■お役立ちコラム特集
2021/06/23
農地の相続にかかる税金はいくら?評価額や納税猶予について知ろう
農業を営んでいる方が亡くなった際、農地を売却もしくは引き継ぐことになります。
農業を相続相手に引き継ぐかどうかによらず、宅地とは違った「農地を相続するための方法」を取らなければなりません。
今回は、農地を相続するときに気をつけておきたいポイントや、税金の目安や仕組みについて解説します。
農地の相続を考えている人は参考にしてください。
まずは農業委員会へ届出
相続で農地の権利を取得した場合、まずは農業委員会への届出が必要です。
ただし、この手続きで権利の取得や保全といった効果が発生するわけではないので注意しましょう。
所有権移転登記に関わる手続きは、法務局で別途行う必要があります。
農業委員会へ届を出したあとは、農地の適正利用を図るために農地管理の相談を受けたり、農地の借り手を探したりすることになります。
なお、この届出は被相続人が亡くなっていた場合、亡くなったことがわかった時点から10か月以内で行わなければなりません。
放置や虚偽の報告をした場合は、最悪罰金となるため注意しておきましょう。
農地の税金や納税猶予制度の確認
相続した農地には、当然相続税が発生します。
後ほど詳しく解説しますが、農地には区分があり、その区分によって相続税の評価方法は異なります。
ただし、基礎控除額である「(3,000万+600万)×法定相続人の人数」を下回る場合は課税されません。
また、一定の要件に合致すれば納税猶予制度も利用可能です。
農地の種類と評価方法
農地は「純農地」「中間農地」「市街地農地」「市街地周辺農地」に区分されており、それぞれで計算が異なります。
まず、純農地と中間農地についてですが、純農地とは農用地区域内にある農地のことを指し、中間農地とは第2種農地等のことを呼びます。
相続税は「固定資産税評価額×地域ごとに定められた倍率」となりますので、正確な数値は国税庁のHPで確認するか、役所に問い合わせると良いでしょう。
次に市街地農地ですが、これは転用許可を受けた農地や市街化区域内にある農地のことを指し、評価額は「(農地が宅地であるとした場合の1㎡あたりの価額‐1㎡あたりの造成費の金額)×土地面積」となります。
こちらも計算が複雑なので、国税庁や役所に問い合わせたほうが正確です。
最後に、市街地周辺農地です。
これは第3種農地のことを呼び、評価は「宅地比準方式による市街地農地の評価額×80%」です。
評価額の計算はどの場合でも複雑になりますので、自身で計算する数値はあくまで目安として、正確な数値は専門家にしっかりと計算をしてもらったほうが良いでしょう。
農地の相続税の納税猶予
相続される土地が農地の場合、相続税の納税のために農地が処分されることで農地が減少するのを防ぐための措置があります。
それが、農業の継続を支援し、農地の有効活用を図るための「相続税の納税猶予の特例」です。
これは、相続人が農業を続けることが前提に、納税の猶予もしくは免除が認められるというものです。
名目上は猶予ということになっていますが、免除が認められることが多くなっています。
農地は国の自給率に関わるため、なるべく農業を継続してもらうための措置と考えて良いでしょう。
納税猶予と特例の適用条件
前述でお伝えしたように「相続人が農業を継続する意思がある」ということが前提条件ですが「被相続人が農業を営んでいた」「相続税の申告期限までに遺産分割がされている」「相続税の申告期限までに相続人が農業を引き継ぎ、その後も継続する」といった条件があるので、これらを守らなければなりません。
適用してもらえない農地
農地が首都圏、近畿圏、中部圏の三大都市圏の特定市の市街化区域内で、生産緑地地区内または田園住居地域内でない場合や、生産緑地地区内で買い取りの申し出がされたものといった特定の条件下では、納税猶予の特例を適用してももらえない場合があります。
特例を利用する前に、自分の土地は適用されるかどうかをしっかりと確認してから利用しましょう。
そのほかの注意事項
特例を適用するにあたりほかにも「納税猶予額と利子税に見合った担保が必要」「定期的に継続届出書が必要」など制約がありますので、しっかりと内容を確認しておく必要があります。
農地を売却したい場合
相続人に農業を引き継ぐ意思がない場合は、農地を売却することになるでしょう。
しかし、宅地とは違い、農地では食料の生産をしなくてはならないため、売却は「農地法」によって制限されてしまいます。
とはいえ、売却しか選択肢がない場合には方法が2つありますので、こちらで紹介していきます。
もしどうしても売却を選ぼうと考えている人は、こちらを参考にして検討してみてください。
用途を変更する
農地だから売却できないのであれば、農地以外に用途を変更してしまうという方法です。
ただし、用途の変更にも細かい制約があるため、事前準備が必要です。
農業委員会の許可を得るほか、ほかの用途で活用できるようにするための費用や、買い手を探すといった手間がかかります。
それでも買い手がつかない場合、安い価格で売却することも視野に入れましょう。
農地のまま売却する
農地のまま売却する場合でも、農業委員会の許可は必要です。
このとき重要なのは、買い手が農家であるか、農業へ参入する意思が必要なことです。
ほかにも農業を経営するために必要な要件を満たさなければなりません。
農地のまま売却する場合は特に買い手を探すことが困難だといわれています。
また、売却する際には農地の注意点を買い手にも説明しましょう。
後々トラブルの原因となりますので注意が必要です。
農地を相続放棄する
相続人に農業を引き継ぐ意思がない場合は、土地を放棄するという方法を取ることもできます。
相続放棄をする場合は、被相続人が亡くなってから3か月以内に家庭裁判所に申し立てをして手続きをする必要があります。
農地の相続を放棄した場合、それ以外の遺産も相続することはできず、農地以外で引き継ぎたい土地や貯金などがあった場合でも遺産は全て放棄するということになります。
また、相続を放棄しても次の相続管理人が決定されるまでは、農地の管理を継続して行う必要があります。
相続人のいない財産は最終的には国の持ち物になりますが、手続きが長期になることが多く、その間に決まった相続管理人への報酬を支払わなければなりませんので注意しましょう。
相続に関しては専門家を頼る
ここまで色々な方法を紹介してきましたが、相続などは専門的な知識が必須な上、裁判所や国、農業委員会などと話し合いを進めていく必要があります。
ある程度方向性が決まっているとしても、素人には処理が難しい話でしょう。
評価額の計算から書類の準備といったこともありますので、専門家である税理士に相談し、相続にかかる費用などを算出してもらうのが確実です。
農地だとある程度広い土地になりますので、金額も大きくなってしまいます。
亡くなってから遺族に渡して苦労をさせてしまうのであれば、話し合えるうちに第三者に話を聞いてもらいながら決めていくと良いでしょう。
農地の相続は話し合って進めましょう
今回は農地の相続について、相続税や納税猶予を詳しく解説してきました。
農地は国にとっても重要な土地ですので、相続するにしても手放すにしても簡単にはいきません。
そのため、どのように相続するにしても、被相続人が元気なうちにしっかりと話し合い、なるべく早めに準備をしていく必要があります。
また、どのような対応を取るにしても費用は発生してしまうので、準備期間も見据えて準備を行っていく必要があるでしょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
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子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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