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2021/06/23
未成年を相続人にするには特別代理人が必要!選任方法と手続きの流れ
基本的には、相続人が未成年者である場合、遺産分割協議を行うことができません。
法定相続人に未成年者がいて遺産分割協議が開始できないという場合には、協議を行うために未成年者の代理人を選ばなければなりません。
また、選任する際にも基準が設けられています。
相続の際の利益が相反しないような人物を選び、適正な手続きを行わなければなりません。
この記事では、法定相続人に未成年者がいた場合の特別代理人の選任方法や、手続きの流れなどについてわかりやすく解説します。
未成年を相続人にするための特別代理人とは
特別代理人とは、遺産相続の際に相続人にあたる未成年者の代わりに、遺産分割協議を行ったり、名義変更を代行したりする人のことを指します。特別代理人を選ぶ際には、誰でもよいというわけではなく、親や法律の専門家など、事情に応じて適任の人を選ぶことが必要です。
未成年者が相続をする際に法定代理人が必要な理由
遺産の相続とは、法律に基づいて行われる行為です。
基本的に未成年が法律に基づいた行為をするときは、その保護者である法定代理人の同意を必要としています。
そして未成年者は法定代理人の同意がなければ、法律に基づいた行為をすることができません。
未成年者の行ったことが同意に基づく法律行為でなければ、これを取り消すことができると民法では明確に規定されています。
特別代理人の選任方法
特別代理人は通常、未成年者の親がなるのが一般的です。
しかし場合によっては、親が特別代理人になれないケースが存在します。
それは、未成年者と同じように、親自身も相続人になってしまっている場合などが該当することとなります。
こうなってしまうと、悪意はなくとも未成年者の相続分を全て自分が相続する、ということが実質的に可能になるからです。
現実的に、未成年者の相続分を、親に一括で相続させた方がよいだろうと思われるような場合(未成年者が未就学児である場合など)であっても、法律はそれをよしとはしません。
例えば母と子が相続人となっている場合、特定代理人を選任する必要があります。
このとき、利益が相反することがない親族者にお願いをするのか、法律の専門家に依頼をするのかを慎重に検討する必要があります。
特別代理人選任の手続きについて
ここでは未成年者が相続人となった場合の特別代理人の選任手続きについて、簡潔に説明していきます。
申し立ては未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。申立人については、親権者や利害関係人になります。
特別代理人選任の手続きにおいて必要になる書類は以下の通りです。
①特別代理人選任申立書
②未成年者の戸籍謄本
③親権者または未成年後見人の戸籍謄本
④特別代理人候補の住民票または戸籍の附票
⑤遺産分割協議書(案)や登記簿謄本など
⑥利害関係を証明する資料
これらが一般的に必要な書類になりますが、家庭裁判所から別に書類を求められることもあるので、お住まいの地域の取り決めをよく確認をしておく必要があります。
この家庭裁判所による手続きが完了しないと、特別代理人としての効力が認められず、遺産分割協議を正式に開始することができません。
特別代理人として正式に認められるまでには通常、2週間から1ヶ月くらいの期間が必要になります。
全ての書類を一度に揃えるのは大変ですが、遅延なく手続きを進めるためにも、できるだけ早く揃えて申し立てをしておいた方がよいでしょう。
未成年の相続人にする特別代理人が不要な場合について
ここまでは、相続の際に未成年の相続人がいる場合には特別愛理人が必要だと説明してきましたが、実は特別代理人が不要なケースも存在します。
ここではその主な例について説明していきます。
被相続人が遺言書を残している場合
被相続人が相続について遺言書を残している場合は、特別代理人は不要になります。
例えば、あらかじめ遺言書で「妻7割、長男3割」と指定されていれば、どちらか一方が不利な内容であっても、それにしたがって遺産分割を行わなければならないという効力が発生します。
したがって、遺産分割協議を行う必要がないので、特別代理人の選任も不要になります。
被相続者が多額の借金を抱えている場合
被相続者が多額の借金を抱えているため、未成年者とその親が同時に相続を放棄しようとしている場合は、特別代理人は必要ありません。
この場合は、相続人相互の利益が相反することがないので、どちらか一方が不利になるということがありません。
このような場合は、未成年者の親が法定代理人として、相続人である未成年者の代わりに相続放棄という法律行為ができるようになります。
相続放棄は相続発生から3ヶ月の間までと期間のしばりがあるので、その期限を過ぎないように注意しなければいけません。
法定相続分通りに相続をする場合
法定相続分通りに遺産分割する場合、遺産分割協議を行う必要がなくなります。
したがって、未成年の相続人に特別代理人を選定する必要がなくなります。
これ以外にも家庭の事情により、未成年の相続人に成年後見人がついているような場合、成年後見人が代理人となるので特別代理人は不要になります。
未成年者が相続人の場合に適用される未成年控除について
未成年者が法定相続による相続を受けた場合は、「未成年控除」と呼ばれる税金の制度が適用されることとなります。
ただし、この制度を忘れていたり、知らなかったりすると、適用にならない場合があるのでしっかりと申告する必要があります。
未成年控除とは
未成年控除とは、未成年者が相続を行う際に発生する相続税の一部が控除される、という制度です。
適用されるには、「20歳未満の相続人であること」「相続を受けた際に日本国内に住んでいること」「法定相続人であること」が条件となっています。
法定相続が原則となっているため、遺言書に養子になっていない未成年の孫に相続させる旨の記載があった場合などは、未成年控除は認められないことになります。
未成年控除の計算方法
未成年控除の計算額は、未成年者が20歳になるまでの年数(20-相続時点での未成年者の年齢)に10をかけた値になります。
また1年未満の期間については、全て切り上げて1年として計算をします。
つまり、1年1ヶ月でも、1年11ヶ月でも2年として計算されることとなります。
未成年控除の額が相続分より多い場合は、未成年者の扶養者の相続分から差し引くことができます。
その一方制限もあり、未成年者が以前にも相続を受け、その際に未成年控除の適用があった場合などでは控除額に制限を受ける場合があります。
未成年を相続人にする特別代理人は早めに選定しよう
未成年を相続人にする場合の、特別代理人の仕組みや選定方法について説明をしてきましたが、いかがだったでしょうか。
遺産相続の際には、遺産分割会議、名義変更などの手続きが必要になる場合があり、それらは特別代理人を選任しておかなければ進めることができません。
その一方、特別代理人が必要ないケースも存在します。
未成年者がいる場合は、特別代理人が必要になるのかしっかり検討してください。
もし、必要な場合は早期に特別代理人を選任しておくことで、相続に必要な手続きを遅延なく進めていくことができるでしょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
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