ってくださいましたので、ぜひご一読ください。

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聞き手: 本日は任意後見制度についてお話しいただけるということで、よろしくお願いいたします。

渡井さん:こちらこそ、よろしくお願いいたします。

聞き手:まず、任意後見制度の概要について教えていただけますか?

渡井さん:任意後見制度は成年後見制度の一つで、2000年の介護保険法施行と一緒にスタートしました。
簡単に言うと、ご本人が心身ともにしっかりしているうちに任意後見人を定め、認知症などで判断能力が低下したときに任意後見人に財産管理をしてもらうというものです。欧米では一般的な制度ですが日本ではまだ利用者が少なく、成年後見制度全体の申し立て件数のうち、任意後見制度は2%程度にとどまっています。

聞き手:欧米に比べると、日本人は「自分が認知症になるかもしれない」という意識が薄いと聞きます。そういう意識の違いが表れているのでしょうか?

渡井さん:おそらくそうだと思います。日本では高齢になると家族が面倒を見るケースが多いため、「自分が年をとっても家族が何とかしてくれるだろう」と考える風潮があります。
一方、欧米では「自分のことは自分で決めたい」という傾向があり、日本でもそういう方が増えてきました。少子高齢化が進む日本では、今後はどんどん高齢者の「お一人様」が増えていきます。未婚の方もいれば、配偶者に先立たれた方もいるでしょう。
そのときに、身寄りがなければ誰も自分の面倒を見てくれません。

聞き手:その場合も、任意後見制度があれば安心ということですね。

渡井さん:おっしゃる通りです。たとえば判断能力が衰えたらこういう施設に入れてほしい、年に一回はこの病院で健康診断をしてほしいなど、いろいろなことを契約しておけば思い描いたとおりの老後を過ごすことができます。
これから、任意後見制度を利用される方が増えるのではないでしょうか。

聞き手:非常に心強い制度ですね。あまり知られていないのが不思議なくらいです。

渡井さん:一応、行政が成年後見制度全般をPRしていて、その中に任意後見制度も含まれています。信託銀行や士業団体なども呼びかけているので、認知度は徐々に向上していくものと思われます。

聞き手:任意後見制度のメリット、デメリットについて詳しく伺ってもよろしいですか?

渡井さん:まず、任意後見制度のメリットは自ら老後をデザインできるところです。
たとえば親が認知症になったときに、親名義の預金が下ろせなくなってしまい、預金を下ろすために、あわてて成年後見人を申し立てるということが起きるわけですが、あらかじめ任意後見人が決まっていれば、このようなトラブルを避けることができます。

聞き手:成年後見人は裁判所が決めるんですよね。

渡井さん:そうです。以前は子が成年後見人になるケースが多かったですが、相続前から親の財産を使い込んでしまうケースが多発しました。
そのため、現在では成年後見人の7割ぐらいは司法書士、弁護士、行政書士といった専門職から指名されます。そうすると報酬も発生しますし、見ず知らずの専門職にお伺いを立てないと親の口座を動かせないので非常に不便です。
そういう意味では、任意後見制度で、あらかじめご本人が後見人を選んでおけるのは素晴らしいメリットだと思います。

聞き手:任意後見人はやはりご家族から選ぶのでしょうか?

渡井さん:もちろんご家族でもいいですし、信頼のおける第三者でも構いません。
ただし、第三者を任意後見人にすると費用が発生するので注意が必要です。また、ご家族が任意後見人になる場合も任意後見監督人が選任されますので完全に自由にはなりません。
聞き手:任意後見監督人というのは、どういった基準で選ばれるのでしょうか?

渡井さん:基本的にはやはり専門職です。この任意後見監督人に対する報酬も発生するので、ある程度の資産がある人向けの制度になってしまっているのが任意後見制度のデメリットと言えます。

聞き手:経済面での救済策は用意されていないのでしょうか?

渡井さん:残念ながら今のところありませんが、成年後見制度では一定の要件を満たせば政府から助成金を貰うことができます。任意後見制度にも助成金を導入してはどうかという意見も出ているので、将来的にそうなる可能性はあると思います。

聞き手:実現すれば、任意後見制度は一気に普及しそうですね。

渡井さん:そうなることを願っています。ただもう一つ注意したいのが、任意後見人が財産管理できるのはあくまでもご本人の存命中だけということです。
たとえば、夫であるご本人が生きている間は任意後見人が財産管理をしてくれたとします。その後、ご本人の死後に認知症の妻が相続したとしましょう。妻も判断能力が低下していて財産管理ができないとしても、夫の任意後見人が財産管理をすることはできません。

聞き手:任意後見人はあくまでもご本人の任意後見人であり、妻の任意後見人ではないということですね。

渡井さん:その通りです。このように相続人がすでに認知症の場合などは、ご本人がご存命のうちに家族信託を結んでおくのも一つの方法です。ご本人の死後、受益者である妻に信託財産が渡るような契約はできます。

聞き手:家族信託によってデメリットをカバーできるのですね。

渡井さん:そうです。また、任意後見制度には手続きが煩雑というデメリットがあります。
任意後見契約は公正証書で行う必要がありますので、その作成は専門職に依頼しないとなかなか難しいでしょう。
とはいえ、ニーズがある方にとって非常に良い制度なのは間違いありません。

聞き手:渡井さんにとって、任意後見制度とはどのような制度ですか?

渡井さん:今や、人生100年時代と言われるほど老後が長くなっています。
認知症になってからも長く生きるかもしれない以上、元気なうちに財産管理の準備をしておくのは賢明な選択だと思います。
判断能力が衰えたとしてもご家族にあまり負担をかけず、自分の財産の範囲内で長生きできるなら素晴らしいことです。
今申し上げたように任意後見制度にはデメリットもありますが、専門職として誠心誠意サポートいたしますので、ぜひご検討いただければと思います。

聞き手:本日は貴重なお話をありがとうございました。

渡井さん:こちらこそ、ありがとうございました。



はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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