■お役立ちコラム特集
2021/06/23
相続人が死亡した時の遺産分割方法|数次相続と代襲相続の違い
具体的にいうと、被相続人より相続人の亡くなった時期が、前になるのか後になるのかによって、遺産分割方法は変わってきます。
相続人が後に亡くなっている場合は数次相続、相続人の方が先に亡くなっている場合は代襲相続になります。
遺産分割方法を間違ってしまうと、初めから手続きをやり直すことになってしまいますので、注意しなければいけません。
今回は、2つの遺産分割方法を解説し、その違いについても触れていくので、ぜひ参考にしてください。
相続の順位について
数次相続と代襲相続の違いをご紹介する前に、まずはこの章で相続の順位を把握しておきましょう。
相続人が複数いる場合、優先順位が高い順から①配偶者、②子や孫、③父母や祖父母、④兄弟、となります。配偶者は常に相続を受ける立場になり、残りの遺産は②③④のいずれかに相続されるという流れです。
例として、相続人に②である子と③である母がいる場合は、より順位の高い「子」が相続し、母は相続できません。
また相続人が③である母と④である兄弟の場合は、より順位の高い「母」が相続し兄弟は相続できない、ということになります。
数次相続とは
数次相続とは、被相続人が亡くなって遺産分割協議をしている途中に、相続人が他界してしまい、結果的に複数の相続が一度に起こってしまうことをいいます。
多いパターンとしては、遺産分割協議が何らかの理由により長引いてしまうことで、その間に相続人が亡くなってしまうというケースです。
数次相続は2つの相続を同時に進めなければいけないので、非常に複雑で手続きが大変になります。
ここでは基本と応用の2つのパターンについて見ていきましょう。
父親の遺産分割協議中に母親が亡くなってしまった場合
まずは、数次相続の基本的なパターンを解説します。登場人物は父親、母親、長男、次男、長男の妻の想定です。
父親が亡くなり、その直後に母親も亡くなった場合は、数次相続による2つの相続が立て続けに発生してしまっている状態です。
最初に発生する相続を一次相続、次に発生する相続を二次相続といいます。
父親の遺産、つまり一次相続にあっては、母親が2分の1を相続、長男と次男がそれぞれに4分の1を相続します。
その後に母親の遺産、つまり二次相続が長男と次男にそれぞれ2分の1ずつ相続されます。
養子縁組をしていない連れ子がいる場合の数次相続
父親と養子縁組をしていない母親の連れ子がいる場合、さらに複雑になります。
ここでは、例として父親、母親、子2人、母親の連れ子1人の数次相続を解説します。
最初に、父親が亡くなった際の一次相続については上述した通りです。
気をつけなければならないのは、母親の連れ子に対する遺産相続はないということです。
連れ子が一次相続を受けるには、養子縁組をしていなければなりません。
二次相続では母親の子2人、連れ子1人にそれぞれ3分の1ずつ遺産が相続されることとなります。
一次相続で遺産分割をされなかった連れ子にあっては、母親から見ると相続人になりますので、二次相続では遺産を受け取ることができるという点に注意しなければいけません。
代襲相続とは
代襲相続とは被相続人が亡くなる前に、相続人が既に死亡してしまっている場合の遺産分割方法です。
既に亡くなっている相続人に遺産を渡すことはできませんが、その遺産については相続人の子、甥(姪)が相続することができます。
また注意点として、相続人は兄弟か子でなければ代襲相続ができないという決まりがあります。
ここでは典型的なパターンである孫と、甥(姪)が代襲相続する場合について説明していきたいと思います。
孫が代襲相続人になる場合
ここでは例として、父親、母親、子、孫の家庭をもとに解説します。
まず、優先順位が最も高い配偶者の母親は、必ず遺産を相続することになります。
また、本来であれば子も遺産相続を受けるのですが、被相続人の父よりも先に他界してしまっているので、この場合は孫が代襲相続人となり、子の代わりとして遺産を相続することとなるのです。
甥もしくは姪が世襲相続人になる場合
ここでは例として、上記の家庭の子を被相続人とします。
登場人物には被相続人妻、兄と兄の子(甥)を加えて解説します。
また、父親、母親、兄、子は被相続人よりも先に亡くなっているものとします。
まず、被相続人の妻は優先順位1番のため必ず相続を受けます。
配偶者を除いた遺産相続の優先順位は子、親、兄弟の順番になります。
この場合は子も親も兄も既に他界してしまっています。
ただし、兄には子がいるので、代襲相続人となり遺産を相続することになります。
相続欠格・相続排除による代襲相続について
ここまで、相続人が亡くなった場合の代襲相続について説明してきましたが、実はそれ以外のケースも存在します。
それは相続人が相続欠格や相続排除の対象になっている場合です。
相続欠格とは、相続人が重大な犯罪行為や不正を行った場合、一生に渡って相続権を失うというもので、基本的に取り消しはできません。
相続排除とは、相続人が被相続人に暴力や侮辱を行った際、被相続人が家庭裁判所に申し立て相続を失わせるものですが、改心や反省がみられる場合は、再度申し立てをしてこれを取り消すこともできます。
相続欠格・相続排除の場合、相続人は相続の際は亡くなっているものとして考えます。
つまり、父親から遺産分割を受ける際に欠格や排除があれば、相続人の子が引き継いで代襲相続をする形になります。
代襲相続と数次相続の違いについて
代襲相続と数次相続は、本来相続するはずだった人の遺産を別の人が受け取るという点で類似しています。
そのため、双方についてしっかりと理解をしていないと、間違った手続きが取られてしまう可能性があるため、慎重に検討していく必要があります。
代襲相続か数次相続かは、相続人の死亡が先か後かによって決まります。
相続人が先に亡くなった場合は代襲相続になります。一方、後の場合だと数次相続となります。
相続割合などは複雑な部分がありますが、判別だけであればそれほど難しくもありません。
この違いをしっかり把握しておくことが大切です。
遺産分割方法を理解して、正しい手続きを取りましょう
代襲相続と数次相続は一部似通った部分があり、うっかりしてしまうと手続きを間違ってしまう可能性があります。
間違いやすい部分ではあるのですが、しっかりと理解をして冷静に考えれば手続きを間違えることはありません。
しかし、家族を亡くして気持ちが落ち込んでしまったために、正しい判断ができなくなったり、2つの処理を同時にしようとすると、思うように手続きを進めることができなくなったりするかもしれません。
そのようなときは、専門家などに相談してみるのも一つの方法です。
誤った手続きを取ってしまうと、最初から全てやり直さなければならなくなることもあります。
そうなると遺族間でも徐々にストレスが溜まり、争いなどのトラブルに発展する可能性も出てくるでしょう。
一見遠回りに見えても間違いがないように正しい遺産分割方法を選択し、慎重に手続きを進めていくことが大切だといえるでしょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
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