■お役立ちコラム特集
2021/07/08
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相続税の納付期限はいつまで?超過するとどうなるの?
相続税を申告して納付することは、固定資産税や自動車税のように税務署から連絡がくるわけではなく、相続人が自ら行わなければなりません。
今回は、相続税の納付期限と超過してしまった場合の問題点を解説します。
申告期限と納付期限は10ヶ月
相続税の申告期限は、相続の開始日の翌日から10か月以内です。
例えば5月1日に亡くなった場合は、その次の年の3月1日が申告期限となります
注意したいのは、申告期限と納付期限が同じこと。
また、申告期限が土日祝日など休日になる場合は、その翌日になります。
必ず期限を確認して、期限内に納付することを心がけましょう。
申告期限の例外事例
亡くなった日の翌日から10か月以内が、通常は申告・納付期限となりますが、下記の場合は例外となります。
相続人が相続開始日を知らなかった
相続人(相続を受ける人)が、被相続人が亡くなったことを知らない場合があります。
例えば、両親の離婚後母と暮らし、亡くなった父とは連絡が取れていなかった、という場合などが考えられます。
この場合は亡くなった翌日ではなく、亡くなったことを知った日から10か月後が期限となります。
相続開始日が特定できない
医療機関以外で相続人が亡くなった場合、亡くなった日が特定できないことがあります。
例えば、ひとり暮らしが長く孤独死していた場合や、行方不明のまま亡くなっている場合などがこれにあたります。
この場合は、戸籍や死亡届にも死亡日は「〇月〇日ごろから〇日までの間」と記載されています。
この場合は、記載されている期間の最終日を開始日とみなして、申告期限が設定されます。
相続人以外への遺贈の場合
相続人とは、通常、配偶者や直系の家族などをさします。
ただし、亡くなった方が、それ以外の人に遺贈する遺言をする場合があります。
この場合は、遺贈される人は自分が相続することを、遺言を見るまで知らないため、相続人の亡くなった日ではなく、財産が遺贈されると分かった日の翌日から10か月以内が申告期限になります。
相続人が申告期間中に亡くなる
相続人が相続の手続きを行っているときに、亡くなってしまう場合があります。
例えば、祖父がなくなり、息子が相続手続きを行っていましたが急になくなり、孫が祖父の財産を相続する場合です。
このとき、孫は二次相続人となり、祖父が亡くなった日ではなく、父が亡くなった日をもとに申告期限を割り出します。
ただし、祖父に配偶者などほかに相続人がいる場合は、延長の対象になりません。注意しましょう。
相続人が廃除された場合
相続人が、被相続人に対し「著しい非行」を行った場合、裁判所が相続人にふさわしくないと判断することがあります。
この場合は、相続する権利が別の人間に移ることになるので、その相続人が知ってから10か月以内となります。
申告期限が間に合わない原因
申告期限と納付期限は同じ10か月です。
半年以上あるとかなり準備する時間があるように感じますが、意外なことに間に合わない人も多いのです。
大きな原因を見ていきましょう。
財産目録の制作
相続税申告のときには、被相続人が持っている財産を調査し、価値を計算して申告する必要があります。
これは預貯金などわかりやすいものだけでなく、土地家屋、株なども含まれます。
被相続人が亡くなる前に「財産目録」を作ってくれている場合はいいのですが、突然亡くなってしまう場合などは、財産をひとつひとつ洗い出し、価値を判定する必要があります。
また、財産は借金や負債など「負の財産」も含まれるため、これを洗い出す場合も、同様に時間がかかります。
また財産の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」にのっとって時価を定めることになっており、不慣れな人が評価方法を調べて評価額を計算するのにも時間が必要です。
その場合は、税理士や司法書士などに相談することも、視野に入れて考えましょう。
証明書類や資料の収集
相続税の申告には、大量の資料が必要となります。
被相続人の「除籍謄本」「住民票の除票」「改制原戸籍謄本」などのほかに、相続人全員の「戸籍謄本」「印鑑証明」「住民票」などが必要になります。
相続する財産(預貯金だけでなく、土地家屋、株)に応じて必要な書類が増える場合もあり、平日仕事をしている人は、役所に申請する時間がないこともあります。
これも税理士などに委任することが可能です。
遺産分割協議がまとまらない
財産目録が完成したら、相続人で遺産分割をどうするか協議が必要となります。
簡単に分けられる預貯金だけなら問題ないのですが、土地家屋や株などは分け方が困難になります。
また、分割する方法(誰がいくら相続するのか)などによって相続税の金額も変わるため、税金対策を考えると、分割する方法が複雑化する場合もあるのです。
早めに財産目録をつくり、分割協議を早めにするようにしましょう。
協議がまとまったあとには、司法書士などに相談し「遺産分割協議書」を制作することもあります。
納付期限を過ぎた場合の罰則
納付期限を過ぎた場合、次のような罰則やペナルティが課されます。
相続人にとって、不利なことばかりなので注意しましょう。
節税につながる特例が使えない
相続税申告には、配偶者だけが使える「配偶者控除」や、一定条件の宅地を受ける場合に適用される「小規模宅地等の特例」、農地などを相続するときに使える「農地の納税猶予」などがあります。
さまざまな特例があり、これらを上手に使うと大幅に相続税を軽減することが可能ですが、納付期限を過ぎた場合は適用されません。
これらの特例を調べて申告して相続税を納付するには準備が必要なため、申告書類に自信がない、制作する時間がない人は、納付期限の数か月前には税理士や法律事務所などに相談し、相続税の軽減対策を考えるようにしましょう。
追徴課税が発生する
納付期限を過ぎてしまうと、次の追徴課税が発生します。
通常より加算されてしまうので、結果的に非常に高額な税金になってしまうことになります。
延滞税・・・納付した相続税に対して、上乗せされる税です。
申告期限からどれぐらいたってから納付されたか、また納付する年度によって課税率が変わります。
過少申告加算税・・申告した相続税が、税務署が計算した税金より少ない場合は過少申告とみなされ、追加で納付する必要があります。
追加納付した税金には、通常の税率よりも加算されます。
無申告加算税・・正当な理由がなく申告期限に進行されなかった場合に加算される税です。
重加算税・・財産の隠蔽など、故意に相続税を減額できるようにした場合の課税です。
故意に相続税を減額しようとしているので、他の追徴課税に比べ、かなり加算率が高いです。
納付期限が間に合わないとき
相続税の納付期限は、地震や水害などの災害被害のあったときは別ですが、よほどのことがない限り延長されません。
それでも、次の場合は先に申告だけすましておき、あとから納付金額の調整をすることが可能です。
財産目録が完成していない
財産目録を制作するのに、土地家屋の評価額などを算定するのに時間がかかる場合がほとんどです。
この場合は、あえて多めの金額で申告して納付を行い、財産の正確な金額がきまってから、還付請求を行うことが可能です。
主に「配偶者控除」など、減税のための特例を使いたい場合などは、先に申告して納付してしまったほうがいいでしょう。
ただし、修正・還付請求ができない項目などもあるため、あらかじめ調べて行います。
遺産分割が決まらない
財産目録ができあがっているのに、相続人たちで遺産分割が決まっていない、ということがあります。
この場合は法定相続分(法律で定められている相続人と、相続の割合)にしたがって相続税を申告し、3年以内に決まった遺産分割にのっとって、還付請求、または追加納付を行います。
この場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」というものを添付します。
ただし、この時は「配偶者控除」など特例が適用されないことになりますので、注意が必要です。
相続税の納付期限はすぐにくる
相続の手続きは、相続の合計額を算出するだけでも大変です。
その上で分割協議を行うので、遠方の不動産を相続する場合などは、なかなか分割内容が決まりません。
また特例措置の使い方や期限などもあるので、とても混乱する遺族が多いのです。
悩んだ時は、税理士や市役所の法律相談などを利用し、何を早く準備するべきか調べておくことをおすすめします。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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