1. トップ
  2. コラム一覧
  3. ■お役立ちコラム特集
  4. 内縁の妻は相続できない!遺産を受け取るための方法とは

■お役立ちコラム特集

2021/06/24

内縁の妻は相続できない!遺産を受け取るための方法とは

自分たちの主体的な意思により、あえて入籍をせずに内縁関係を続ける人もいまが、内縁関係により起こりやすいのが、財産の相続に関する問題です。
事実上婚姻関係にあり、生活を共にしていても内縁の妻には相続権がありません。
しかし、生前から備えておくことで、内縁の妻が遺産を相続できる場合もあります。そこでこの記事では、内縁の妻が遺産を受け取るための方法をご紹介します。

そもそも内縁の妻とは


そもそも内縁の妻とは、どのような位置付けのことを指すのか理解しておきましょう。

内縁の妻の定義


まず内縁とは、婚姻の意思を持ち事実上の夫婦として共同生活を送っているものの、婚姻届の提出はしていない関係のことをいいます。
日本では、婚姻届を役所に提出しないと民法上の「配偶者」として認められないので、内縁の妻とは、あくまでも「事実上の妻」ということです。

内縁の妻と愛人は違う


内縁の妻と愛人は混同されがちですが、愛人とは、お互いもしくは双方に法律上の配偶者がいる状態で、相思相愛の関係のことをいいます。
内縁の妻は、婚姻の意思を持っているのに対し、愛人の場合は、婚姻の意思を持っていないという定義で考えられています。

また、内縁の妻と違い、愛人においては法律上の保護はほとんどありません。

内縁の妻の相続権とは


内縁の妻は、法律上の配偶者ではないものの、事実上の夫婦関係の人であることから、夫婦と同様とみなされて、貞操義務や生活費の分担負担義務、事実婚を解消したときの財産分与の義務などの権利義務が認められています。

しかし、法律上の夫婦とは区別され、内縁の妻には認められない権利義務もあり、その1つに相続権も含まれています。

内縁の妻は遺産を相続できない


夫婦と変わらないような関係で、何年も共同生活を続けていたとしても、内縁の妻にはパートナーの遺産の相続権はありません。
相続権が認められるのは、婚姻届を役所に提出している場合に限るので、仮に裁判で不服を申し立てても相続権は認められません。

相続できるのは法定相続人


被相続人の財産を相続できるのは法定相続人です。
法定相続人とは、民法により定められた被相続人の財産を相続する権利のある人のことをいいます。法律上の配偶者は常に法定相続人で、被相続人の血族も法定相続人になれます。

相続順位は、被相続人と近しい人から先の順位で、以下のように決められています。

・ 第1順位:子供や孫、ひ孫などの直系卑属
・ 第2順位:親や祖父母、曾祖父母などの直系尊属
・ 第3順位:兄弟姉妹(死亡している場合は甥・姪)

内縁の妻でも賃借権は認められる場合がある


一定の要件を満たしていれば、内縁の妻に賃借権が認められる場合があります。
賃借権とは、家賃を支払って借りている土地や住宅を使用できる権利のことです。

例えば、賃貸のマンションに内縁関係であるパートナーと住んでいて、パートナーが亡くなったとき、内縁の妻が今まで住んでいた住居を引き払わなければならないと、生活に支障が起きかねません。
そのため、内縁の夫が亡くなっても、そのまま今までの住居に住み続けることができると認めているのです。ただし、以下の条件を満たしている必要があります。

・ 住むための賃貸物件である
・ 被相続人に相続人がいない
・ 被相続人が亡くなったとき一緒に暮らしていた

内縁の妻との子供には相続はできる?


内縁の妻との間に生まれた子供(非摘出子)に対しては、内縁の夫が非摘出子を認知しているかどうかで相続権の有無が異なります。

認知している場合


内縁の夫が非摘出子を認知している場合は、非摘出子に相続権があります。
非摘出子の相続分は、被相続人の実子と同等です。
また、子供が内縁の妻の連れ子で血が繋がっていない場合においても、養子縁組をしていれば相続権があります。

認知していない場合


内縁の夫が亡くなる前に非摘出子を認知していない場合、非摘出子に相続権はありません。
しかし、内縁の夫が亡くなってから3年以内に、内縁の妻や非摘出子が認知の請求の裁判をして、無事に認知が認められれば相続権を得られます。

内縁の妻が遺産を受け取る方法


原則、内縁の妻には相続権がありませんが、以下のような方法により遺産を受け取れる場合もあります。

生前贈与をしておく


生前贈与は、内縁関係であっても可能なので、上手く活用することで内縁の妻は遺産を相続できます。
贈与税には基礎控除があり、贈与額が年間110万までは課税されません。
そのため、例えば毎年100万円を10年にわたって贈与すれば、10年間で1,000万円を非課税で贈与できます。

このような贈与の方法を「暦年贈与」といいますが、暦年贈与は毎年、同じ金額を同じ時期に贈与すると、一定の贈与を目的とした「定期贈与」とみなされ、贈与税がかかってしまうので注意しましょう。

暦年贈与をする際は、贈与する金額や時期を毎年変え、適切に贈与が行われたことを証明できるように「贈与契約書」を作成して記録を残しておきましょう。

遺言書を作成しておく


遺言書に「内縁の妻に財産を遺贈する」と記しておけば、内縁の妻は被相続人の財産を相続できます。
ただし、法律で定められた方式で記載しないと効力を持たないので注意が必要です。

特別縁故者になる


内縁の妻が財産を相続するには、「特別縁故者」になるという方法もあります。
特別縁故者とは、被相続人の生活を支えていたなど、被相続人との関係が親密であったために、被相続人の財産を相続できる人のことをいいます。

ただし、特別縁故者になれるのは、被相続人に法定相続人がいないことが条件です。
特別縁故者になって財産を相続するには、家庭裁判所に申し立てをして認めてもらう必要があります。申し立てに必要な書類と費用は以下の通りです。

・ 申請書(裁判所のHPからダウンロード可能)
・ 申し立てをする人の住民票、もしくは戸籍の附票
・ 連絡用の郵便切手代
・ 800円分の収入印紙

なお、特別縁故者の相続分に対しては、相続税の納税額が2割加算されます。

生命保険金の受取人に指定する


生命保険金は「みなし相続財産」として扱われるので、相続の対象となります。
よって、生命保険金の受取人を内縁の妻に指定しておけば、内縁の妻が相続できます。

ただし、保険金の受取人を内縁の妻に指定できるかどうかは保険会社によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

遺族年金を受け取れるケースもある


内縁関係にあった配偶者がなくなったとき、被相続人と事実上婚姻関係で、かつ生活を共に維持してきたことが日本年金機構から認められれば、内縁の妻は遺族年金を受給できます。

遺族年金とは、生計を支えていた家族が亡くなったとき、残された遺族の生活を保障するために支給される年金です。
遺族年金には、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があり、どちらの遺族年金を受給できるのかは、被相続人が加入していた方の遺族年金の種類によって決まります。

遺族基礎年金の受給は、子供がいることが条件になります。
なお、子供がいても認知されていない場合は受給できません。遺族厚生年金においては、子供がいなくても受給できます。ただし、子供がいなくて内縁の妻が30歳未満の場合、受給できるのは5年間に限られます。

内縁の妻に相続する際に考慮すべきこと


内縁の妻に財産を相続する際は、遺留分侵害請求をされないように考慮したうえで、内縁の妻の相続分を決めるようにしましょう。

法定相続人は、一定の相続財産を相続する権利が法律で認められており、その相続分のことを「遺留分」といいます。
よって、生前贈与や遺言により全財産を内縁の妻が相続した場合、法定相続人は遺留分を侵害されたとして、遺留分侵害請求をすることができます。

遺留分の請求によって内縁の妻が遺留分権利者と揉めないよう、遺留分を除いて内縁の妻に相続するようにしましょう。

まとめ


パートナーシップ制度を採用している自治体もあり、あえて内縁関係を続けている人も少なくありません。
しかし、婚姻届を役所に提出していないと内縁の妻には相続権がないので、遺産を相続させたい場合は、生前贈与や遺言書の作成などをしておきましょう。
また、相続トラブルを起こさないために、法定相続人の遺留分は侵害しないように気をつけてください。



はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

この記事の関連記事

ゴルフ会員権の相続税評価の方法と相続の流れ

ゴルフが好きだった方の財産を相続した際によくあるのが、財産を…

ゴルフが好きだった方の財産を相続した際によくあるのが、財産を…

相続税の速算表の使い方|計算シミュレーションが簡単にできる

自分が支払うことになる相続税がどのくらいなのか、具体的な金額…

自分が支払うことになる相続税がどのくらいなのか、具体的な金額…

相続税の延納はデメリットに注意!条件や手続きの方法まとめ

遺産相続で相続税を払わないといけないけれど手元にお金がない、…

遺産相続で相続税を払わないといけないけれど手元にお金がない、…

相続人不存在の遺産の行方―手続きの流れと登記の方法

親兄弟など親族のような近しい人々がいない場合に、相続人がいな…

親兄弟など親族のような近しい人々がいない場合に、相続人がいな…

相続人の範囲はどこまで?配偶者や子供がいないと誰が相続する?

被相続人が死亡された際には、相続税の申告を実施しなければなり…

被相続人が死亡された際には、相続税の申告を実施しなければなり…

相続税の納付期限はいつまで?超過するとどうなるの?

大切な人が亡くなり葬儀が終わった後、相続について遺族同士で話…

大切な人が亡くなり葬儀が終わった後、相続について遺族同士で話…

相続税の2割加算とは?なぜなのか知らないと損をするかも

被相続人の遺産を相続する際、相続人の中には相続税が2割加算さ…

被相続人の遺産を相続する際、相続人の中には相続税が2割加算さ…

遺産にかかる税金はいくら?計算方法や税金対策の基本を学ぶ

遺産を相続したら、いくら相続税がかかるか考えたことはあるでし…

遺産を相続したら、いくら相続税がかかるか考えたことはあるでし…

人気記事ランキング

女性に寄り添う相続専門税理士が教える、相続発生前にできること

今回は、久保順子税理士事務所代表の久保順子さんに「女性に寄…

元国税調査官の税理士が教える!税務調査対策のポイント!

今回は、元国税調査官である稲川善文税理士事務所代表の稲川善文…

まずは話してみることから。アットホームな相続事務所

今回は司法書士・行政書士菅井事務所、菅井之央さんにお話しを伺…

若手税理士の視点でみる「相続」

今回は新宿税理士事務所代表、坂根崇真さんにお話しを伺ってきま…

札幌遺産相続手続き専門代行所について教えてください!

今回は札幌遺産相続手続き専門代行所(行政書士 千田 大輔 行…

不動産に強い税理士が教える生前対策について

今回は渡邉優税理士事務所代表、渡邉優さんにお話を聞いてきまし…

こんなことまでできるんです! 相続手続き代行の専門家に依頼できることとは!?

今回は遺産相続手続まごころ代行センター代表、嶋田裕志さんにお…

負債物件はどうすればいいの?

今回は、株式会社ファースト不動産鑑定代表、古家一郎さんにお話…

元国税OB税理士の目線で見極める、いい税理士の見分け方

今回は新百合ヶ丘相続税理士事務所【しんゆり相続・しんゆり相続…

時間や労力を惜しまずに、お客様と真摯に向き合う姿勢

今回は、司法書士法人花沢事務所の花沢良子さんにお話をうかがい…

人気記事ランキング

相続簡単資料ダウンロードはこちらから