■お役立ちコラム特集
2021/06/25
遺産分割協議の進め方
相続人が1人しかいないケースでは協議も必要ありませんが、複数の相続人がいるとそうもいきません。
きちんと協議しながら決めないと、のちのち大きなトラブルに発展するおそれもあるのです。
本記事では、遺産分割の方法や大まかな流れ、注意点などのほか、遺産分割協議書へ盛り込むべき内容について解説します。
協議書のサンプルも掲載するので、今後の参考にしてください。
遺産分割の方法
遺産分割の方法は、大きくわけて現物分割と代償分割、換価分割の3つがあります 。
どのような遺産があるのかをすべての相続人が確認し、そのうえでどのように分割するのかを決める方法です。
詳しく見ていきましょう。
現物分割
相続の対象となる遺産の種類は多岐にわたります。
現金や預貯金のほか、住宅や土地などの不動産、株券のような金融資産も含まれます。
これらの現物を、どのように分割するのかを決めて分配する方法が現物分割です。
たとえば、住宅と土地が1つずつ、100万円の現金が遺産として残されているとしましょう。
相続人にAとB、Cの3人がいるケースでは、住宅をAさんに、土地をBさんに、現金をCさんにと分配するのです。
代償分割
現物分割で遺産をわけた場合、相続したものによって不公平が生じてしまうおそれがあります。
たとえば、Aさんが土地を、Bさんが500万円の現金を相続したとしましょう。
Aさんの相続した土地が500万円、もしくはそれ以上の価値があれば問題ありませんが、200~300万円程度の価値しかなかった場合、不公正が生じます。
このような不公平を解消するため、代償分割が行われます。
先のケースでは、Aさんに金銭などで少なくなった取り分を補填するのです。
逆に、Aさんの相続した土地の価値が高すぎるケースでは、ほかの相続人へ金銭などで補填を行います。
換価分割
土地や建物などの不動産は、現金や預貯金と違って価値がわかりにくい資産です。
同様に、株式のような有価証券も価値がわかりにくいため、相続において不公平が生じてしまうことも珍しくありません。
換価分割は、不動産や有価証券など価値のわかりにくい資産を、現金に換えてから分配する方法です。
現金に換えてから分配すれば、不公平が生じることを防げます。
ただ、相続人が「土地のまま相続したい」といったケースも出てくるため、しっかりと話し合うことが大切です。
遺産分割協議の流れ
ここからは、遺産分割協議の具体的な流れを見ていきましょう。
必ずしもこの通りになるとは限りませんが、大まかには以下のような流れになることがほとんどです。
相続財産の把握
まずは、どれくらいの相続財産があるのかを把握しなければなりません。
遺産がどれくらいあるのか把握できていなければ、誰へどのように分配するかを決められないからです。
莫大な遺産が残されるケースもあれば、遺産と呼べるようなものがほとんど残されていない、といったケースも少なくありません。
今後発生する手間や時間にも関わるため、まずはおおよその財産を把握しましょう。
この時点ではそこまで細かく把握する必要はないため、ある程度で問題ありません。
相続人の確認
誰が相続の対象になるのかをはっきりさせましょう。
基本的に、遺産分割協議はすべての相続人で進める必要があります。
相続人が何人いるのかにより、分割される金額が大きく変化するため、きちんと確認しましょう。
遺言が残されていれば話しは別ですが、そうでない場合には民法に則って誰がどれくらい相続するかが決まります。
それも踏まえたうえで、相続の対象となる人物が誰なのか、何人いるのかを把握してください。
遺言の有無を確認
被相続人が、自身の亡くなったあとに親族が遺産相続で揉めないよう、遺言を残すケースは少なくありません。
あらかじめ遺言の存在を家族へ知らせているケースもあれば、何も伝えずに亡くなってしまうこともあります。
遺言があるのなら、それに従って遺産の分割を行う必要があるため、有無を確認しましょう。
公正証書として作成しているのなら、公証役場の遺言検索システムにより遺言の有無を調べられます。
故人の遺品も含めて遺言の有無を確認してください。
相続人の意思を確認
ここまでのプロセスにより、相続人が誰で何人いるのか、誰がどれくらいの遺産を受け取れるのか、といったことがほぼわかります。
すべての相続人が納得してくれれば問題ありませんが、そうでないケースも発生するため、意思や考えを確認しましょう。
中には「〇〇が遺産を相続するのは納得できない」「自分の取り分がこれくらいしかないのは不満だ」といった思いを抱いている方がいるかもしれません。
のちのちトラブルになるおそれがあるため、各々の考えや気持ちを聞き出してみましょう。
遺産分割を進める
すべての相続人に考えや思いを聞きながら、具体的に遺産分割を進めていきましょう。
先述したように、中には不満を抱いている方がいるかもしれません。そのような声も聞きながら、どうすれば平穏に解決できるかを考えます。
全員が好き勝手に意思を主張し合っては、いつまでも遺産分割が進みません。
そのため、相続人たちの代表となる人物を決めたうえで、協議を進めていくことをおすすめします。
遺産分割協議書の作成
相続人の気持ちや考えも踏まえたうえで協議を進め、最終的にうまくまとまったのなら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は必ず作成しなければならないわけではありませんが、決まった内容を記しておくことでトラブルの回避に役立ちます。
また、金融機関で故人の預貯金をおろすとき、遺産分割協議書の提示を求められることがあります。
遺産分割が無事終わるまでは、さまざまなシーンで必要になるケースがあるため、作成することをおすすめします。
遺産分割協議における注意点
遺産分割協議には、すべての相続人が参加しなくてはなりません。
参加していない相続人がいた場合、協議そのものが無効になってしまうおそれがあります。
再度、全相続人を集めて協議を行う羽目にもなるため、必ずすべての相続人で協議を行いましょう。
なお、相続人が遠方で暮らしているケースでは、協議に参加できないことも考えられます。
このような場合は、電話やメールなどによる参加が認められています。
必ずしも、ひとつの場所に集まって協議しなければならないわけではありません。
遺産分割協議書に盛り込むべき内容
遺産分割で起こりやすいトラブルを回避でき、各種相続の手続きにも必要となるため、遺産分割協議書は作成することをおすすめします。
しかし、協議書にはいったいどのような内容を盛り込めばよいのでしょうか。
特別決まったフォーマットはありませんが、一般的には以下の内容が盛り込まれます。
・協議を行った日付
・被相続人の名前
・相続人の名前や住所
・登記簿謄本や権利証の内容(不動産が遺産にある場合)
・すべての相続財産
・誰がどの遺産を相続するのか
・相談人全員の署名と押印
また、遺産分割協議書を作成するにあたり、以下の書類が必要です。
・被相続人の除籍謄本や戸籍謄本
・被相続人の住民票の除票・戸籍附票
・相続人の実印と印鑑証明書
・相続人の住民票
協議書の作成を始める前に、あらかじめ用意しておきましょう。
まとめ
遺産分割ではトラブルが起きやすいものです。
特に、相続する遺産の額が大きく、相続人の数が多ければ多いほど、トラブルに発展するケースが少なくありません。
そのようなことにならないよう、正しい方法と流れで遺産分割協議を進めましょう。
ここでお伝えした注意ポイントも踏まえたうえで、のちに遺恨を残さぬよう協議を進めてください。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
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子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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