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2021/06/25
相続税が払えない…状況別の対処法や相続放棄をする注意点を解説
しかし、相続税は原則として相続開始から(つまり、故人が亡くなってから)10カ月以内に現金で全額一括納付をしなければなりません。
相続税が賦課される人は、遺産を相続してはいますが、それでも納付期限までに現金でまとまった額の相続税を支払うことが難しいケースは多いです。
この記事では、相続税が支払えなくなるのはどんな場合か、その際どう対処したらいいかについて、解説します。
相続税が払えない2つのパターン
遺産を相続したのに、現実には相続税を支払えないパターンには、大きく2つあります。
ここでは、相続税が支払えない2つのパターンについて解説します。
①相続税を支払うだけの現金が用意できない
実際に相続した遺産の中で土地、建物や動産などの現物資産が多く、現預金の占める割合が小さい時には、相続税の支払いが難しくなることになります。
相続税は、現物資産の価値を金銭で評価したうえで、現預金と合わせて遺産の総額を確定し、これに決められた割合を掛けて相続税額をはじき出します。
しかし、当然不動産や動産といった現物資産は、簡単に現金化できるとは限りません。
そのため、手持ちの現預金が足りず、相続税の支払いが難しくなることがあります。
②遺産の分割が決まらず、預金が凍結されたままである
ある方が亡くなると、その方名義の預金口座は凍結され、たとえ家族であっても引き出せなくなってしまいます。
凍結を解除するには、故人が遺言書を残していた場合には裁判所での検認手続が、遺言書が残っていなかった場合には遺産分割協議の成立が必要であり、それまでは預金口座の中の預金が引き出せません。
そのため、相続税の支払いが難しくなることがあります。
相続税を支払うだけの現金が用意できない時の対処法
相続税を支払うのに十分な現金を用意できない場合は、どうすればいいのでしょうか。3つの方法をご紹介します。
①税金の支払いを延期する手続きをする
一つ目は、相続税の分割払いを認めてもらうこと、延納手続をとる方法があります。
延納が認められると、最大20年間にわたって相続税の分割払いをすることができます。
延納を申請するには、決められた期日までに税務署へ「延納申請書」を提出する必要があります。
注意したいことは、延納を申請したからといって必ず延納が認められるわけではないことです。
また、延納できるのは、税務当局が金銭で納付するのが困難な金額であると認めた額に限定されます。
延納手続のメリットは、なんといっても今すぐに相続税分の現金を用意しなくても良いことです。
他方で延納手続のデメリットもあります。
延納税額に相当する担保を国に提供しなくてはいけないこと、延納額について利子税を支払わなければいけないこと等です。
②物納により納税を行う
二つ目には、物納により相続税を納付する方法があります。
相続した財産そのものを直接相続税として納めることができます。
物納を申請するには、決められた期日までに税務署へ「物納申請書」を提出する必要があります。
気を付けたいのは、物納による納付は、延納手続をしても納付が不可能なときに限られるということです。
また、物納をすることができる財産が細かく定められていて、しかも国が換金しやすい種類の財産から順に納付しなければいけない規則になっています。
たとえば、担保権のついている不動産は物納することができませんし、現金化がしやすい上場企業の株式を手元に残しておいて、現金化の難しい非上場企業の株式を物納することはできません。
物納手続のメリットは、現金を用意することなく相続税の納付をすることができることです。
しかし、物納できる要件や、物納の対象にできる財産は細かいルールで限定されています。
また、亡くなった被相続人から相続した財産のみ物納の対象にすることができますが、財産を時価よりも低い価格で評価されてしまうこともあります。
③相続した財産を売却する
三つめには、相続財産を売却して現金化したうえで、納付期限までに相続税を現金で支払う方法があります。
一般的に言えば、相続財産のなかで価値が大きいのは土地や建物といった不動産であることが多いでしょう。
不動産を売却する際には、自分たちで買い手を見つけることができなければ、不動産売買の仲介業者に買い手との仲介を依頼することになります。
これに先立って、法務局で売却したい不動産の相続登記を済ませておく必要があります。
また、その不動産に抵当権がついていたり、不動産が複数人で共有されていたりすると、不動産が相場よりも大幅に低く評価されることになるので、整理をしておいた方が望ましいと言えます。
財産を売却して得た現金で相続税を納めるメリットは、延納や物納よりも有利に相続税の納付を済ませることができることです。
他方で、この方法をとる場合には、相続開始から10カ月以内に売却を済ませなければいけない、という事情があるために、買い手に安く財産を買いたたかれやすいというデメリットもあります。
遺産の分割が決まらず、預金が凍結された時の対処法
故人が亡くなると、亡くなった被相続人名義の口座は凍結されます。
遺産分割協議がまとまることが口座凍結解除の条件ですので、相続人の間で遺産分割協議が難航している場合、現金が不足し相続税の納付が難しくなります。
そんなとき、どうすればよいのでしょうか。
①納税資金分だけ「一部遺産分割協議」をする
一つ目の方法は、納税に必要な現金の分だけ、先行して遺産分割協議を成立させてしまうことです。
(これを一部遺産分割協議といいます。)
たとえば、相続財産が預貯金だけで1億円あり、相続人は3人、各自の納税に1000万円ずつ必要だったとします。
この場合、相続税の納付に必要なのは合わせて3000万円になるので、遺産のうち3000万円分についてだけ遺産分割協議を成立させます。
この際の遺産分割協議書を銀行に提出すれば、銀行は3000万円分だけ口座の預金を払い出してくれます。
この方法を採れば、相続税を遺産の預貯金から工面することができます。
しかし、そもそも遺産分割協議が難航している相続人同士が一部とはいえ遺産分割協議を進めることは難しいこともあるかもしれません。
相続人の一部と連絡がとれていないときは、猶更遺産分割協議を進めることは困難です。
②金融機関に対して「法定相続分の預金の払い出し請求」を行う
事情を銀行に相談して、自分の法定相続分の預金を払い出してもらうように交渉することもできます。
銀行は普通遺産分割協議がまとまるまでは亡くなった被相続人名義の預金凍結には応じません。
しかし、預金等については相続が開始した時点で相続人各自に相続される、とした最高裁判所の判断があります。
そのため、銀行も交渉の結果、場合によっては遺産分割協議終了を待たずに、凍結口座の預金を払いだしてくれることがあります。
もしこの方法を取ることができれば、遺産分割協議が一部でも進まない状況でも、遺産から相続税を支払うことができ、相続人の負担が減ります。
ただ、このような申し出に対する対応は、銀行や支店によって、また状況によってさまざまに異なります。
また、銀行への状況説明には様々な書類を作成する必要もあり、弁護士へ依頼が必要になります。
当 然、その分の弁護士費用も負担しなければいけません。
相続放棄を検討する際の注意点
相続税は遺産を相続しなければ発生しない税金です。
そこで、相続税がどうしても払えない場合には、相続放棄をすることも一つの選択肢です。
相続放棄をする場合、プラスの財産(不動産や現預金など)とマイナスの財産(借金など)の両方を全部相続しないことになります。
どんな時に相続放棄を検討するべきか
相続放棄をする場合には、プラスの財産だけ相続して、マイナスの財産は相続しない、ということはできません。
そこで、故人の遺産を全て調べ上げた上で、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合には、相続放棄を検討すべきと言えます。
また、相続を受ける場合、他の相続人との間で遺産分割協議を進めなければいけません。
様々な理由で、他の相続人との関係を持ちたくない場合には、相続放棄をすることが有効な対応となります。
相続放棄をするときの注意点
相続放棄について、注意しなければならないことが一つあります。
それは、相続があったこと(故人が亡くなったこと)を相続人が知った時から3カ月以内に、家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して相続放棄の申立てをしなければいけないことです。
この期限を過ぎた後に相続放棄をしようとする場合、弁護士に相談して、手続を進めてもらう必要が出てきます。
相続税を支払えない事態にならないために
相続税を納付期限内に現金で一括納付するのは相当高いハードルがいくつもあることが分かります。
このような難しい状況に追い込まれないためには、生前から相続税対策を十分に行っておくことが大切です。
相続税については、ここに紹介した以上の複雑な規則があります。
少しでも有利な相続税対策を落ち着いて行うために、相続案件に強い税理士などの専門家に、相談しておくことが大事だといえるでしょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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