■お役立ちコラム特集
2021/07/08
遺産にかかる税金はいくら?計算方法や税金対策の基本を学ぶ
日常生活のなかでは相続どころか、家族が亡くなることすら想像できない人もいるかもしれません。
しかし、遺産相続はいつ起こるかわからないもの。急に多額の相続税を支払うことになって困らないためにも、相続税の仕組みについて把握しておきましょう。
今回は、相続税の計算方法から、相続税を減額するための対策までご紹介します。
遺産を遺したい方も、相続する可能性がある方も、今のうちから対策しておけば安心です。
相続税を支払う必要があるのは全体の8%~10%程度
相続税と聞くと、多額の税金を支払うイメージを持つかもしれません。
実は、日本で相続税を実際に支払っているのは法定相続人(相続の権利を持つ人)のうち8%~10%程度です。
理由は、相続税は控除の利用や事前の対策による減額が可能だから。実際、相続税には以下の計算式による基礎控除が認められています。
3,000万円+600万円×法定相続人の人数
たとえば、法定相続人が1人しかいない場合、基礎控除額は3000万円+600万円×1で3600万円。
総額が3,600万円を超えない限り相続税はかからないというわけです。
基礎控除額は法定相続人の人数に左右される
法定相続人には、夫が亡くなった場合は妻など、配偶者が必ず選ばれるようになっています。
次に故人の子どもや孫、父母、兄弟姉妹の順で法定相続人の権利が移ります。
故人の子どもや孫がいる場合、父母や兄弟姉妹は法定相続人にはなれないのです。
法定相続人を把握したら、税理士に依頼するなどして遺産総額も算出しておきましょう。
相続税を算出するには、現金、土地、不動産、株式などの金額的価値を合計し、遺産総額から基礎控除額を引く必要があるからです。
相続税の計算方法
では、実際に相続税の計算をしてみましょう。3つのステップに分けて説明します。
ステップ1 遺産総額を計算する
最初に、相続税の課税対象となる遺産総額を求めます。
<故人である夫から1億円の資産を妻と2人の子で相続する場合>
3,000万円+600万円×3=4,800万円
1億円-4,800万円=5,200万円
つまり、相続税の課税対象額は5,200万円となります。
ステップ2 法定相続分に合わせて税率と控除額を適用する
課税対象額を法定相続分に合わせて分割すると、妻が1/2、子がそれぞれ1/2をさらに分けて1/4ずつになります。
妻=2,600万円(1/2)
子1=1,300万円(1/4)
子2=1,300万円(1/4)
上記の金額に、以下の相続税の速算表に基づく税率と控除額を適用していきます。
上記の表にあてはめると、妻と子2人の相続税額は以下になります。
妻は、2,600万円に15%を掛けた金額から50万円を引いた、340万円になります。
子1・子2は、1,300万円に15%を掛けた金額から50万円を引いた、145万円ずつとなります。妻と子1・子2の相続税額を合計すると以下になります。
妻340万円に子145万円を足したものに2を掛けた、630万円になります。
ステップ3 実際の相続割合で按分する
実際の相続割合は妻が1/2、子がそれぞれ1/4ですから、按分すると妻が315万円、子が157.5万円ずつとなります。
この金額を基準に、特別な控除を差し引いた金額が実際に支払う相続税です。
特別な控除の例として、配偶者控除があります。
適用されると、上限1億6,000万円まで、もしくは配偶者の法定相続分(今回の例では1/2)以内の相続であれば全額非課税になるのです。
なお、配偶者控除を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
・法律上の婚姻関係にある配偶者であること
・相続税の申告書を税務署に提出すること
・相続税の申告期限までに遺産分割協議が完了していること
・相続税の申告から3年以内に申請すること
ただし、相続税が非課税になるため、自身の遺産と合計して子へ相続(二次相続)する際に高額になります。
また、確定申告手続きが必要になるなど手間も増えるため、慎重に検討しましょう。
その他にも、基礎控除の範囲を超えない場合は相続税の申告義務はありませんが、配偶者控除に関しては支払額に関わらず申告義務があります。
控除や特例が認可されるかは税務署の判断による点も注意が必要です。
生前にできる税金対策
ここからは、遺産相続の前に行っておくべき相続税対策の方法をお伝えします。
被相続人の生前から課税対象額を減らしておくことで、高額な相続税に困らなくなります。
実行できそうな方法がないか、確認していきましょう。
生前贈与
被相続人の生前から遺産を法定相続人に贈与する方法です。
生前贈与の方法には、「暦年贈与」と「相続時精算課税」の2種類があります。暦年贈与とは、暦年の間に110万円以下の財産を子や孫に送る方法です。
贈与税には年間110万円の基礎控除が適用できるため、範囲内であれば贈与税がかかりません。
財産の種類に制限はなく、現金や預貯金以外の贈与も可能。
暦年あたり110万円以下の基礎控除も子や孫1人1人に適用されるため、複数人に贈与するほどおトクです。
しかし、毎年同じ金額を同じ相手に贈与していると連年贈与とみなされ、課税対象になるため気を付けましょう。
贈与する日時や金額をずらす、毎年ではなく進学や就職など節目のときに贈るなどの工夫が必要です。
また、贈与契約書を都度作成しておく必要や、贈与された側に通帳・印鑑・キャッシュカードを渡して利用可能にしておく必要がある点も注意。
贈与者や親が管理していては名義替えにしかならず、贈与とはみなされません。上記を守らない場合や、死亡前3年以内の贈与は無効(孫は対象外)などは、税務署に生前贈与を否認されるケースもあります。
2つ目の相続時精算課税とは、60歳を超えた父母・祖父母から、20歳以上の子や孫へ財産を贈与する場合に選択できる制度です。
この制度では贈与した翌年の2月から3月15日の間に、贈与税の申告書を提出する必要があります。
相続時精算課税の場合、複数年に渡って贈与された額から最大2,500万円分が控除対象となり、控除額を超過した分は一律20%が課税されます。
便利な制度ですが、一度選択すると暦年課税への切り替えはできません。
教育資金贈与
子や孫が学生の場合、教育資金贈与信託を活用して最大1,500万円まで教育費の一括贈与を行うことができます。
指定金融機関の教育資金贈与信託から選ぶことになりますが、非課税で1,500万円の贈与が可能です。
暦年贈与や相続時精算課税と違い、教育目的に絞っているため無駄遣いをされる心配がありません。
しかも1,500万円は学校関連の非課税額であり、塾や習い事、留学の渡航費といった学校以外の教育費にも500万円の非課税枠を設けられています。
そのため、教育関連の支援をしたい、暦年で110万円以上の贈与をしたい場合に有効な制度です。
おしどり贈与
子や孫ではなく夫婦間の生前贈与を希望する場合、おしどり贈与という制度もあります。
110万円の基礎控除に加え、最大2,000万円の控除も受けられるのでおトクですが、以下の適用条件があります。
・婚姻期間が20年以上の夫婦であること
・居住用不動産などを取得するための金銭の贈与であること
・贈与された翌年3月15日時点でそこに住み、以降も住み続ける予定であること
つまり、被相続人が先立っても、配偶者が住み続ける家を確保するための制度です。
贈与税の申告書を提出するなどして住み続ける意思を証明できれば、現金での贈与も可能です。
なお、自宅の相続の場合は次に紹介する「小規模宅地等の特例」を利用したほうが節税できます。
小規模宅地等の特例
被相続人に先立たれてからも、配偶者や同居している親族が現在住んでいる居住用宅地に住み続けられるようにするための特例です。
居住用の土地を配偶者が相続する場合、無条件で居住用の小規模宅地の評価額が8割減になります。適用の上限面積は330㎡(約100坪)です。
土地の評価額が下がることで遺産総額を抑えられるため、基礎控除額内でおさまれば相続税をなくすことができます。
しかし、居住する人員構成や永続的な居住の意思が認められないと適用されない点は注意が必要です。
住宅取得資金贈与
省エネ住宅の取得に必要な贈与税に関して、最大1,200万円まで非課税になります。
20歳以上の子や孫への贈与が対象で、専用の書類および贈与翌年の2月1日から3月15日の間に贈与税の申告書の提出が必要です。
暦年贈与や相続時精算課税との併用も可能で複数人への適用もできますが、配偶者側の父母または祖父母からの贈与は適用できません。
他にも以下の条件を満たす必要があります。
・贈与を受ける者のその年の所得金額が2,000万円以下であること
・新築・増改築のどちらであっても50㎡以上240㎡以下の床面積であること
・床面積の2分の1以上が居住スペースとして使用されていること
・贈与を受けた年の翌年の3月15日までに住宅等の引き渡しを受けること
アパート・マンションの建築
土地を相続する場合、アパート・マンションを建てておくことも対策の一つです。
法律上、自分の土地として活用する場合は「自用地」として扱われますが、アパート・マンションとして活用すると「貸家建付地」に変わり、土地評価額が下がります。
アパート・マンションのような建物の固定資産税評価額は、だいたい建物価格の半分ほどに落ちるため相続税対策に効果的。
建築にあたって金融機関から借り入れした場合は借入金が債務になり、控除の対象にもなります。
現金を不動産に替えると価値が下がる仕組みを利用した節税方法ですが、入居率が低いと長期的に見ておトクではなくなる可能性もあります。
経営である点を意識し、不動産投資としても成功させてこそ効果が高くなる方法といえるでしょう。
生命保険の非課税枠を利用する
生命保険のメリットは、保険金が受け取れることだけではありません。
保険金の受取人を法定相続人にすれば相続税の支払いに充てられますし、受取人を法定相続人以外にも指名することができます。
そして相続税における一番のメリットは、受取人に法定相続人を指名している場合、基礎控除とは別に非課税枠が与えられることです。
金額は500万円×法定相続人の数となっており、受け取りの際にかかる税金を抑えられます。
ただし、保険金が無事に支払われるか、指定した受取人が非課税枠の対象になるかについては各保険会社との契約内容によります。
また、配偶者には1億6,000万円の控除が可能なため非課税枠が増えても意味はありません。
非課税財産の購入
仏壇や墓地などの祭祀財産は、相続税がかかりません。
地域やグレードによっても差はありますが、お墓は一般的に100万円以上はかかる高額な財産ですので、節税効果が期待できます。
ただし相続後では節税にならないため必ず生前に購入しましょう。
被相続人が亡くなった時点で未払い分があると債務控除の対象にならないため、現金一括での購入が望ましいです。
他にもお通夜や葬式の費用、火葬や納骨の金額など葬儀にかかる費用も控除対象です。
相続税対策で不必要に高額にする、転売目的で仏具を買うなどは対象外ですが、一般的に必要な範囲であれば金額の制限はありません。
胃酸にかかる税金や計算方法を把握することが重要
相続税の計算方法と生前からできる対策をお伝えしてきました。
まずは遺産分割協議の可能性も踏まえて、遺産総額と法定相続人の人数から整理しておくとよいでしょう。
相続税の申告は故人が亡くなって10ヶ月以内に行う必要があり、正確かつ着実に手続きを進める必要があります。
しかし、実際には各家庭によって状況が異なりますし、思うようにいかないかもしれません。
遺産相続は家族関係にも影響を及ぼす可能性がある一大事です。不安がある方は、相続の問題に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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