■お役立ちコラム特集
2021/06/23
保険金も相続対象?税金がかかる場合と非課税枠
生命保険は、加入方法によっては非課税限度額が活用でき、有効な相続対策になる金融商品です。
では、生命保険で受け取った保険金は相続財産の対象になるのでしょうか。
今回は、相続における保険金の取り扱いと、税金の関係について解説します。
生命保険と相続の関係
相続とは、亡くなった人から生前の財産を引き継ぐことです。
生命保険における死亡保険金は、保険の内容に基づいて受け取るお金という扱いになります。
そのため相続でいうところの「引き継いだ財産」にはあたらず、遺産分割協議の対象外です。
相続税法上は、生命保険金は「みなし相続財産」と呼ばれ、課税対象となる場合があります。
ただし、生命保険金には非課税枠があり、法定相続人1人につき500万円の非課税枠が認められているのです。
相続人の人数が多ければ多いほど、非課税枠も増える仕組みになっています。
保険の形態によってかかる税が変わる
生命保険には様々な種類があります。
相続税の節税対策として生命保険を活用するのであれば、「死亡保険金」を受け取ることが大事になります。
したがって、生命保険を相続税の負担軽減として考えるのであれば、保証が生涯に渡って続く「終身保険」が適しているといえるでしょう。
逆に、保険期間を経過すると過去の保険料がかけ捨てられてしまう「定期保険」や、保険期間の終了時に満期保険を受け取る「養老保険」などでは、非課税枠を活用できない場合があります。
これらは節税対策として活用することはできません。
ほかにも保険の契約形態によってかかってくる税金が変わりますので、節税対策として保険を活用する場合には、しっかりと確認をした上で契約形態を決める必要があります。
相続対策に生命保険を使用する際の注意点
相続対策には有利な生命保険ですが、過去には多額の保険金が特定の法定相続人に渡ったことが起因となって、裁判所が関係してくるほどの問題になったこともありました。
遺産分割時に生命保険を利用する際は、法定相続人の人数や周りとの関係性などを考慮して行いましょう。
特に個別の人間だけに有利になるような内容は、身内でのトラブルにもつながります。ある程度バランスを考えた契約にする必要があるでしょう。
相続対策で生命保険を利用するメリット
相続において、生命保険を活用することには多くのメリットがあります。
税金が軽減されるだけでなく、相続や納税をスムーズに進めることができる場合もあるので知っておきましょう。
ここでは、生命保険を相続で使用する際のメリットについて解説します。
生命保険には非課税枠がある
生命保険金には非課税枠というのがあり、法定相続人1人あたり500万円までなら非課税となります。
あらかじめ生命保険を活用することで、税金を安く抑えることができるでしょう。
非課税枠を利用する目的で生命保険に加入する場合、通常の毎月保険料を払っていくスタイルのほかに、まとめて一括払いして運用するという方法も選択できます。
生前贈与できる
生前贈与すると、法定相続人1人あたり毎年110万円までが非課税です。
この仕組みを利用して、毎年110万円以内に抑えながらも生前贈与をしていくという方法があります。
生前贈与の仕組みと生命保険は組み合わせることができます。
具体的には、法定相続人を貯蓄性のある保険の契約者として加入し、毎年の保険料を法定相続人に贈与して保険料を支払う方法です。
この方法では所得税がかかってしまいますが、税額自体は少なく済み、相続税で支払うよりは節税になります。
渡す人を指定できる
通常の相続では法定相続人同士で均等に分配しますが、死亡保険金は「死亡保険金受取人」を指定することができます。
指定をすることで遺産を確実に渡すことができ、被保険者が亡くなってから遺族で揉める原因も減らせるので便利です。
早期に支払われる
相続の場合、遺産分割協議が終わるまで遺産を受け取ることができません。
しかし生命保険であれば、手続きを済ませればすぐに保険金を受け取ることができます。
遺産を葬儀費用や当面の資金に充てることができ、非常に便利です。
通常の相続を行った場合だと、手元に遺産が届くまでに意外と時間がかかります。
あらかじめ被相続人と相談して、全額でなくてもある程度は生命保険に契約しておくのもよいでしょう。
代償分割が行える
代償分割とは、法定相続人が受け取る遺産が土地や建物などの不動産などの分割が難しい資産だった場合、ほかの法定相続人と話し合って代償金を支払うという方法のことです。
ただし、まとまったお金が準備できないと代償金を支払うことができず、代償分割を行うことができなくなってしまいます。
そんなときに生命保険の保険金を代用すれば代償分割をスムーズに行うことができます。
納税資金に充てることができる
相続をする際に現金がある程度準備できていれば問題ないのですが、例えば相続する財産はお金よりも土地や建物といった不動産が多い場合、相続税を支払うお金に困ることになってしまいます。
そのようなときに保険金を受け取ることができれば、ひとまず相続税を支払うことができるでしょう。
相続税は被相続人が亡くなって10ヶ月以内に支払わなくてはならず、先に受け取れる保険金があるとスムーズに進めることが可能です。
相続を放棄しても受け取れる
保険金は相続を放棄した場合でも受け取ることが可能です。
これは意外と知られていませんが、被相続人の財産が借金などマイナスの遺産しかない場合(債務超過)、相続を放棄することがあります。
基本的に、相続を放棄すると全ての遺産を受け取ることができなくなってしまいます。
しかし、被相続人が生命保険に加入していた場合、保険金は相続の放棄と関係なく受け取ることが可能です。
したがって、マイナスの遺産が多くても、少しでも遺族にプラスの遺産を遺したい場合、生命保険の利用はおすすめの方法です。
相続対策で生命保険を利用するデメリット
それでは、逆に相続対策で生命保険を利用するデメリットとは何でしょうか。
相続税対策として生命保険を利用した際のデメリットについて紹介しますので参考にして正しい節税に活かしてください。
保険の種類によってかかる税金が変わる
前述の通り、保険の種類によってかかる税金が変わります。
特に相続税対策として新たに契約をする際には、加入する保険の種類をしっかりと確認をしてから加入する必要があります。
相続人以外が生命保険金を受け取ると非課税枠が利用できない
相続税対策として利用したい非課税枠は、法定相続人が受け取った場合にしか利用できません。
したがって相続税対策として生命保険を契約する場合は、受取人を法定相続人にしっかりと設定をしなければなりません。
保険料の支払いが大変
新たに生命保険を契約しなければならないので、保険料を支払う必要があります。
払い込み期間を長期に設定してしまうと、資金繰りが大変になる場合もあります。
その場合は途中解約を検討しなくてはならなくなりますが、保険商品の途中解約は不利に働く場合もありますので、契約する際は無理なく払える計画を立てる必要があります。
相続税対策に保険を利用する際は内容を確認しよう
相続税対策として、生命保険を利用するのは有効だといえるでしょう。
しかし、保険の種類によってはかかってくる税金が変わってきますので、加入する前にはしっかりと確認を取る必要があります。
また、相続税対策として保険を利用することには、メリット、デメリットともにありますので、内容を理解してご自身に合った相続税対策をしていきましょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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