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■お役立ちコラム特集

2021/06/25

相続税の障害者控除とは?受けられる条件と控除額の計算方法

相続税には様々な控除制度がありますが、その中に「障害者控除」があります。
この記事では、障害者控除制度の概要や、控除額の計算方法などをご紹介します。

相続税の障害者控除とは?


障害者控除は、相続税について認められている「税額控除」の一つです。
計算された相続税額から、障害者控除額分だけ、納付する税額が減額されます。

障害者控除制度は、障害者が健常者に比べて療養費や医療費の負担が大きいことから、両親など被相続人が亡くなった後の障害者の生活を保障するために設けられている制度です。
そのため、障害者控除制度は、亡くなった被相続人ではなく、遺産を相続する相続人が障害者であるかどうかがポイントになります。

相続税の障害者控除を受けられる人の要件


この項目では、障害者控除を受けるために満たしている必要のある4つの条件について解説します。

法定相続人であること


障害者控除は、相続人が法定相続人である場合にのみ、適用されます。
法定相続人とは、民法で相続人であると決められている人のことです。
具体的には、亡くなった被相続人からみたときに、配偶者・子・両親などがこれにあたります。
遺言書に、故人の友人や知人など法定相続人でない人に遺産を贈与するという記載があった場合、その友人や知人には障害者控除は適用されません。

日本国内に住所があること


障害者控除を受けるためには、遺産を相続する時点で、相続人が日本国内に住所を持っている必要があります。

ただし、次の2つの条件を両方満たしている場合には、障害者控除の適用対象となります。

第一に、相続人が日本国籍を持っていること。
第二に、故人・相続人のいずれかが、相続開始時点(故人が亡くなった時点)より5年以内に日本国内に住所があったこと。

障害者であること


障害者控除を受けるためには、相続人が税法上の障害者である必要があります。
税法上の障害者と認められるためには、障害年金の受給者資格や障害者手帳の有無とは無関係に、税務当局の独自に定めた基準に当てはまる必要があります。

税務上の障害者には、知的障害・精神障害・身体障害・介護を必要とする者などのカテゴリーがあり、それぞれに障害の重さに応じて一般障害者と特別障害者があります。
一般障害者と認められると一定の税額控除が受けられます。特別障害者と認められると、税額控除額が大きくなります。

詳細については、この記事の後半で解説していきます。

障害者である相続人が相続または遺贈により財産を取得すること


当然といえば当然の規定ですが、次のようなケースでは、重要な意味を持ってくる条件になります。

亡くなったAさんに2人の子供がおり、妹は税法上の障害者に当たり、姉が同居して障害者である妹の世話をしているとします。
税法上の障害者の家計管理をしているのが、同居して世話をしている障害者の姉であることから、障害者には遺産を相続させないで、その姉に妹の分を追加して相続したとします。

この場合、障害者本人は相続によって財産を受け取っていないので、障害者控除を適用することはできなくなってしまいます。
ところが、障害者本人が仮に1万円でも相続したとすると、障害者控除が適用されます。
しかも、障害者本人への税額控除で、税額控除額を使い切らなかった場合には、他の相続人の相続税(この場合は姉の相続税)から税額控除をすることができるのです。

障害者控除を受けられる障害者の区分

                    


ここでは、相続税の障害者控除を受けられる税法上の障害者の認定基準を、一般的な税額控除が受けられる「一般障害者」と、より大きい税額控除が受けられる「特別障害者」に分けて解説します。

税法上の障害者と認められるのは、大まかには知的障害者・精神障害者・身体障害者・要介護認定者の4種類の方になります。
これら4種類のカテゴリーごとに、一般障害者・特別障害者と認められる基準が設定されています。

なお、以下に解説する方以外にも、恩給受給者や原爆被爆者の方などが税法上の障害者として認められる場合があります。
詳しくは、相続に詳しい税理士などに相談されることをお勧めします。

一般障害者


知的障害者については、「児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により、知的障害者とされた者」で、重度の知的障害とは判定されなかった人が、一般障害者と認定されます。

精神障害者については、精神障害者手帳2級又は3級と認定されている人が、一般障害者と認定されます。

身体障害者については、身体障害者手帳3級から6級と認定されている人が、一般障害者と認定されます。

要介護認定者については、市町村役場や区役所に、日常生活自立度が「A」程度と認定された人が、一般障害者と認定されます。
日常生活自立度「A」の目安は、「屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない」程度です。

特別障害者


知的障害者については、「児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により、知的障害者とされた者」で、重度の知的障害と判定された人が、特別障害者と認定されます。

精神障害者については、精神障害者手帳1級と認定されている人が、特別障害者と認定されます。

身体障害者については、身体障害者手帳1級又は2級と認定されている人が、特別障害者と認定されます。

要介護認定者については、市町村役場や区役所に、日常生活自立度が「B」又は「C」と認定された人が、特別障害者と認定されます。
日常生活自立度「B」の目安は、「屋内での生活には介助を要し、日中もベッド上での生活が主体だが、座位は保っている」程度、「C」の目安は、「一日中ベッドで過ごし、排泄・食事・着替えに介助を要する」程度です。

障害者控除額の計算方法とその特徴


この項目では、具体的な障害者控除額の計算方法を解説します。
基本的には、「85歳-相続人が相続を開始した年齢」という計算をして得られた数字が基になって計算されます。

ここでは、一般障害者の65歳のAさん、特別障害者の40歳のBさんが相続人になった場合を例にあげて、話を進めていきましょう。

控除額の計算方法


一般障害者の場合、障害者控除額は、「(85歳-相続人が相続を開始した年齢)×10万円」の計算式で計算されます。
65歳のAさん(一般障害者)の場合、以下の通りに控除額が計算されます。

(85-65)×10万円= 20×10万円 = 200万円

特別障害者の場合、障害者控除額は、「(85歳-相続人が相続を開始した年齢)×20万円」の計算式で計算されます。
40歳のBさん(特別障害者)の場合、以下の通りに控除額が計算されます。

(85-40)×20万円=45×20万円 =900万円

控除額の特徴


障害者控除の特徴は、障害者自身の相続税で税額控除枠を使い切らなかった場合には、その障害者の扶養義務者の相続税に対しても税額控除ができるということです。
ここで「扶養義務者」とは、障害者本人の配偶者・祖父母・父母・兄弟姉妹・子・孫までを指します。

ここで、先ほどの例で出てきたAさん(一般障害者)の扶養義務者には、障害者ではない弟Cさんがいたとします。
Aさんの税額控除額は200万円でした。Aさんに課税された相続税額は100万円でした。
すると、Aさんは、相続税を払わなくて済むことになり、かつ、Aさんの障害者控除の枠が100万円余ります。
このとき、Aさんの扶養義務者であるCさんの相続税が、100万円減税されることになるのです。
Cさんに課税された相続税額が150万円だとすると、Cさんが実際に払う相続税は50万円になります。

まとめ


この記事では、障害者控除のあらましについて解説をしました。
この記事では説明をし切れていない部分もありますし、他の控除制度などもありますので、相続が発生したときは、相続に強い税理士などの専門家に相談することも検討することをお勧めします。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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