■お役立ちコラム特集
2021/06/24
親の借金は子供に返済義務はない!相続放棄・限定承認をする方法
基本的に返済義務はありませんが、親の借金を肩代わりするシチュエーションも実際に存在するのです。
この記事では、返済義務についての詳しい情報や、肩代わりを回避する方法を紹介します。
親に借金があっても、子どもに返済義務はなし
基本的に両親がした借金を子どもが返す義務はありません。
借金というのは契約の一種です。契約した当人同士の問題であり、子どもは関係ないわけです。
もちろん、借金の理由や経緯についても返済義務とは関係ありません。
居酒屋で喧嘩して示談金のために借金していたり、複数のカードローンを自転車操業のように使いまわしていたり、お酒とギャンブルにお金をつぎ込んでいても返済の必要はありません。
親の行動に問題点があれば、親族である子どもに請求が来そうなものですが、その心配は不要です。
自主的に肩代わりすることはできる
支払う義務はありませんが、自分から返済することはできます。
債権者と話し合いをして、直接的な返済も可能ですし、両親に現金を渡して間接的にサポートすることも可能です。
両親に現金を渡すときは注意が必要です。現金を別の娯楽に使ってしまう場合があるからです。
まとまったお金が入ったことで、旅行に出かけたり、ブランド品を購入したり、気持ちが大きくなってしまうことがあるのです。
ギャンブル依存であれば、回復プログラムに参加させるのもいいでしょう。
集団療法や認知行動療法により、ギャンブル依存の治癒が受けられます。
債権者からの取り立ては受けなくていい
借金はお金を貸した人と、お金を借りた人の契約です。契約外の人への取り立てはできません。
貸金業を営むためには、財務局長や都道府県知事に対して営業登録する必要があります。
登録すると登録番号が発行され、貸金業法に沿って営業することになります。
貸金業者の契約者以外への取り立ては、貸金業法に反するため違法となります。
それでも、子どもには親を扶養する義務があるため、返済しなければいけないのではないかと不安になるかもしれません。
こちらも問題ありません。
扶養義務とは、子どもが自分の生活に余裕があるときに限り、親を援助する義務のことです。
親から生活に困っている旨を伝えられたとき、自分の生活に余裕があればサポートしなければなりません。
しかし、第三者である債権者からは、借金の支払いを強要できません。親から返済を求められたときも断れます。
法律的な肩代わりの種類
法律的には、肩代わりするときの立場が2つあります。2つの違いを紹介します。
免責的債務引受
免責的債務引受とは、両親の借金を子どもだけが背負うことです。
親の返済義務は消失する代わりに、同額の借金を子どもが引き受ける立場となります。このときの子どもの立場を引受人と呼びます。
子どもが引受人になるためには、債権者からの同意が必要です。
債権者は、子どもの支払い能力の有無を見極めて契約を交わします。子どもが信用を得られなければ、免責的債務引受は成立しません。
併存的債務引受
併存的債務引受とは、両親と子どもの両方が借金を背負うことです。
両親の返済義務は継続したまま、子どもも債務を負担するようになります。
このことを連帯債務と呼びます。連帯責任のような関係をイメージするとわかりやすいでしょう。
連帯債務では、親と子の両方が同額の責任を負います。
たとえば、借金が700万円あったとしましょう。親が350万円、子が350万円というように分割されるのではなく、それぞれが700万円の責任を負います。
片方が700万円を全額返済してしまえば、もう片方の返済義務は消失します。
子どもに返済義務が生じる3つのパターン
上記では、基本的に返済義務がないと説明しました。
では、返済義務が生じるのはどんな場合でしょうか。3つのパターンを紹介します。
子どもが親の借金の保証人になっている
1つ目は、子どもが借金の保証人や連帯保証人になっているときです。
保証人や連帯保証人になっていると、親が返済できない状況に陥ったタイミングで返済義務が発生します。
また、保証人と連帯保証人では責任の度合いが違います。
保証人は、催告の抗弁権を持ちます。
催告の抗弁権とは、債権者に対し「先に親へと請求して欲しい」と伝える権利のことです。連帯保証人は抗弁権を持ちません。
債権者が親への請求をせず、直接子どもに請求してきても抗弁ができません。
続いて、検索の抗弁権の有無です。
保証人は検索の抗弁権を持ちますが、連帯保証人は検索の抗弁権を持ちません。
検索の抗弁権とは、親に返済能力があることを証明し、親への請求を先にするように主張する権利です。
最後に分別の利益の有無です。
保証人は分別の利益がありますが、連帯保証人にはありません。
分別の利益とは、保証人が複数いるとき、人数で借金を等分し、等分した金額だけを返済すればいいという権利です。
子どもの名義で親が借金している
2つ目は、子どもが名義を貸していたり、親が子どもの実印を使って契約した場合です。
この場合の問題点は、子どもが認知していなくても代理契約と見なされる場合があることです。
本来、実印を誰かに預けることはありません。
そのため、親が勝手に実印を押したとしても、子どもの実印が押されている事実を見て、契約が成立してしまいます。
ただし、親の知らない場所に保管していたはずの実印を、勝手に盗まれて使われた場合の返済義務はありません。
法律では無権代理という扱いになります。
無権代理では、本人が追認しなければ効力を生じません。よって、支払いを拒否できます。
借金の完済前に親が死亡した
3つ目は、借金を返す前に両親が死亡してしまった場合です。
親の遺産を相続するとき、プラスの遺産とマイナスの遺産の両方を受け取ります。
不動産や預金だけでなく、借金も引き受けることになるわけです。
引き受ける借金の金額は、法定相続分によって決まります。
法定相続分とは、財産の相続割合を定めたルールです。故人の配偶者と子どもがいるなら、それぞれ50%の遺産を相続します。
子どもが複数いるときは人数で等分します。故人の配偶者がおらず、子どもだけが相続する場合は100%の割合になります。
注意したいのは、自分が遺産を受け取らなかった場合でも借金を相続してしまう点です。
遺産分割協議によって遺産を受け取らなかったり、遺言に沿って自分が受け取る遺産の量が少なかったとしても、借金を取り立てる側には関係ありません。
借金には住宅ローンも含まれますが、親が団信(団体信用生命保険)に加入してれいば支払いはなくなります。
親が死亡した時点でローンが帳消しになります。
借金の支払いを回避するための方法
借金の支払いを回避するには、相続放棄と限定承認の2つの方法があります。
ここからは2つの手続き方法を紹介します。
相続放棄の手続きをする
相続放棄とは、相続のすべての権利を放棄することです。
マイホームや宅地、預金を足し合わせても借金の支払いに足りない場合は、放棄を検討しましょう。
手続きをするには、親の死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申告します。
親の住所を管轄する家庭裁判所に必要書類を出しましょう。相続放棄するときは自ら手続きをするのが重要です。
たとえば、父が亡くなった場合を考えてみましょう。
父がなくなったとき、母と自分と妹の3人で話し合いをするとします。このとき以下のように宣言しました。
「遺産のことはよくわからないし、欲しいとも思わない。不動産を分けたり、借金のことを考えるのも面倒。自分は一切いらないよ」
3人の中ではそのことに納得していますが、これでは相続を放棄したことにはなりません。
家族間で決めるだけではなく、必ず家庭裁判所で手続きをしましょう。
限定承認の手続きをする
借金を回避する2つ目の方法が限定承認です。
限定承認は、プラスの財産の量と同じだけの借金を相続することです。
たとえば、1,400万円の借金があり、700万円の土地があったとします。
このとき、土地を受け取り、700万円の借金を背負います。その土地をどうしても手放したくないときに有効な方法です。
こちらも、親の死亡を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所で手続きをします。
まとめ
以上が、親が残した借金に対しての支払い義務と、支払いを回避する方法でした。
家族間の話し合いだけでなく、家庭裁判所などで手続きをすることがトラブルを巻き起こさないためのコツです。
また、借金の保証人や連帯保証になるときは、2つの違いを明確に把握しておきましょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
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子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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