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■お役立ちコラム特集

2021/06/24

故人の兄弟が相続する場合の遺産分割方法~争族にならないためのコツ

故人に子や直系の両親がいない場合、相続対象は故人の兄弟です。
兄弟の相続は面倒事になりやすく、もともと仲が良かったとしても関係が険悪になることもあります。

ここでは、亡くなったかたの兄弟が遺産を相続する際の分配方法や、相続で面倒事を起こさないためのポイントを紹介します。

法定相続分を参考にして相続の内訳を決める


法定相続分とは、遺産を公平に分けることを目的としたルールです。
民法によって、相続の優先度と内訳が定めてあります。では、どのように優先度が決められるのでしょうか。詳細を見ていきましょう。

法定相続分の優先順位


最も優先されるのが故人の配偶者です。配偶者は常に相続人となります。

その次に相続対象となるのが故人の子です。
子が死亡していて孫がいる場合は、孫が対象です。子や孫のことを第一順位と呼びます。

第二順位にあたるのが故人の父母です。
すでに父母が死亡している場合、祖父母が健在であれば祖父母が対象です。

そして最後に、故人の兄弟姉妹が第三順位にあたります。
兄弟姉妹が死亡している場合は、甥や姪が代わりに対象者になります。遺産相続においては、故人の配偶者や子が優先ですので、実際に兄弟姉妹が相続するシチュエーションは少ないといえます。

法定相続分の内訳とは?


相続対象が配偶者のみの場合、配偶者がすべての遺産を受け取ります。

配偶者と第一順位(故人の子)の場合、財産の半分を配偶者に、残りの半分を第一順位の人間で分けます。

配偶者と第二順位(故人の父母)の場合、財産の3分の2を配偶者に、残りの3分の1を第二順位の人間で分けます。

配偶者と第三順位(故人の兄弟)の場合、財産の4分の3を配偶者に、残りの4分の1を第三順位の人間で等分します。
そのため、兄弟が複数いるときは4分の1をさらに兄弟で分配することになります。
また、故人に配偶者、子、孫、父母、祖父母のいずれもいない場合は兄弟だけで遺産を等分します。

法定相続分の影響力


法定相続分で決められた内訳は、あくまでも分割の目安です。
必ずしも従う必要はなく、相続人同士で話し合って、相続の内訳を決定できます。

具体的には、介護していた兄弟姉妹の相続を増やすなど、故人の希望によって金額を変えられます。

故人の兄弟が遺産を相続する条件


故人の兄弟姉妹が相続対象となるパターンのほか、相続するはずの兄弟姉妹が亡くなっているパターンについても紹介します。

故人に配偶者がいる場合といない場合


故人に配偶者がいる場合、子、孫、父母、祖父母がいない場合のみ、兄弟が相続対象になります。
配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1という内訳で遺産を相続します。

故人に配偶者がいない場合、第一順位と第二順位の相続人がいなければ兄弟が受け取りの対象になります。

相続人の兄弟が死亡している場合


故人の兄弟姉妹が相続対象になっているのに、すでに兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥や姪が代襲相続できます。

代襲相続とは、本来相続するはずだった相続人が亡くなっている場合に、孫、ひ孫、甥、姪が遺産を受け取ることです。
代襲相続になっても相続の割合は変化しません。もともと兄弟に分配されるはずだった割合のまま相続されます。

兄弟の相続争いでもめる原因


相続ではよくトラブルが起こり、争族の状態になってしまいます。
争族とは、遺産の相続争いによって親族がもめている状況を指します。

ではいったい、何がもめごとの原因になってしまうのでしょうか。
兄弟が争族の状態になってしまう原因を紹介します。

相談していない


遺産の相続には法定相続分で決められた目安がありますが、最終的に相続を決めるのは親族の話し合いです。
兄弟姉妹でのコミュニケーションが不十分だと問題が起きやすくなります。

話し合いが上手くいかない理由として、兄弟姉妹の立場の違いがあります。
遺産相続の手続きは、兄弟の中の一人が手続きを進めるため、途中で話し合いをしなければ内容が不透明になります。
手続きに関わっていない兄弟姉妹から不満が出てくるでしょう。

また、もともと家族の仲が悪いこともあるかもしれません。
相続で険悪なムードが続くと、小さい頃にイジワルされた記憶など、忘れていたはずの些細なことを思い出してしまうものです。
たとえ過去に何か問題があって関係がギクシャクしていても、感情をフラットにして相談するのがわだかまりを生まないコツです。

遺産が公平に分けられない


遺産が現金であれば簡単に分けられますが、遺産の中に不動産があるときは公平に分けるのが困難です。

とくに公平な分配が難しくなるのは、兄弟姉妹にとっての不動産価値が違う場合です。
兄弟姉妹のうち、誰か一人が故人のマイホームに同居していると大変です。

たとえば、家を含めた遺産総額が1億円で、そのうち現金が2,000万円だったことを考えてみましょう。
兄弟2人で等分すると5,000万円ずつですが、現金は2,000万円しかありません。
不動産を売らなければ公平な分配ができないため、面倒事やゴタゴタに発展しやすくなります。

兄弟ではない人が関与する


第三者が関与して口出しをすると話がスムーズに進まなくなります。
兄弟の妻、姉妹の夫は相続人ではありません。相続人を曖昧にすることが面倒事を引き起こします。

想定していなかった相続人が現れた


隠し子がいた場合や、離婚した前妻との間に子がいた場合です。
隠し子や前妻との子も、相続の対象になります。
疎遠になっている相手が突然現れることが面倒事の火種となるでしょう。

突然、相続人が現れるのは、小説や映画ではよく見かけるシナリオですね。
そういった出来事は創作だけで、現実にはあり得ないと思っているかもしれません。
しかし、それは現実でも起きる可能性があります。絵空事だと感じるようなシチュエーションでも、想定だけはしておいたほうがいいでしょう。

兄弟の相続争いを回避する方法


本来であれば兄弟姉妹で喧嘩するのは避けたいものですよね。ここからは兄弟姉妹での相続争いを回避する方法を紹介します。

生命保険に加入しておく


故人が生命保険に入っていると、自宅やマンションを売却せずに資金を用意できます。
こちらの方法は生前のうちに準備が必要ですが、まとまった現金を作れるので効果の高い方法です。

遺言書を作成しておく 事前に準備しておくことで面倒事になるのを避けられます。相続の対象者を明確にしておきましょう。

とくに、子のいない夫婦であれば遺言書の重要性が増します。
子のいない夫婦の場合、夫が死亡したときに夫の兄弟姉妹と話し合う必要があります。
話し合いは妻の負担となるため、早い段階で作成しておくのがいいでしょう。

遺言書を作成できる年齢は満15歳からです。
通常は、誰の同意も得ずに自分だけで作成できます。
しかし、高齢で認知症になっていると事理弁識能力がないと判断され、遺言が無効になる可能性もあります。法的に効力のある方式で書くのが大切です。

遺産を多く相続した人が代償金を払う


遺産を多く受け取った人が、少なく受け取った相続人に代償金を支払うことを代償分割と呼びます。
代償分割での相続が有効なのは、遺産の大半を不動産が占めているときです。

先ほどの例と同じように、土地やマイホームを含めた遺産総額が1億円で、そのうち現金が2,000万円だったことを考えてみましょう。
兄が自宅を相続し、弟が現金2,000万円を相続した場合、弟への遺産が3,000万円不足しています。
このときに兄が代償金として弟に3,000万円を渡します。

このように、代償金で公平性を保つことが相続争いを避けるコツです。

遺留分の遺産を放棄する


遺留分とは、相続人が相続する最低限の割合のことです。
特定の人物に遺産を100%相続すると遺言書に書かれていても、相続人には最低限の遺産を受け取る権利があります。
その権利を放棄すると話し合いのゴタゴタを避けられます。

相続分を譲渡してしまう


相続分の譲渡とは、自分の相続分を他人に譲ることです。
譲る相手は親族に限らず、第三者でも構いません。相続分を譲渡すると遺産分割協議に参加する必要がなくなり、遺産相続の話し合いから解放されます。

事前に準備して争族になるのを避けよう


以上が、兄弟姉妹で相続争いをしないためのコツと遺産の分割方法でした。

仲の良い兄弟姉妹であっても、話し合いが疎かになっていたり、遺産分割のルールを理解していなかったりするとトラブルに発展してしまいます。
無駄な相続争いをしないためにも、生前から生命保険などをしっかり準備し、遺産について兄弟姉妹で話しておきましょう。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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