■お役立ちコラム特集
2021/06/25
相続財産管理人が選び方・費用解説|選任後の流れも
相続において必ずしも必要なわけではありませんが、ケースによっては相続財産管理人を選ばなくてはなりません。
本記事では、相続財産管理人の概要や選任するケース、選ぶときの流れや必要な費用、選任後の大まかな流れなどを解説します。
相続財産管理人とは
相続人がいない財産を管理する人のことを指します。
たとえば、誰とも結婚せず生涯を独身で通した方は、相続人がいません。
このような方は、預貯金や不動産を保有していても、相続してくれる人がいないのです。
また、相続する資格のある人がいたとしても、相続放棄してしまうケースがあります。
このような場合でも、遺産を管理する人がおらず、被相続人へお金を貸していた方への支払いも行われません。
相続財産管理人は、このような状況において、本来相続するはずだった人たちに代わって管理を行い、最終的に財産を国へ帰属させる役割を担います。
相続財産管理人を選任するケース
基本的には、相続する人が誰もいない、もしくはすべての相続人が権利を放棄したときに選任されます。
具体的には、以下の3パターンにおいて申し立てが行われるケースがほとんどです。
相続財産の管理が必要
相続は義務ではないため、相続人が断れば権利を放棄できます。
これが相続放棄です。権利を放棄すれば、相続は免れますが、相続人には遺産の管理義務が生じます。
たとえば、遺産の空き家が倒壊し、近隣の住人や通行人にケガを負わすといったおそれがあるため、管理義務が生じるのです。
このようなケースでは、相続財産管理人を選任します。
被相続人の債権者がいる
相続人がいないとなれば、被相続人へお金を貸していた人、すなわち債権者はお金を返してもらえません。
債権者が勝手に遺産へ手をつけることもできないため、このようなケースでは相続財産管理人を選任することがほとんどです。
特別縁故者がいる
血縁のある相続人がいない場合、生前特別に親しかった人には相続の権利が発生します。
内縁関係に合った方、親密な関係があった方などが該当します。
ただ、特別縁故者であっても遺産を自由にできるわけではないため、相続財産管理人に所定の手続きを行ってもらわなければなりません。
相続財産管理人選任の流れ
相続財産管理人を選任するには、家庭裁判所への申し立てが必要です。
ただ、いきなり家庭裁判所へ足を運んでも手続きはできないため、以下の流れに沿って進めましょう。
必要書類の用意
まずすべきは、申し立てに必要な書類をそろえることです。
必要書類は多岐にわたり、被相続人の住民票の除票や戸籍の附表、相続人がいないことを証明できる書類、預貯金通帳や不動産登記事項証明書、保険証券、戸籍謄本、賃貸借契約書の写しなども必要です。
ほかにも、相続放棄したのなら相続放棄申述受理証明書が、相続財産管理人の候補がいるのなら、その方の戸籍附表や住民票なども用意しましょう。
家庭裁判所へ申し立て
家庭裁判所の公式ホームページから、相続財産管理人選任申立書をダウンロードします。
必要事項を記入後、収入印紙を貼ったうえで予納郵便切手、必要書類と併せて提出しましょう。
なお、選任の申し立てができるのは相続放棄した方や被相続人の債権者、特別縁故者などの利害関係人、もしくは検察官です。
審理と審判
申し立てをしたからといって、すぐに選任が開始されるわけではありません。
相続財産管理人を選任する必要があるのか、審理や調査が行われます。
選任が必要だと判断されると、裁判所により審判が開始され、相続財産管理人の選任が始まります。
申し立てに必要な費用
相続財産管理人の選任申し立てには費用が発生します。
申し立て費用や予納郵便切手、官報公告費用、予納金などが主な費用です。詳しく見ていきましょう。
申し立て費用
家庭裁判所への申し立てに必要となる費用です。
800円と少額ですが、直接家庭裁判所で支払うわけではありません。
800円分の収入印紙を購入し、申立書に貼り付けて提出しましょう。
予納郵便切手
予納郵便切手は、申立書や必要書類と一緒に提出します。
具体的な金額はその地域を管轄する家庭裁判所により異なるため、申し立てを行う予定の裁判所に問い合わせましょう。
家庭裁判所へ電話して聞くことも可能ですが、直接足を運んで職員に確認することもできます。
官報公告費用
官報とは、政府が発行している刊行誌です。
相続財産管理人が選任されると、官報に情報が掲載されますが、それに必要な費用として官報公告費が発生します。
金額は3,775円で、家庭裁判所から渡される専用の納入用紙を用いて納めてください。
予納金
相続財産管理人は、債権者への支払いや不動産の処分など、さまざまな手続きを行います。時間も手間もかかるため、適切な報酬や経費を支払わなければなりません。
遺産の額が多いのなら、その中から報酬や経費を支払ってもらえますが、ほとんどない、少ないといったケースでは確保できないかもしれません。
こうしたリスクを回避するために、あらかじめ予納金の形で相続財産管理人の報酬、経費を確保するのです。なお、金額は家庭裁判所によって決められます。
相続財産管理人の権限
相続財産管理人には、さまざまな権限が付与されます。
相続人が本当にいないのかどうかを調査する、相続財産がどれくらいあるのか調べるといったことも可能です。
相続財産管理人には、これらの調査を進めるのに必要な権限を有しており、さまざまな手法を用いて調査を実行します。
選任後の大まかな流れ
相続財産管理人が家庭裁判所に選任されたあと、どのような流れになるのかを把握しておきましょう。
必ずしもこの通りの流れになるとは限りませんが、大まかには以下のような流れをたどります。
選任の公告
家庭裁判所により、相続財産管理人が選任されたことを官報で公告します。
公告することにより、相続の権利をもつ方がいれば名乗り出てもらえるからです。
公告から2ヶ月間は、財産の処分等を行わずに権利をもつ方からの連絡を待ちます。
債権者や受遺者への公告
被相続人へお金を貸していた方や、遺贈を受けた方などへも公告します。
理由は先ほどと同様で、名乗り出てもらうためです。2ヶ月のあいだ連絡を待ち、債権者や受遺者が現れたら、遺産の中から支払いや財産の承継を行います。
相続人捜索の公告
ここまでで、まだ遺産が残っている場合には、相続人捜索の公告を行います。
権利があると主張する人を探すのです。6ヶ月にわたって公告が行われ、相続の権利をもつ方、主張する方が現れた場合には所定の手続きを行います。
特別縁故者に財産分与
まだ遺産に残存分がある場合は、被相続人が生前親しかった方や、内縁関係にあった方など特別縁故者への財産分与が行われます。
自動的に行われるわけではなく、権利を主張する特別縁故者は、特別縁故者に対する財産分与の審判を申し立てることが必要です。
相続財産の換価と残余財産の帰属
売却できる遺産は換価し、残余財産は国へ帰属させます。
これでひとまず、相続財産管理人の仕事は終わりです。あとは、報告書を家庭裁判所へ提出し、報酬を受け取ります。
まとめ
相続財産管理人が選ばれるのは、主に相続する人がいないときと、すべての相続人が相続放棄したときです。
そのときどきの状況により、相続財産管理人を選任したほうがよいのか、自分たちで何とかしたほうがよいのか異なるため、じっくりと検討しましょう。
どちらを選択すればよいのかわからない場合は、税金のプロである税理士や、法律の専門家である弁護士などへの相談をおすすめします。
はじめての相続編集部
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