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■お役立ちコラム特集

2021/06/23

預貯金にかかる相続税と評価額の方法

相続財産には様々な種類があり、一般の方にとっては難しい問題だと言えます。
様々な注意点がありますが、特に気を付けておきたいのが、預貯金の相続に関することです。
預貯金の相続においては申告漏れによる延滞税の納付が発生することも多く、気を付けておかなければなりません。
今回は、預貯金の相続に関する注意点や、預貯金にかかる相続税の金額を決める評価額の決め方について解説します。

預貯金の相続とは


被相続人の預貯金も相続の対象であり、相続人はその性質やポイントを理解しておく必要があります。
そのためここでは、預貯金の相続に関する基本的な知識について解説します。

預貯金の相続とは「権利」の相続


預貯金の相続とは、金融機関より預貯金額に応じた現金の引き出しをする「権利」を相続することと言い換えられます。
銀行預金の相続では、基本的に被相続人が持っている預金名義を相続人のものに変更します。
相続した後は引き出して現金化しても問題なく、そのまま名義だけを変えて継続することも可能です。

現在では預貯金の相続も遺産分割協議が原則必要


預貯金の相続に対し、従来は遺産分割協議を行う前に、相続人各自がそれぞれの相続分に応じて単独で処分できると考えられていました。
しかし、平成28年の最高裁判決において、預貯金も遺産分割協議の対象とすべきとの判断が下されています。

つまり、被相続人の預貯金を金融機関から引き出すためには、相続人全員が参加した遺産分割協議を完了させなければならないということです。
遺産分割協議がまとまっていないうちに口座の解約を申し出ても、基本的には却下されてしまうため気を付けましょう。

預貯金にも相続税はかかる


ここで整理をしておきますが、預貯金に対しても、相続税は発生します。
そのため、遺産分割協議においては、被相続人の持っていた口座を全て調べ、通帳や銀行の残高証明書を確認しなければなりません。
預貯金の確認は簡単に進まないことも多く、遺産分割協議が終わって相続を行った後に、新たな口座の存在が判明するケースもあります。

また、被相続人が亡くなる直前に譲渡した金銭などは、被相続人の口座に入っていなかったとしても相続財産の一部だとみなされる可能性もあります。
相続にあたっては、専門家に相談をして正確に行っておくことが求められるでしょう。

預貯金を相続する際の注意点


預貯金は相続税の課税対象財産であり、相続にあたっては安易に扱わないことが大切です。
そのためここでは、預貯金を相続する際の注意点をご紹介します。

口座の凍結


預貯金の相続において、まず気を付けなくてはならないのが、預金口座の凍結です。
口座名義人が亡くなると、その預金口座は凍結されます。
凍結された口座からは当然預金を引き出すことができず、光熱費の引き落としなども止まってしまうため、気を付ける必要があるでしょう。

口座の凍結は相続手続きが終わるまでに、誰かが勝手に預貯金を引き出さないようにする大切な手続きであり、避けることができません。
また、金融機関からしても相続に関するトラブルに巻き込まれないようにするための欠かせない手続きであり、凍結自体はやむを得ないと考えた方が良いでしょう。
そのため、口座が凍結してしまった場合についても気を付けておかなければなりません。

別の預金口座の存在


相続にあたっては、現在分かっている口座以外にも預金口座がないかどうかにも気を付けなくてはなりません。
もし別の口座があったにも関わらず、気づかないまま遺産分割協議が済んで、相続税を申告すると、後日発覚した際に、延滞税を負担する必要性が出てきてしまう可能性があります。
休眠口座(全く使わないまま10年以上が経過した口座)などがあると、なかなか預貯金の引き落としができないこともあるため、注意しましょう。

可能であれば被相続人がまだ元気なうちに、所有している口座を全て整理しておくことをおすすめします。

安易に預金を引き落とさない


故人の口座からは、安易に預貯金を引き落とさないことが大切だと言えます。
預金を引き出してしまった時点で相続をしたとの既成事実になってしまい、相続放棄ができなくなってしまうからです。

相続と聞くと土地や現金、建物など、プラスの財産ばかりを受け継ぐイメージがあるかもしれませんが、相続する財産はプラスの財産だけではありません。
借金や未払金といったようなマイナスの財産も相続財産に含まれるのです。
そのため「相続財産全体を整理したところ、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多かった」というケースも決して少なくありません。

その場合には、相続放棄をしてマイナスの財産を受け継がないという手段を取ることができるのですが、預金を引き出してしまうと相続したことになってしまうため、相続放棄ができなくなってしまいます。

被相続人に何らかのマイナスの財産があることがはっきりしている場合はもちろん、そうでない場合も口座の凍結が解除された後に、すぐ預貯金を落とすのは避けましょう。

預貯金の相続税金の評価額は?

ここまで、預貯金に対して相続税が課されることなどについてお話ししてきましたが、正確な意味で預金の評価額の判断はどのように行うのでしょうか。


ここでは、預貯金の相続税評価額の算出方法について解説します。



普通預金の相続税評価額


普通預金の場合、基本的な相続税評価額は、相続開始日現在における預金残高をそのまま採用します。
残高証明の取得を金融機関に依頼すれば、確認することができるでしょう。

既経過利息(相続開始日に解約した場合にかかる税額を差し引いた後の利子相当額)に関しては、預金が多額でなく課税上の問題がない場合は、相続財産として申告する必要はありません。
ただし、既経過分利息が多額になるケースでは加味する必要が出てくるため注意が必要です。

名義人が被相続人でなくても、実質的に被相続人の財産だとみなされる可能性もあるため気を付けましょう。

定期預金の相続税評価額


定期預金の相続税評価額は、相続開始日の預金残高に既経過利息を足した額になります。
基本的には、普通預金の評価額を確認する場合と同様に残高証明書の発行を依頼しますが、その際に、利息の計算書の発行も依頼するようにしましょう。

外貨預金の相続税評価額


外貨預金の場合でも円貨建ての預金と変わらず、残高証明書を発行してもらうことで評価額を確認することが可能です。
その際には、円貨に換算して算出するため、仕組みを理解しておきましょう。
円貨に換算する際には、課税時期現在における納税者の取引金融機関が公表する「対顧客直物電信買相場(TTB)」によって評価します。

TTBとは金融機関が顧客から円貨で外貨を買う際の、顧客側からすると外貨を円貨に交換する際の為替相場のことです。

預貯金に相続税がかかるため評価額計算法を理解しよう


預貯金の相続とは、被相続人の預貯金が入っている口座から現金を引き出す権利を相続することであり、評価額に応じて相続税が課税されます。
預貯金を相続する際には、他の口座が存在しないか注意し、遺産分割協議前に安易に引き出しを行うのは避けましょう。

口座種類別の相続税評価額の出し方について理解を深め、スムーズに相続手続きを進めてください。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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