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■お役立ちコラム特集

2021/06/23

「相続人の廃除」とは?仕組み・条件・手続き方法を解説

被相続人が亡くなると、通常は相続人に対して遺産相続の手続きが行われることになります。
しかし、被相続人が何らかの理由で相続人に遺産を相続させたくない、というケースも存在します。

このような場合のために「相続人の廃除」という制度があるのをご存じでしょうか。
相続人の廃除が認められると、該当する相続人は遺産を相続することができなくなってしまいます。
相続に関する手続きは、実際のところ難しい部分も多いので注意が必要です。

今回は、相続人の廃除について、仕組みや条件、手続き方法などを解説します。

相続人の廃除について


まずは、相続人の廃除についての基本的な仕組みや条件を見ていきましょう。

相続人の廃除の仕組み・条件について


相続人の廃除とは、被相続人が特定の相続人に遺産を分与しないというものです。
何らかの理由で「この人にだけは絶対に遺産を渡したくない」と考えたときに取る手段になっています。
この方法を取るためには、被相続人は家庭裁判所に申し立てをしたり、遺書にその旨を書き残したりしておく必要があります。

相続人の排除の条件


相続人の廃除を家庭裁判所に認めてもらうには、それ相応の理由が存在しなければいけません。
申し立てる事由として一般的なものについてご紹介します。

・ 被相続人が相続人に虐待を受けていた場合や重大な侮辱を受けた場合
・ 相続人に著しい非行があった場合
・ 相続人の財産を相続人が不当に処分した場合
・ 相続人が犯罪行為をして、有罪判決を受けている場合
・ ギャンブルによる借金で、被相続人に支払いをさせた場合
・ 配偶者の場合、愛人と同棲し、家庭を顧みない不貞行為をしている場合

以上のような事由が家庭裁判所に認められると、戸籍に相続人の廃除について記載され、相続人は遺産を相続できなくなります。
遺産相続の際は必ず戸籍を確認することになるので、見過ごされるかもしれない、という心配をする必要はありません。
生前に手続きをしっかりとやっておけば、亡くなった際に確実に効力を発揮します。

相続人の廃除の手続きについて


相続人排除の手続きは、暴力・侮辱を受けた場合などに、相続人に遺産分与をしないという意思のもと、家庭裁判所に排除の申し立てをすることで行えます。
その手続きは2種類あり、1つ目は被相続人が生前に家庭裁判所におもむき、廃除を申し立てる方法。2つ目は遺言に、相続人に遺産分与をしないと記載をしておく方法です。

遺言での手続きの際にはあらかじめ、遺言執行者を決めておく必要があります。
注意点として、遺言執行者が遺書で指定されていない場合、遺書による相続人の排除手続きを行えなくなることです。
被相続人の死後に遺言執行者を立てることは認められていません。
そのため被相続者は遺言を残す場合は、どの相続人を廃除するのか、誰を遺言執行者にするのかをしっかりと明記しておかなければいけません。

全ての手続きが終わり、正式に家庭裁判所から排除が認められることで、該当する相続人は廃除となり、遺産を相続する権利を失うのです。

相続人の廃除をされても代襲相続は可能


相続人の廃除が認められた場合、もしその相続人に子どもがいた場合は一体どうなるのでしょうか。
その場合、代襲相続という相続方法が適用されることとなり、排除された相続人に渡される遺産がその子どもに分配されることとなります。

しかし、問題なのは被相続人が孫にも嫌がらせや暴力等を受けており、代襲相続をさせたくないというケースでしょう。
代襲相続は、被相続人が亡くなって初めて効力を発揮するものとなっているので、生前であれば孫は相続人でも何でもありません。
そのため代襲相続により、孫に遺産を相続させたくない場合は、遺書にその旨を詳細に記載するなど、事前に準備をしておかなければなりません。

相続人の廃除の取り消しについて


相続人が自分自身の行為を真摯に反省し、改心する状況が見られる場合などは、被相続人は廃除を取り消したいと申し立てるケースも存在します。
相続人の廃除については、取り消すことができるのでしょうか。

結論からいうと、取り消すことは可能です。
しかし、一旦廃除が認められた場合、それを取り消すためのハードルは想像以上に高く、簡単には取り消すことができない、というのが一般的な流れになっています。

取り消しについては、遺言によるものでも可能となっていますが、その場合も排除のときと同じように遺言執行者をあらかじめ指定しておくなど、事前準備が必要になってきます。

相続人の廃除が認められるケースは少ない


相続人の取り消しは一旦認められると、取り消しは難しいのが現実です。
同様に、相続人の廃除に関しても認められるためのハードルは高いものとなっています。

基本的には、被相続人の個人的な感情で簡単に認められることは少なく、客観的な証拠や事実をもとに判断されます。
そのため、簡単には認められず、慎重に審議されることとなるのです。

なぜ厳重なチェックが行われるのでしょうか。
理由としては、相続人の廃除が簡単に認められてしまうと、相続人廃除と遺産を盾にして自分の意のままに権力を振るうような人が出てくる可能性があるからです。
そのような悪質な行為を防ぐために、廃除・取り消しとも簡単には認められない構造になっています。

相続人の廃除と欠格の違いについて


相続人の廃除と類似したものに「欠格」という制度があります。
これは相続者が重い罪を犯した場合(他の相続人の殺害や遺書の偽造行為など)に、一生涯に渡って相続を受けられなくなってしまうという大変厳しい制裁です。

そして、欠格は被相続人がその罪を許し、遺産を相続させる意思を示したとしても、遺産は絶対に相続することができないものとなってします。
その部分は取り消せる可能性がある廃除と全く異なります。
また、欠格が認められるような罪は基本的に犯罪行為なので、発覚した場合は当然ながら刑事罰も受けることになるでしょう。

以上の通り、欠格はいかなる理由があろうと絶対に被相続人から遺産が受けられなくなる、とお話をしてきました。
しかし、近年ではその考え方も絶対のものではなくなってきています。
平成22年には、相続人を殺害した欠格者に対し、被相続者がこれを許し欠格が取り消される、という判決が出ています。
ただし、このようなケースはごく稀である点に注意が必要です。

相続人の廃除について正しく理解しておこう


今回は、相続人の廃除について詳しくご紹介しました。
相続については、基本的に法律で決められたようにしか手続きを行うことができません。
もしも間違った手続きを取ってしまうと、取り返しのつかない事態になる可能性があるので注意が必要です。

特に相続人の廃除・欠格は、証拠がなければ認められないだけでなく、仮に認められると、今度は取り消しのハードルが高かったり、取り消せないと定められたりしています。
利用する場合は慎重に判断することが大切だといえるでしょう。

事前によく調べたり、わからない場合は専門家に聞いたりしながら確実に手続きを踏むことが必要です。
また、たとえ手続きを正確に進めたとしても、相続人の廃除が確実に認められるとも限りません。
ぜひ今回の記事を参考に、遺産相続の手続きを要件通りにスムーズに進めていきましょう。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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