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■専門家インタビュー

2022/01/20

自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは? 遺言書の重要ポイントを弁護士が徹底解説!

今回は「弁護士法人えそら」代表弁護士の馬場龍行さんに、「遺言書」についてのお話を伺いました。


遺言書を作成する際の注意点、自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、馬場さんが実際に経験した遺言書関連のトラブルなど、非常に興味深い内容となっていますので、ぜひご一読ください。


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聞き手:本日はよろしくお願いいたします。

馬場さん:よろしくお願いいたします。

聞き手:本日は遺言書についてお話を伺えるということですが、やはり相続において遺言書の有無は大きいのでしょうか?

馬場さん:やはり遺言書がないと揉め事が起きやすい印象です。相続というのは、家族関係、親族関係で長年培われたさまざまなことが最後に表出する場面です。「うちは仲がいいから大丈夫」と考える方もいらっしゃるでしょうし、実際スムーズに進むこともあります。しかし、いざ遺産がこんなにあった、実家の価値が思ったよりも高かったということになると、結局揉めるケースが多いのです。遺言書は、相続で揉め事を回避するための一つの方法と言えます。

聞き手:遺言書は、法律的にも効力が強いそうですね。

馬場さん:おっしゃる通りです。また、相続人としても被相続人の遺志ということであれば納得して引き下がりやすいものです。被相続人にはご自分が亡くなった後のことは関係ないとも言えますが、遺言書の作成にはそれほど手間はかかりません。親族の紛争状態を予防すると思えば、費用対効果は非常に高いと思います。

聞き手:遺言書の作成は、弁護士にも相談できるのでしょうか?

馬場さん:もちろんです。「こういう遺言書を作りたい」とご相談いただければ、費用、手続き、内容等について丁寧にアドバイスさせていただきます。遺言書作成のサポートは弁護士費用としては比較的リーズナブルなことが多いので、ぜひ弁護士へのご相談を検討していただきたいです。

聞き手:遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言がありますが、この2つの違いについて教えていただけますか?

馬場さん:まず、自筆証書遺言には形式の要件があります。たとえば日付がないといけない、フルネームの署名がないといけない、押印がないといけないなどです。この要件を満たしていないケースが意外と多く、そうなるとせっかくの遺言書が無効になってしまいます。

聞き手:被相続人の方の遺志が相続に反映されないということですね。

馬場さん:そうです。もちろん弁護士がサポートすればそういう事態は防げるかもしれませんが、一方で保管の問題もあります。自筆証書遺言を誰が保管するのか、亡くなった後に見つけてもらえるのかと考えると、どうしてもリスクが高いのです。また、自筆証書遺言は家庭裁判所に「検認」という手続きをしてもらう必要があります。

聞き手:諸々の問題がある上に、かなり手間がかかるのですね。

馬場さん:公正証書遺言も作成時に手間と費用はかかるものの、公証人からアドバイスを受けながら作成できるので不備で無効になることはまずありません。遺言書作成のご相談を受けた際は、基本的に公正証書遺言をおすすめしています。

聞き手:遺言書を作成するにあたっての注意点はございますか?

馬場さん:まず遺言書がない場合、法定相続分として配偶者に1/2、子どもたちが残りの1/2を等分するのが原則です。遺言書があれば、基本的にはここを自由に変更できます。

聞き手:たとえば、長男に全財産をあげてしまうこともできるわけですね。

馬場さん:極端に言えばそうです。ただし遺留分という考え方があり、ざっくり言うと各相続人が法定相続分の1/2は確保できることが保証されています。遺言書を作成するときには、この遺留分を考慮しなくてはいけません。遺留分を侵害する内容で遺言書を作ることもできるので、あえてそういうものを作るのか、きちんと調整して作るのかどうかは一考の余地があります。個人でそこまで配慮した遺言書を作成するのは難しいでしょうから、やはり専門家のサポートは必要だと思います。

聞き手:きちんと遺言書を準備するのであれば、専門家のアドバイスを受けたほうが安心ですね。差し支えなければ、これまでにご経験された遺言書関連の事例をご紹介いただくことはできますか?

馬場さん:2つありまして、1つは遺言書を無理矢理書かせたのではないかというケースです。こういうケースで特に多いのが、認知症などで判断能力が著しく低下している状態で書かれた自筆証書遺言です。形式を具備していたとしても、果たして当時のご本人に判断能力があったのかどうかが問題になります。

聞き手:高齢化社会ならではのケースと言えますね。

馬場さん:そうですね。私が見た遺言書はかなりヨレヨレの字で書かれていたものの形式は具備していたので、病院のカルテなどを取得して当時の判断能力に関する記載があるかどうか一つひとつ調べて争いました。

聞き手:ありがとうございます。もう1つはどのようなケースですか?

馬場さん:自筆証書遺言の形式に不備があったというものです。内容はしっかりしていたのですが押印がなく、残念ながら無効になってしまいました。

聞き手:遺言書が無効になった場合、相続手続きはどうなるのでしょうか?

馬場さん:基本的には、法定相続分通りに分配することになります。その遺言書では相続人ではない方が全財産を譲り受けることになっていたのですが、押印がなかったためにその方は1円も貰えませんでした。

聞き手:そういうケースがあるからこそ、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言をおすすめされているのですね。

馬場さん:その通りです。ただ、いずれにせよ遺言書は書いておいたほうがいいということはお伝えしたいです。事業をやっていらっしゃる方は特にそうで、後継者が決まっているのに遺言書を書かないというのは、やるべきことをやっていないようなものです。遺言書は後から書き直しができるので、まずは一通作成して必要に応じて修正していくことをおすすめします。

聞き手:経営者にとって、遺言書の作成は必須ということですね。

馬場さん:そうですね。やはり会社を誰に譲るかというのは重要な問題ですし、従業員や取引先などの関係者も多いはずですから、きちんと形にしておくべきだと思います。まだ後継者が決まっていない場合でも、「もし今、自分に何かあったら」と考えて早めに作成しておくことが大切ではないかと思います。

聞き手:本日は、貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

馬場さん:こちらこそ、ありがとうございました。



はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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