■お役立ちコラム特集
2021/06/24
遺贈と相続の違いとは?遺贈の種類や注意点を解説
遺言などで「いままで貯めてきたお金を子供に相続させる」「孫に所有しているマンションなどを遺贈する」といった文章を見かける場合がよくあります。
法律に関する知識があまりない人や、そもそも相続などに詳しくない人にとって、遺贈と相続は同じようなものに感じられるかもしれません。
しかし、それぞれ大きな違いがあり、あらかじめ知っておかないとトラブルにつながる恐れもあります。
今回の記事では、遺贈と相続の詳しい違いや遺贈の種類・注意点などについて詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてください。
遺贈と相続の違いを詳しく解説
遺贈と相続に関しては、その財産を受け取る人から税金面まで、細かいところに違いがあります。
それぞれの違いについて以下で詳しく見ていきましょう。
そもそも遺贈とはどういったものなのか?
遺贈とは故人が残した遺言によって、財産の全部もしくは一部を、財産を受け取る側に対して無償で譲ることを指します。
一般的に特定の遺言などが残されていない場合は、誰が亡くなった人の残した財産を受け取ることになるのか、どのくらいの割合で分割されるのかというのは、日本国の民法によって定められておりそれに従わなければいけません。
例えば、ある男性が亡くなった場合、その人に配偶者や子どもなどが残されていた場合は、その人たちは法定相続人として残された財産を受け継ぐことになります。
もっとも遺言書を事前に作っておくことによって、配偶者や子供といった法定相続人以外の人に対しても財産を残すことが可能です。
このように法定相続人以外に対して、亡くなった人が遺言書により一定の財産を受け継がせることを「遺贈」といい、それを受け継ぐことになる人のことを「受遺者」といいます。
人によっては家族だけではなく全く関係のない他人に1番お世話になるということもあり、そういった人がある程度の財産を感謝の印として残せるようにしたのが 、遺贈の元々の制度趣旨です。
近年では自分が残した財産を、社会のために役立て欲しいという意思と、節税面の両方から鑑みた有効な手段として遺贈寄付などを行う人もいます。
遺贈と相続の違いに関して 残された財産を受け取る人
遺贈と相続の最大の違いは、残された財産を受け取る人が法定相続人かそれ以外の人かという点です。
遺贈に関しては、生前にお世話になったが全く関係のない第三者に対して行われることが多く、それを行う際には遺言を別にしっかりと残す必要があります。
仮に遺言で遺贈を行ったからといって、関係のない第三者に対し全ての財産を受け継がせるということができません。
ある程度の財産は残された妻や子供に対して行き渡るというのが、法律によって定められており遺言を残し際には注意する必要があるでしょう。
このように、遺言がなくとも法律によって受け取ることのできる財産を割合が決められているのが法定相続人です。
ある男性が命を落とした場合、その人に妻と子供が残されていた際には、妻と子供それぞれに対して遺産が受け継がれることになります。
この際に、特別遺言が残されていなければ、妻や子供以外の関係のない第三者に対して、残された財産が渡ることはありません。
このように遺贈と相続に関しては「誰が残された財産を受け取るのか」という点が大きく異なってきます。
遺贈と相続の違いに関して 税金面
遺贈と相続の違いに関してもう一つ重要なポイントが税金面に関してです。
どちらの場合であっても財産を残す人にとっては、できるだけ税金がかからないように残したいというのが当たり前の感情なのではないでしょうか。
実は遺贈の場合、相続よりも相続税が多く必要になってしまうため注意が必要です。
相続税よりも2割加算した額を支払うことになる必要があるため、もし遺贈によって第三者に財産を受け継がせたいという場合は、税金面を事前にしっかりと確認しておく必要があります。
遺贈の種類はどんなものがあるのか?
遺贈には2つの種類があります。
● 包括遺贈
● 特定遺贈
それぞれについて以下で詳しく説明していきます。
包括遺贈とは
一般的に財産を残すという場合、単純にお金だけではなく不動産や外貨、最近では仮想通貨などを受け継ぐことが考えられます。
その際に特定の財産、例えば「甲さんには仮想通貨だけを遺産として残します」といったような形ではなく、全財産の中から分割したものを残すというのが包括遺贈です。
こういったやり方で遺贈を受けた場合には、妻や子供といった相続を受ける人の財産と合計して分割したものから財産を受け継ぐことになります。
しかし、このやり方で財産を遺贈する場合、債務などの負の遺産も一緒に引き継がせることになるため、必ずしも良い面ばかりであるとは言い切れません。
特定の第三者に対して、債務などの負の遺産を残さないようにするためには、以下で解説する特定遺贈の方式を採用した方が良いでしょう。
特定遺贈とは
特定遺贈に関しては、その名が示している通り個人に受け継がせる財産をしっかりと決めて遺贈させる方法のことを指します。
上記で紹介した包括遺贈と明確に違うポイントは、債務などの負の遺産もまとめて受け継ぐことがないというところです。
また特定の財産のみを受け継ぐことになるため、他の財産に関しては関係なく、 遺産分割の協議に参加する必要がないという点も大きなメリットになります。
遺産分割の協議に参加する必要がないため、相続人とはある程度関係ない立場であるということができるので、特定の財産だけを受け継がせたいという人にとっては最適の方法です。
お世話になった第三者に対して、ゆかりのある財産や不動産残したいという場合によく使われる方法でもあります。
例えば「甲さんには生前お世話になったから、感謝の気持ちを込めて現金3,000,000円を残します」といった遺言を残した場合、甲さんはそのお金を受け取ることができるのです。
もっとも特定遺贈をされた場合、受遺者は財産を受け継ぐか否か自由に選ぶことできます。
残された財産を受け継ぐか否かの意思を示して下さいと催告を受けた場合、その意思表示をしないまま一定期間経過してしまうと、承認したものとみなされてしまうので注意が必要です。
遺贈に関する様々な注意点とは
遺贈を行う場合、もしくは財産を受け取る側になる場合についてはいくつか注意しなければいけないポイントがあります。
そこでそれぞれのポイントについて解説するので、参考にしてください。
不動産に関する注意点
遺贈によって不動産を受け継ぐことになる場合、受遺者は不動産の名義を変更しなければいけません。
もっとも不動産に関しては、相続人全員で共同申請をする必要があり、相続することになる全ての人で署名と押印をした登記書類が必要になってしまいます。
相続人全員で共同申請する際には、スムーズに登記書類を用意することができない場合が多く、かなりの労力が必要です。
トラブルの元になってしまうため、遺贈で不動産を受け継がせる場合には、事前にしっかりと必要な手続きなどを行っておきましょう。
無効になる可能性もあるので注意
遺贈に関しては、その方法によって無効になってしまう場合もあるので注意が必要です。
無効になってしまう場合とは、著しく不公平な遺贈が行われてしまった場合がこれにあたります。
通常、亡くなった被相続人の配偶者や子どもなどに対しては、最低限の財産が残されるように日本では遺留分として民法に定められており、 これを逸脱して他の人に遺贈をすることはできません。
残された人が普段と同じように生活ができるよう一定の財産を残すことが相続制度の制定趣旨となっており、その趣旨に反し他の人に対して過度な遺贈により財産を残してしまうと、遺贈そのものが無効になってしまう可能性もあるのです。
そのため遺贈を行う場合には、民法で定められた遺留分が法定相続人に対して残されるようにしっかりと調整する必要があります。
遺贈と相続の違いをしっかり理解してトラブルがないように財産を残そう
今回紹介したように遺贈と相続にはさまざまな違いがあるので、その違いをしっかりと明確に区別することができなければ、様々なトラブルにつながってしまう可能性があります。
まだ被相続人が生きている場合は、トラブルを防ぐために遺言の修正などすることもできますが、なくなってしまうと残された家族や受遺者に迷惑がかかってしまうので、必ず遺言はトラブルがないように作成しましょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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