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■お役立ちコラム特集

2021/06/23

家族信託とは?必要性やデメリットをわかりやすく説明

近年、メディアでもよく取り上げられている、家族信託をご存じでしょうか。
柔軟な財産管理が可能になる方法として注目を集めており、制度を利用したいと考える方も少なくありません。

そこで、本記事では家族信託のメリットやデメリットを中心に解説します。
メリットとデメリットを知ることで、家族信託の必要性も理解できるでしょう。合わせて家族信託を行う方法についてもご紹介します。

家族信託とは


財産を家族へ託し、適切に管理運用してもらう制度を指します。
信託という言葉からもわかるように、家族を信じて財産を託す制度であるため、家族信託と呼ばれています。

なお、信託には商事信託と民事信託の2つがあります。
前者は、信託銀行のような金融機関に財産を管理してもらう方法で、後者は人に管理運用してもらう方法です。
前者が営利目的なのに対し、後者は非営利であり、家族信託も民事信託に属します。

家族信託のメリット


家族信託がこれほど注目を集めているのは、新たな財産管理の方法だからではありません。
さまざまなメリットが得られるからこそ、多くの方から注目を集めているのです。
具体的なメリットを見ていきましょう。

認知症対策に有効


親が認知症になったとしましょう。
本人の判断能力が低下してしまうため、不動産の売却や銀行口座からの現金引き出しなどが難しくなります。
そのため、子供が親の代わりに売却や現金引き出しの手続きを代行しよう、とするシーンが考えられます。

ただ、認知症であることを理由に、子供が親の預金を勝手に下ろすことはできません。
成年後見制度を利用すれば、ある程度の裁量はもてますが、できることに限りがあります。
また、成年後見制度は認知症の症状が進んでからでないと制度を利用できないのです。

そこで注目を集めているのが、家族信託です。
家族信託なら、託された財産をルールの中で管理運用できるため、親が認知症になっても現金を下ろせない、不動産を売却できないといったことがありません。

委託者が亡くなったあとも安心


成年後見制度でも、財産を管理してもらうことは可能ですが、制度がおよぶのは生前のみです。
つまり、本人が亡くなってしまえば、成年後見制度もそれに伴い終了してしまうのです。

一方、家族信託ならそのようなことがありません。
委託者が亡くなっても制度を利用できるため、配偶者や子供のために、引き続き財産を管理してもらえるのです。

遺産分割協議が不要になる


家族信託には遺言としての効果が期待できます。
あらかじめ、財産を承継する人物を決めておけるため、亡くなったあとの相続をスムーズにできるメリットがあります。

相続が発生すると、遺産分割協議が始まりますが、話し合いがスムーズに進むとは限りません。
意見がぶつかり合い、骨肉の争いに突入してしまうケースも多々あります。

あらかじめ承継者を決めておけば、遺産分割協議が不要となるため、相続人たちの負担を軽減できるでしょう。

費用面でのメリットがある


成年後見制度では、必ずしも家族が後見人となるわけではありません。
誰が後見人となるかは、家庭裁判所によって決められるからです。
家庭裁判所の判断により、家族以外の専門家が成年後見人となるケースは多々あります。

専門家が成年後見人になった場合、費用が発生します。
ボランティアではないため、月々報酬を支払わなければならないのです。
場合によっては、長期にわたり報酬を支払わねばなりません。
一方、家族信託なら家族が財産の管理を行うため、原則報酬は発生しないのです。

成年後見制度より柔軟


成年後見制度は、本人の財産をできるだけ減らさないことが重視されます。
そのため、後見人のできることがかなり制限されており、柔軟性に欠けているのです。

たとえば、親名義の不動産を活用して収益を得ようとしても、成年後見制度ではできません。
投資により財産を減らしてしまうおそれがあるからです。
一方、家族信託は受託者にさまざまな権限が付与されるため、親の不動産を用いて投資をすることは十分可能です。

家族信託のデメリット


さまざまなメリットがあるゆえに注目されている家族信託ですが、デメリットがあることも覚えておきましょう。
身上監護権がない、制度を利用できないことがある、同意を得られない可能性がある、などが代表的なデメリットとして挙げられます。

身上監護権はない


成年後見人の場合、身上監護権が与えられます。
そのため、認知症を患っている親の代わりとして、介護施設への入居契約や、介護サービスの契約を代理できます。

一方、家族信託はあくまで財産を管理するための制度であり、身上監護権はありません。
そのため、成年後見人ならできることが、できない可能性もあるのです。
ケースバイケースではありますが、このようなデメリットが生じる可能性があることは覚えておきましょう。

家族信託ができないこともある


家族信託における受託者は、ルールに基づいて適切に財産の管理運用を行わねばなりません。
さまざまなルールを守る必要があるのはもちろん、責任も生じます。

こうした理由から、財産の管理を家族が誰もやりたがらない可能性があるのです。
このようなケースでは、家族信託そのものができません。
制度を利用したいのなら、きちんと家族と話し合い、納得してもらう必要があります。

同意を得られない可能性がある


たとえば、親の認知症対策として子供が家族信託を始めたいと考えても、親の同意が得られなければどうしようもありません。
仮に認知症の症状が確認できていたとしても、本人が「認知症扱いするな!」となってしまうと、なかなか同意は得られないでしょう。

実際このようなケースは少なくありません。
このような状態がいつまでも続くと、認知症の症状がどんどん悪化し、どうしようもなくなってしまいます。
きちんと早期に話し合い、納得と同意を得る必要があります。

親族間でトラブルが起きる可能性


家族信託における受託者は、財産管理に関して強い権限をもちます。
そのため、受託者に対しほかの家族から不満の声が上がり、最終的にトラブルへ発展してしまうおそれもあります。

親が自分以外の子供に財産の管理を任せたとなると、選ばれなかった人の不満が高まるのは自然なことでしょう。
「親の財産を自由に使っているのではないか」と家族間で疑心暗鬼になり、関係性が悪化してしまうおそれもあります。

信頼できる専門家が少ない


家族信託は個人で行うことも可能ですが、さまざまな知識が必要であるため、専門家のアドバイスを聞きつつ進めるのが一般的です。
ただ、あらゆる知識が必要なことから、実務に長けた専門家が少ないのも現実です。

家族信託の実務に長けている専門家なら、公式ホームページやSNSなどでその旨を発信しています。
このような専門家なら、適切に対応してもらえるでしょう。

家族信託を行う方法


基本的には、弁護士や司法書士など、家族信託の実務を得意とする専門家へ相談します。
そのうえで、家族の誰に財産を託すかを決めましょう。
受託者は、託された財産の管理運用に関し、強い権限を付与されます。そのため、誰に託すかは慎重に考えなくてはなりません。

受託者を決めたら、公正証書契約書を作成しましょう。
契約を締結したら、信託口座の作成や不動産の名義変更等を行います。

まとめ


家族信託なら、成年後見制度よりも柔軟に財産の管理や運用ができます。
自分に何かあったときのため、親が認知症になったときのため、家族信託の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

本記事でもお伝えしたように、家族信託には多くのメリットがある一方でデメリットもあります。
そこはきちんと理解しておきましょう。
メリットとデメリットを把握し、そのうえで制度を利用するかどうか決めてください。自分たちだけで進めることも可能ですが、ここでもお伝えしたように専門家に相談しつつ進めるのがベストです。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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