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■お役立ちコラム特集

2021/06/24

代償分割とは?分割払いするときの遺産分割協議の書き方例

遺産の大半が土地や自宅であると、公平に遺産分割するのが難しくなります。
そのときに使えるのが代償分割です。代償分割をすることでスムーズに相続を進められるでしょう。

ここでは、代償分割の基本から注意点、遺産分割協議の書き方例を紹介します。

代償分割とは?


代償分割とは、相続人の一人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に代償金を支払う方法です。

利用するタイミングは、不動産などの遺産をスムーズに分配したいときです。
定期預金や生命保険など、現金の遺産であれば簡単に分配できますが、土地、自宅、マンションといった現物の場合は分けられません。
しかし、自宅などを売却して現金化するには時間もかかりますし、資産価値が落ちてしまうこともあります。そんなときに使えるのが代償分割です。

代償分割は遺産分割の1つ


そもそも遺産分割には4つの方法があります。

1つ目は現物分割です。これは複数の土地や現金があるときに使える方法です。
遺産の内容が、マイホームとその土地、郊外の土地、預金というように3つあったとしましょう。長男と長女の2人が受け取り人です。

長女は自宅と同じ市内の賃貸アパートに住んでおり、自宅を手にしたあとは引っ越して居住することを考えています。
長男はサラリーマンを40代で早期リタイアしており、郊外に飲食店を開業しようと考えています。
このとき、長女がマイホームとその土地を、長男が郊外の土地と預金を相続するのが現物分割です。現金に交換せず、そのままの状態で現物を譲り受けるのが特徴です。

2つ目は換価分割です。遺産のすべてを売却して現金化し、対象者でお金を分配します。

3つ目は代償分割です。価値の高い不動産を受け取った側が、価値の低い不動産を受け取った側に現金を補填する方法です。

4つ目は共有分割です。
不動産などを共有する方法です。共有の境目が難しいため、後々トラブルに発展しやすい分割方法です。

代償分割を利用するシチュエーション


どのようなときに利用するのか適正でしょうか。利用時のシチュエーションを紹介します。

遺産内容が6,000万円相当の土地と預金2,000万円、残されたのが長男と次男の2人だった場合です。兄は歯科医師として成功しており4,000万円の預金を持っています。
弟はかけだしの大工として働き始めたばかりで、預金を持っていません。

このとき、兄が土地を、弟が預金2,000万円を相続します。
遺産総額は8,000万円なので、弟の受け取りが2,000万円不足しています。そこで兄が自らの預金から2,000万円を引き出し、現金として弟に渡します。

この例のように、相続人の1人が現金を用意できるシチュエーションで代償分割が使われます。

代償分割のメリット


ここからは3つのメリットを紹介します。

形のある財産を残せる


代償分割のメリットの1つ目は、遺産を財産として残せることです。
遺産をすべて売却する換価分割の場合、形あるものは何も残りません。代償分割であれば、土地やマンションなど、形のある財産を残せます。

公平を保って遺産を分割できる


相続人のうちの1人が、遺産対象の自宅に同居していた場合、自宅を売却して現金化するのは面倒です。
できれば自宅をそのまま維持したいと考えるでしょう。

複数いる相続人のうちの1人が、同居していたマイホームを相続したとき、それに見合う預金がなければ別の相続人から不満が出ます。
そのときに代償分割すると、公平を保ったまま遺産を分けられます。

相続税の負担を減らせる


相続税を軽減できるのも代償分割のメリットの1つです。
故人と同居していた人が自宅を相続すると支払いの負担を減らせます。

具体的には、宅地の評価が最大80%減額される特例があります。
宅地4,500万円であれば、900万円の価値として相続できます。特例を受ければ大きく節税できます。

また、農地を相続して農業をするときは納税猶予が受けられます。

代償分割のデメリット


続いてはデメリットを紹介します。税金発生のリスクもありますので注意してください。

税金の支払いが発生する場合がある


代償分割で注意したいのは、代償金が多すぎると贈与税の対象となることです。

たとえば、姉と妹が相続する場合です。
遺産が3,000万円の宅地だけで預金がなかったとします。姉のほうが宅地を譲り受け、代償金の1,500万円を妹に支払えば問題はありません。

しかし、この例では、姉と妹のどちらも宅地を欲しがっていて取り合いになっていました。
姉妹は話し合いをして、宅地を相続した側が代償金を2,000万円払うことで合意します。
この分配は、2人の認識では公平ですが、遺産総額で考えると500万円を余分に渡しているため贈与とみなされます。500万円が課税対象となってしまいます。

遺産評価の違いによるトラブル


トラブルのもとになるのが不動産の評価額で意見が割れることです。
不動産には実勢価格、鑑定評価額、相続税評価額のように、複数の評価方法があります。
相続するなら相続税評価額を参考にすればいいと考えがちですが、こちらは税金を計算するための基準です。
売却するときの価値としては妥当ではありません。

また、代償金を受け取る側は不動産の価値を上げて代償金を増額したいと考えますし、支払う側は代償金を減らしたいと考えます。
不動産の評価方法が複数あることで意見が食い違い、それがトラブルに繋がります。

資力が必要になる


相続人の誰かが現金を持っていなければ代償分割ができません。
一定の資力がなければいけないというのがデメリットです。

代償分割で遺産分割をしたときの相続税


代償分割の代償金も相続税の課税対象です。
メリットの項で紹介した特例を適用しなければ、代償分割してもトータルの相続税は変わりません。変わるのは、支払った側と受け取る側の税金の負担率です。

支払った側は、相続した遺産額から代償金を差し引いたものが課税対象です。受け取った側は、相続した遺産額に代償金を足したものが課税対象です。

代償分割するときの遺産分割協議書の書き方


代償分割する場合であっても、遺産分割協議書の書き方に変更はありません。
相続人が話し合いをして分配が決まったあと、通常の方法で書類を作成します。
遺産分割協議書には固定フォーマットはありませんので、手書きやパソコンで必要事項を書いて作成します。

タイトルは遺産分割協議書とします。その次に、誰の遺産を、誰が相続するのかを示します。
このとき被相続人の死亡日や住所のほか、相続人全員のフルネームと、分割を協議したことを記載します。

次に財産の分配について記載します。相続人ごとに項目を分けましょう。
山田太郎さんと山田次郎さんが相続人なら、相続人山田太郎が取得する財産という項目を設け、土地や建物、預貯金、株式などの項目ごとに相続内容を記載します。

全員分の記載が終わったら、「上記、遺産分割の協議が成立し、本協議書を作成する」としたあと、相続人がそれぞれ署名、捺印、住所を記入します。
作成した書類は各自が1通ずつ協議書を保有します。協議をした年月日を忘れずに書いておきましょう。最後に書き方の例を紹介します。




特性を理解してトラブルを避けよう


以上が、代償分割の基礎知識と遺産分割協議の書き方でした。
代償分割は特例により税金の負担を減らせるメリットがありますが、遺産評価の食い違いによるトラブルの原因にもなります。
注意点を理解した上で、代償分割を上手く活用してください。



はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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