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■専門家インタビュー

2021/08/30

「もしも」を考えたら、【委任・任意後見人・死後事務委任契約(公正証書)】を作りましょう【①】

現在、あなたは自分の身に起こるかもしれない「もしも」のことをどれだけ考えていますか?

今は元気でも、突然病気になったり、認知症になったり、はたまた突然命を落とす可能性は誰にでもあります。
みなさんは、もしそうなったときの対策は十分でしょうか?
また、具体的にどんな対策を誰に相談すればいいか、すぐに思いつきますか?

今回は、元気なうちに今後の「もしも」や亡くなった後のことを、事前に専門家と相談して任せることができる方法をご紹介します。

今回お話ししてくださるのは、本木行政法務事務所代表行政書士であり、一般社団法人ProFamilia終活協会代表理事を務められている本木千津子さんです。

ご家族と疎遠で一人暮らしをされている方、また独身で過ごすことを決めた方に向けて、今からできる「もしも」の対策についてお伺いしました。

聞き手:こんにちは、よろしくお願いいたします。

本木さん:こちらこそよろしくお願いいたします。なんか緊張しますね。

聞き手:いやいや。どうぞ気楽に、いつも通りで大丈夫ですよ。

本木さん:わかりました。

【委任・任意後見人・死後事務委任契約(公正証書)】とは



聞き手:一度に【委任・任意後見人・死後事務委任契約】これら3つの契約書を作ることで万全な対策ができるとのことですが、これらを作るとどういったメリットがあるのでしょうか?
そもそも、この3つの契約はそれぞれどういったことができるものなんですか?

本木さん:これらは、家族とは別にお一人で暮らしている方、また生涯独身を決めた方、身寄りのない方を対象としています。
そういった方々が暮らしの中で困難な状況になったときに、私たちが手助けをすることができる契約書です。

聞き手:そうなんですね。ではまず、委任の契約を結ぶとどういったことをして頂けるんですか?

本木さん:「委任」は、例えばお一人で暮らしていて病気や怪我で外出ができなくなった時、通院のお手伝いや銀行の引き出しや振込などの財産管理や、身の回りのお手伝いをします。
また入院が必要となったときや施設への入居の際に、打ち合わせに同席し、入院手続きを手伝ったり、緊急連絡先として登録することもできます。
あとは、一緒に医師の話を聞いてほしいとか、そういった不安を解決することができる書類です。
銀行でお金をおろしてきてほしいなど、信用できる相手でないと頼みにくいことを依頼できます。
賃貸不動産、介護施設への入居、入院の際に必要な身元保証などを依頼することもできます。
簡単に言うと、デイサービスなどだけでは手の届かない部分を専門家に頼める書類です。

聞き手: お金をおろしてきてほしいとかは、やはり信頼している方でないと頼みにくいですよね。
それが法律の元に契約を結んでの依頼となると安心して任せることができますね。

では、「任意後見人」とはどういった契約でしょうか?

本木さん:これは、認知症になってしまった場合の対策ができる契約書です。
後見人を立てるためには、家庭裁判所の手続きが必要で、4ヶ月〜半年ほど時間がかかりますし、裁判所が決めた人が後見人となります。
あらかじめ後見人を指定しておくことで、スムーズに後見人を立てられ、任せたい人に指定することができます。
後見人には、認知症になったご本人に代わって財産管理や入院時や施設への入居の時の契約などを代行してもらえます。
任意後見人の契約をしておくことで、入居するならどんな施設がいいか、どんな風に財産を使って欲しいか、などのご希望をあらかじめ伝えることもできます。
ご本人が認知症になった場合、家族でも銀行の手続きなどはできないので、事前に専門家に頼むメリットは多くあります。

聞き手:たとえ家族に色々と頼める関係性があったとしても、その家族が本人の代わりに行うことが出来ない手続きこそ事前準備が必要ですよね。

では、最後に「死後事務委任契約」について教えてください。

本木さん:「死後事務委任契約」とは、亡くなった後の病院への駆けつけから葬儀、埋葬まで、また、病院や住居の清算、荷物の片づけなどの事務手続きをご家族の代わりに行うものです。
特に葬儀や埋葬などは生前のご本人の意志を受け継いで行います。
連絡して欲しい親戚や友人がいれば連絡もできますし、家族に見られたくないデータを消去して欲しいなどのご希望も承ります。

聞き手:身寄りがない方が、自分が亡くなったあとのことを専門家に託せるのはとっても安心できますね。
これらは本木さんに頼めば本木さんが代わりにしてくださるんですか?

本木さん:はい。契約に則って弊所が行いますし、必要な場合は、士業の他、葬儀社の方、荷物の整理業者など、その都度専門家が対応します。

聞き手:それは本当に安心ですね。

本木さん:そうですね、ご本人の細かい要望を事前に聞いたうえでその方だけの契約書を作りますし、契約書があればこちらがサポートできることも増えます。
また、これらはもちろんひとつひとつで契約ができるのですが、私は3つまとめて契約書を作ることをおすすめしています。

聞き手:それはどうしてですか?

本木さん:ご自身が希望を伝える意思がある元気なうちに、認知症になった後や亡くなった後のことも考えて手配できるからです。
病気や怪我をして、思うように動けなくなってしまったり、またいつ認知症になるかもわかりません。
だからこそ、元気なうちに、病気になったとき、認知症になったときだけではなく、亡くなった後のことまで考えておくと、いざというときに備えることができます。

聞き手:そうですよね、いざ自分が認知症になったときに亡くなった後のことがきちんと決められるかと言われると難しいです。
ちなみに、「死後事務委任契約」は、「遺言公正証書」とはどう違うんですか?

本木さん:一番の大きな違いは、財産を誰に引き継ぐかを決められるかどうかというところです。

「遺言公正証書」は、民法で決められた方式で作らなくてはいけないもので、主に財産関係のご希望を書き残す書類です。
例えば土地や家を特定の家族に譲りたい方、預貯金を特定の人物に渡したい方、寄付したい方が作られるものです。
もし、遺言公正証書がない場合は、相続人で決めることになるので、家族間の相続争いの原因になってしまうかもしれませんし、相続人がいない方、譲りたくない人がいる場合は特に作っておいた方が良いでしょう。
(家庭裁判所の調停になる相続人は、相続財産が1000万円以下の人の割合が一番多いそうです)
一方、「死後事務委任」は、亡くなった後に発生する手続きや病院の入院費や家の家賃の清算を依頼できる書類です。
財産を誰に引き継ぐかということ以外は自由に決めておくことができます。
例えば、葬儀やお墓の希望や、コレクションしていたものをただ捨てるのではなく特定の誰かに渡してほしいといったことを盛り込めます。

聞き手:そうなんですね。
実際に現在この3つの契約を1回で結ばれている方も多くいらっしゃるかと思いますが、どういった方が多いのでしょうか?

本木さん:年齢層でお答えすると、早くて50代、多くの方は70代~80代の方です。
やはり、伴侶に先立たれた方、ご家族に頼るのが難しい状況の方からのご相談が多いです。
ですが、40代の方でも先を見据えて契約書を作られた方もいらっしゃいます。

聞き手:え!
とってもお若いですね。

本木さん:そうなんですよ。これから人生の中でご家族が増えることもあるかと思うのですが、その方はもう独身で過ごすと決められていて、早い段階から準備されています。

聞き手:いや~、自分のことをそこまでしっかり考えられるのは頭が下がります。

本木さん:この方は特殊例ですね。
ですが、もし少しでもこの先の人生でご不安があれば小さなことでもご相談いただけたら嬉しいです。



今回のインタビューはここまで。
次回は、本木さんが9月から始められる「見守りと終活のプロジェクト」についてお聞きしました。
この後のお話は「もしも」を考えたら、【委任・任意後見人・死後事務委任契約(公正証書)】を作りましょう【②】に続きます。
ぜひそちらもご覧ください。


本木行政法務事務所
今回インタビューさせて頂いた本木千津子氏が代表を務める、相続や遺言などが専門の行政法務事務所です。
詳しくは本木行政法務事務所の紹介ページをご覧ください。


はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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