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2021/06/25
暦年贈与とは?やり方を間違えて相続対策が無効にならないための注意点
200万円までであれば税率は10%ですが、3,000万円を超えると55%もの税率になるのです。
しかし、この贈与税を節税することができる方法があります。
それが暦年贈与と呼ばれているものであり、暦年贈与を活用すると、年間110万円までの贈与は非課税となるのです。
本記事では、暦年贈与の詳しい内容、相続対策が無効にならないための注意点を解説します。
暦年贈与とは
暦年贈与の特徴は以下の通りです。
・毎年110万円までは贈与税がかからない
・贈与税の大きな節税効果が期待できる
・家族や親族以外に第三者へも贈与できる
通常であれば、人から人へ財産を贈与すると税金がかかります。
しかし、暦年贈与であれば、毎年110万円までは贈与税がかからない仕組みです。
つまり、1月1日~12月31日の期間中に移転した金額が110万円以下であれば、財産をあげても税金がかかりません。
長期間に渡って暦年贈与をすると、大きな節税効果が期待できるでしょう。
また親族以外の第三者の人にも贈与が可能です。
ただし、暦年贈与のやり方を間違えてしまうと贈与税がかかってしまうことがあるため、注意が必要となります。
定期贈与とは
定期贈与の特徴は以下の通りです。
・定期の給付を目的とする贈与
・一定期間、一定の給付を目的に行う
定期贈与とは、一定期間、一定の給付を目的に行う贈与で、定期の給付を目的としています。
たとえば、1,000万円の贈与をするという契約書を作るとしましょう。
通常、一括ではなく分割での贈与となるので、この契約書に従って毎年100万円ごと贈与することになります。
分割で毎年100万円ずつ贈与をしても1,000万円の契約が先にあるため、1,000万円に対して贈与税がかかるのです。
暦年贈与の注意点
暦年贈与をする際の注意点は、定期的な贈与とみられないように注意を配ることです。
贈与税には基礎控除があるため、年間110万円までであれば無税で贈与できますが、定期贈与にあたるとみなされた場合、贈与税の対象になります。
長期間かけて贈与を行っても、定期贈与とみなされてしまうと、一括で贈与税を納めることになってしまうのです。
定期贈与とみなされないためには、以下の5つの予防策を講じましょう。
・毎年、同じ時期に同じ金額を贈与しない
・贈与契約書を作成しておく
・口座の管理
・相続開始前3年以内の贈与に注意する
・贈与税の申告を行う
毎年、同じ時期に同じ金額を贈与しない
毎年同じ金額を贈与し続けると定期贈与とみなされる場合があるため、贈与を行う金額と時期を毎年変えておくことも重要です。
例えば、5年間に渡り毎年同じ時期に50万円を贈与していると、500万円の定期贈与をしていると見なされてしまう可能性があります。
金額や贈与時期が不均一であれば、定期贈与とは見られにくいです。
贈与契約書を作成しておく
贈与は口頭の約束だけでも法律上は有効です。
しかし、生前贈与を定期贈与とみなされないためには贈与契約書を作成しましょう。
贈与契約書は、贈与のたびに作成することをおすすめします。
贈与契約書を作成していると税務署に対して、暦年贈与であると説明しやすいです。
また、後々のトラブルの予防にもなります。
贈与契約書には当人として贈与を行っている人と、贈与を受ける人の両方が自筆で署名します。
未成年の場合には、親権者が法定代理人として代筆しても構いません。
贈与契約書にはこれといって決まった書式などはありませんが、以下の事項を定めておくと良いでしょう。
・贈与を行った日付
・贈与の目的
・贈与の方法
・贈与を受ける人の名前や住所
・贈与を行う当人の名前や住所
口座の管理
孫や子供の銀行口座を作成し、その口座に預金を移すことで暦年贈与にしようと考える人もいますが、これは暦年贈与とはなり得ません。
贈与者が口座を保管している場合、名義預金とみなされてしまう可能性が高いです。
たとえば、祖母が孫の名義で預金をして、それを贈与だと主張するとします。
いくら祖母が主張し、その預金の存在を孫が知らなかったとしても贈与とは認められません。
相続財産として課税の対象となります。
暦年贈与をおこなうのであれば、子供や孫が普段から使っている口座に振り込みましょう。
贈与を受けるための口座を新たに作成したとしても、その口座の管理は贈与を受ける本人がすることが大切です。
相続開始前3年以内の贈与に注意する
暦年贈与は年間110万円までが非課税になりますが、相続開始前3年以内の贈与については、相続税の対象になります。
贈与には、生前贈与加算というものがあります。
死亡前3年以内に故人が相続人に対して生前贈与をおこなっていた場合、その贈与額を相続人の相続財産に含めなければいけないという決まりがあるのです。
余命が短いことが分かり慌てて暦年贈与をしたとしても、暦年贈与をはじめ、3年以内に死亡してしまうと、その贈与は相続税に加算されてしまいます。
ただし、相続開始前3年以内に贈与された財産であっても、以下のような場合は加算しなくてよい例外的なケースです。
・贈与税の配偶者控除
・住宅取得資金の贈与を受けた場合(1,200万円まで)
・教育資金の一括贈与を受けた場合(1,500万円まで)
・結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合(最大1,000万円まで)
贈与税の申告を行う
1年間の贈与額が110万円以下であれば贈与税が課税されませんので、毎年110万円以下の金額を贈与すればいいのではないか、と思う人もいるでしょう。
暦年贈与による贈与税の非課税を認めてもらうためには、非課税枠110万円を超える贈与の年を挟むと有効です。
111万円の贈与を行う年を作ると良いです。
111万円を贈与すると、110万円までが非課税となり、贈与税の対象となるのは1万円のみ。200万円以下の贈与の場合、税金は10%なので、10,000円×10%で納税金額は1,000円です。
納税をする面倒さはありますが、1,000円の納税をすることによって、税務署に対して贈与があったことを証明することができます。
贈与税は税理士への相談がおすすめ
「贈与税の申告の仕方が分からない」
「節税のためのノウハウを知りたい」
などと考える人は、税理士に相談をしましょう。
暦年贈与をしているつもりでも定期贈与とみなされてしまうと、高額な贈与税を支払うことになります。
節税のノウハウやアイデアをもっている税理士に相談をすると、スムーズに暦年贈与が進むでしょう。贈与税申告に強い税理士に相談することがおすすめです。
まとめ
暦年贈与は、1人につき110万円までは、財産をあげても税金がかからないという仕組みです。
贈与税の非課税枠を利用すると、発生する相続税の負担額を抑えられます。相続税対策として利用する人も多いです。
ただし、暦年贈与を行っていく際には、定期贈与とみなされないよう注意する必要があります。
暦年贈与が定期贈与とみられないために、毎年毎年継続して同時期に同額の贈与をしないこと、贈与税の申告を行うこと、贈与契約書を作成することなどが必要です。
やり方を間違えると節税対策にはならないため、注意しましょう。確実に暦年贈与を行うためには、早めに贈与税申告に強い経験豊富な税理士に相談することをおすすめします。
はじめての相続編集部
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