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■お役立ちコラム特集

2021/06/25

相続税の納税猶予制度とは?猶予期間や手続きの流れを解説

財産を相続する際には、遺産総額に合わせて相続税を納めなくてはなりません。
しかし、特定の財産を相続した場合に限り猶予制度が設けられていることをご存じでしょうか。
猶予制度を活用することで、最終的には大きな節税も期待できるため大変魅力的です。
本記事では、相続税の納税猶予制度の概要や種類、適用条件や手続きの流れ等を詳しくご紹介します。

相続税の納税猶予制度とは?


相続税には、特定の対象財産を相続した場合納税を猶予してもらえる制度が用意されています。
制度の対象となる代表的な財産が「農地」ですが、そのほかにも様々な目的で納税猶予を設けている財産がいくつかあるため、遺産相続においては事前に理解しておくことが大切です。

あくまでも「猶予」する仕組みなのですが、基本的には条件を守り続けることで最終的に納税義務を免除してもらえるようになることが、この制度の魅力的な点だと言えます。
猶予・免除される金額が億単位になることも珍しくなく、制度を活用するメリットは非常に大きいでしょう。

相続税の納税猶予制度の種類


相続税の納税猶予制度が用意されている財産分野は、農地だけに限りません。
ここでは、主な納税猶予制度の種類を紹介します。それぞれの制度の目的や概要を紹介していきますが、個別の事例では状況が異なる可能性があるため、あくまでも一般的な話としてご認識ください。

農地等の相続税の納税猶予の特例


相続税の納税猶予制度として最も一般的なのが、農地に対するものです。
納税猶予が適用される案件の大半が、農地だと言われています。

これは相続税課税によって農地が細分化してしまうことの防止や、農業の後継者確保を税制面からサポートするために設けられました。
基本的には農業を行っていた被相続人から条件を満たした相続人が農地を相続・遺贈によって取得し、農業を行う場合に適用されます。

基本的には相続人が亡くなるまで猶予され、亡くなった段階で免除となります。
しかし特例農地の20%以上を譲渡、もしくは農業経営の廃止等が起きた場合は猶予が取り消され、2ヶ月以内に猶予額の全額納付と利子税の納付が求められるため注意が必要です。

非上場株式等の相続税の納税猶予の特例


非上場株式等の相続税納税猶予は、中小企業の事業承継の円滑化やそれによる雇用確保、さらには地域経済活力の維持を目的として平成21年に増設されました。
都道府県知事の認定を受けた非上場企業の後継者(相続人)が、被相続人から非上場企業の株式を相続・遺贈によって取得し、その会社を経営していく場合に適用されます。

適用になると、納付義務がある相続税の中で「非上場株式等に係る課税価格」に対応する部分の納税が猶予されます。
そして相続人が死亡した時に税額の全部または一部が免除されますが、株式を譲渡したケース等では猶予が取り消されてしまい、2ヶ月以内の猶予の全額納付、利子税の納付が求められるため注意しましょう。

特定山林を相続した場合の納税猶予の特例


日本の森林・林業を再生させることを税制面でサポートする目的で、平成24年度の税制改正で増設されました。
森林法に基づく認定を受けた森林経営計画に従って山林経営を行ってきた被相続人の所有山林の全てを、後継者(被相続人)の1人が相続・遺贈により取得した場合に適用されます。

相続後もそのまま計画に従って山林経営を行うのであれば、一定の要件をクリアすることで後継者が納付義務を負う金額の中で山林の価額の80%分が猶予される仕組みです。
そして林業を行う相続人が亡くなった段階で、納税が免除されます。

該当するケースがあまり多くない制度ですが、該当する可能性がある方はしっかりと押さえておくべきでしょう。

医療継続に係る納税猶予の特例


地域医療の確保を目的とし、経過措置医療法人から新医療法人への移行促進をサポートするため、平成26年に増設されました。

この制度は、経過措置医療法人の出資者が被相続人となったケースが該当します。
最長3年の期限内に新医療法人への移行を目指す医療法人について、移行期間に限り相続税の納税を猶予され、無事移行が完了した段階で免除される制度です。

まだ設立から間もない制度であり、今後活用されるケースが増えていくことも想定されます。

農地等に対する相続税の納税猶予の手続きについて


相続税の納税猶予手続きが最も活用されている対象財産が、農地です。
ここでは、農地等に対する相続税納税猶予についてより詳しく紹介します。免除の条件や手続きの流れ等を紹介しますので押さえておきましょう。

免除の条件


農地等に対する相続税納税が猶予されるのは、以下のいずれかの条件を満たした日からです。

・ 農業相続人が死亡したケース
・ 申告期限から20年間農業を継続したケース
・ 農地の全部を後継者に一括生前贈与し、贈与税に対して納税猶予の特例を受けるケース

また上記の条件に加えて、相続人と被相続人も一定の条件をクリアしている必要があります。
まず、相続人は以下のいずれかに該当しなければなりません。

・ 相続税の申告期限までに農業経営をスタートさせ、その後も農業経営を行うと判断できる人
・ 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、特例付加年金・経営移譲年金いずれかの支給を受けるため推定相続人の1人に対し農地について使用貸借による権利を設定、農業経営を移譲して税務署長に届出をした人
・ 農地等の生前一括贈与の特例の適用を受けた受贈者で、営農困難時貸付けをして税務署長に届出をした人
・ 相続税の申告期限までに特定貸付け等をした人

そして被相続人は、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

・ 死亡日まで農業を行っていた人
・ 農地等の生前一括贈与をした人(死亡日まで受贈者が贈与税の納税猶予か納期限の延長の特例の適用を受けていたケースのみ)
・ 死亡日まで相続税の納税猶予を受けていた農業相続人か農地等の生前一括贈与の適用を受けていた受贈者で、障害や疾病等の事由で農業を続けることが難しくなったため賃借権等の設定による貸付けをし、税務署長に届出した人
・ 死亡日まで特定貸付け等をしていた人

必要書類


申請には、原則として以下の書類が必要です。

・ 担保提供に関係する書類
・ 遺産分割協議書、遺言書の写し等財産の取得状況を証明できる書類
・ 特例適用農地の明細書
・ 抵当権設定登記申請書
・ 相続税の納税猶予に関する適格者証明書

上記はあくまでも基本的な書類であり、実際には条件によって必要になるものが異なります。
例えば、申告期限までに特定貸付けを行っていたらその旨の届出書を添付する等、ケースによって必要書類が追加・変化するのです。

流れ


申請の流れは、おおむね以下の通りです。

1. 農業委員会に適格者正書と特例適用農地明細書の発行を申請
2. 税務署へ必要書類を提出
3. 通知を受ける

特例を受ける場合、相続開始を知った日から10ヶ月以内に税務署に必要書類を提出しなければなりません。
税理士等に相談し、早めの行動をとっておいた方が良いでしょう。

納税猶予取り消しには注意


納税猶予を活用する際には、取り消しを受けないように計画的に行動することがとても大切です。
納税猶予制度の最大の魅力は最終的に免除されることであり、逆に条件に該当しなくなると猶予されていた金額に加えて利子税も負担しなければならなくなります。

免除されるどころか最終的に負担が増えてしまっては元も子もありませんので、税理士等と相談しながら計画的に手続き・その後の経済活動を続けましょう。

相続税の納税猶予制度を活用しましょう


遺産を相続した場合には総額に応じて相続税を納めなくてはなりませんが、特定の財産を相続した場合に限り納税猶予制度が用意されています。
農地等を中心とした猶予制度は条件を守り続けることで最終的に免除となるように作られており、億単位の節税になることも珍しくありません。
相続税の納税猶予制度を活用して、経済活動を有利に展開していきましょう。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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