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■専門家インタビュー

2022/02/10

相続税対策における情報化社会の落とし穴

今回は、会計事務所Lirioの野口裕太さんにお話をお聞きしました。


インターネット上で相続について手軽に調べることができるようになった今、利便性の裏側には気をつけるべき落とし穴もあるそうです。手続きによってかかる費用が大きく異なってくる相続だからこそ、情報の信憑性を慎重に判断することが大切です。
ご自身で調べて対策を模索中の方はもちろん、これから調べてみようと思っていらっしゃる方も是非ご一読ください。


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聞き手:こんにちは。早速ですがインタビューをさせていただきます。よろしくお願いいたします。

野口さん:よろしくお願いします。

聞き手:お客様との連絡に際してLINEなどのSNSを活用したり、オンラインでの面談でご相談を受けたりしていらっしゃる野口さんですが、他の士業の先生方よりも今の時代に沿ったやり方で進めていらっしゃいますよね。

野口さん:そうですね。他業種に比べて、変化への対応が遅れている部分も見受けられますが、お客様の環境はどんどん変わっているので、それに合わせて柔軟に対応したいと思っております。

SNSでのご連絡やオンライン面談もそうですが、インターネットが著しく発展していく中で、誰もが簡単に情報を得られるようになりました。お客様の中にも、ご自身で相続について調べて対策されるケースも増えてきているんです。税理士の言うことを鵜呑みにせず、積極的に理解を深めることはとても大切だと思いますが、危険な面もあるので注意してほしいと思っております。

聞き手:どんな危険性があるんですか?

野口さん:情報の一部分だけを見て誤った判断をしてしまい、必要な手続きを省いてしまったり、その方に最も適した方法を見逃してしまったりすることがあるんです。

例えば、土地を相続する際の相続税を大幅に抑えることのできる「小規模宅地等の特例」というものがあります。検索すればすぐに出てくる特例なので、ご存じの方も増えてきているんですが、これを誤解されていてあわや・・・というお客様もいらっしゃいました。その方は、「小規模宅地の特例を使えば基礎控除額の範囲内に収まるから、相続税は一切かからないし申告も不要だろう」と思っていたそうなんですが、この特例を受けるためには申告書の提出が不可欠になります。幸い、申告期限の一週間前にたまたまYoutubeの動画を見てそれを知り、慌ててご相談にいらして無事に特例を受けることができました。

聞き手:気づくのが期限を過ぎた後だったら大変なことになってましたね。

野口さん:本当にそうですね。他にも、贈与税対策として「年間110万円までの生前贈与には贈与税がかからない」という記事もよく見かけますが、生前贈与の要件をしっかり満たさないと、名義預金として相続税の課税対象と見なされてしまうことがあります。最近は「相続税と贈与税が一体化して生前贈与が使えなくなるんじゃないか」という話もよく取り上げられていますが、いずれにしても、節税のために満たすべき要件は個々の状況によって大きく異なるので、それらを多角的に考える必要があります。
情報が得やすくなった反面、細かい部分や例外的なケースについての注意点を見つけ出すことが難しくなってきているので、ミスリードによるトラブルも増えてきているように思います。

聞き手:そういう例外は下のほうに小さく書かれていたりするので、そこまで読まない人がほとんどですよね。

野口さん:そうなんですよね。ネットの記事に全ての条文を書くわけにもいかないでしょうし、とは言え、根拠となる条文まで掘り下げて調べられるお客様はほとんどいらっしゃらないと思うんです。本当に適用要件を満たしているのかどうかはもちろん、他の特例と併用できるのかという点にも注意する必要がありますが、ご自身で確認すると時間も労力もかかってしまうので、そういった部分は我々専門家を上手く使ってほしいですね。

効果的な節税対策が使えたはずなのに、小さな見落としが原因で想定外の税金を支払うことになってしまったらもったいないですし、お客様によっては、一般的に知られている方法よりも別のやり方のほうが高い節税効果を得られる場合もあります。取り返しがつかなくなってしまうと戻れないので、そうなる前に専門家に確認するという最後のひと手間を大切にしてほしいですね。手軽に情報が得られる社会の中で、同じように手軽に相談してもらえるような専門家になっていけたらと思います。

聞き手:なるほど。お客様ご自身で調べて、ある程度まで理解を深められる点は情報化社会のメリットではありますが、最終的には専門家の方のアドバイスをしっかり聞くことが大切ですね。とても興味深いテーマでお話を聞くことができました。ありがとうございました!



はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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