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■お役立ちコラム特集

2021/06/25

相続税の配偶者控除を上手に利用する方法

親族がなくなったときに財産を相続すると、相続税という税金が発生します。
ただし、どの相続でも「控除」という(課税価格から一定の金額を差し引く仕組み)制度があり、とりわけ、配偶者(亡くなった方の夫、または妻)が利用できる「配偶者控除」に注目が集まっています。
ただし、この配偶者控除を利用するには、注意が必要です。本記事では、相続税の配偶者控除を上手に活用する方法を解説します。

配偶者控除を使う前に必要なこと


まず、相続する金額が少ない場合は、原則、相続税を申告する必要がありません。
極端な話、相続する財産が0円の場合は税金を納める必要はないのです。
(生前贈与などを行っている場合は例外となります)

では、どれぐらい遺産があれば、申告する必要があるのでしょうか。少し複雑ですが、そのステップをまとめてみました。

基礎控除を使う


相続税には、基礎控除として、一律3,000万+法定相続人ひとり600万円の金額が設定されています。
これは、配偶者だけでなく、法定相続人である子どもにも適用されるものなので、まずはこの基礎控除を使うようにしましょう。

具体的な事例でいうと、夫がなくなり妻と子どもふたりが相続する場合は、法定相続人が3人いるので、3,000万円+600万円×3=4,800万円が控除対象となります。
仮に相続される財産が1億あるとしたら、5,000万円−4800万円=5,200万円が課税対象です。

つまり、相続する人数にかかわらず、必ず誰でも3,600万円までは基礎控除を受けることができるのです。
そのため、基礎控除を使うだけで相続税を支払う必要がないなら、配偶者控除を申告する必要はありません。

基礎控除と配偶者控除の違い


それでは、配偶者控除はどう使うのでしょうか?上記の例えでいうと、5,200万円が相続税の課税価格となるのですが、配偶者が「配偶者控除」を利用すると、この金額に対しても課税されることがありません。
配偶者のみ、2段階で軽減される控除額があると考えればいいでしょう。
ただし、配偶者だけに適用される制度なので、子どもたちは利用することができません。

1億6000万までは配偶者控除が適用になる 


配偶者控除の金額は、法定相続分か1億6,000万円の、いずれか高い金額までと決まっています。
配偶者の相続できる上限金額として、この金額を覚えておくといいでしょう。
ただし、財産の総合計がはっきりしないと、配偶者の法定相続分が決まりません。
配偶者の法定相続分の計算方法と、控除をうけるための手順をご紹介します。

配偶者の法定相続分を計算しよう


相続税の申告は、亡くなった方が持っていた財産を計算することから始まります。
このとき、プラスの財産のほかに、債務などのマイナスの予算も調べることが必要です。
亡くなられた方の名義のものを調べて、相続対象となる財産の総合計を把握しましょう。

次に、亡くなった方の財産は、民法により配分が決まっています。(法定相続分)
亡くなられていた方の財産のうち、2分の1が配偶者に、残りの2分の1を直系の子どもたちで均等に割ることになるのです。
(子どもが二人いた場合は、それぞれ4分の1の財産を分割して相続することになります)

上記の事例をつかって説明しましょう。残された財産が1億あった場合に、基礎控除となる金額は4,800万円でした。
残りの5,200万円を法定相続分に合わせて、配偶者が2,600万円、子どもたちがひとり1300万円ずつ相続することになります。
子どもたちの相続した1,300万は、課税価格の対象となり相続税が発生しますが、配偶者にとっては、1億6,000万円よりも低い金額になるため、課税価格とならず相続税がかかりません。

逆に、会社を経営している配偶者から株式などを相続し、1億6,000万円以上の財産を配偶者が相続することになっても、この制度を使えば、相続税は発生しません。
極端なことをいうと、10億円でも100億円でも、法定相続分内(財産の2分の1)であれば、課税対象にはならない、ということを覚えておきましょう。

必ず申告が必要になる


配偶者控除を使う場合は、必ず税務署に申告を行う必要があります。
税務署から見ると、配偶者控除を利用して相続税が0円となったのか、単なる相続税の申告もれ(申告忘れ)なのか判断ができません。
必ず、相続税の申告をして、配偶者控除を利用してください。

配偶者控除が適用になる条件


配偶者控除が利用できるのは、戸籍上の配偶者となります。
事実婚でも戸籍が一緒になっていない人は対象とならず、逆に生活を共にしておらず長らく別居していても、戸籍が一緒であれば「配偶者」と認められます。
生活を共にした期間や、婚姻期間の長短は問題でなく、戸籍が問題になるので注意しましょう。

また、遺産を隠していることが発覚した場合も、配偶者控除が適用されません。
修正課税を行うだけでなく、重加算税も発生するので気をつけましょう。隠すつもりがなくても、気づかなかった財産があとから出てくる場合も同様です。

配偶者控除のメリット・デメリット


配偶者控除は、残った配偶者の今後の生活を保障するためにも、とても有益な制度ということがわかりました。
できるだけ利用したい制度ですが、場合によっては、デメリットが発生してしまうこともあるので注意が必要です。

法定相続分を変更して、相続税を節税する


亡くなった方が生前、遺言により法定相続を変更して、相続税を軽減することができます。
再び、上記の例を使って説明しましょう。

亡くなった方が、配偶者と子供2人に1億円の遺産を残した場合、基礎控除:3、000万円+600万円×3=4,800万円が控除となり、残り5,200万円が課税価格となります。
配偶者が、法定相続分、つまり2分の1の2,600万円を「配偶者控除」の申告を利用すれば課税価格になりません。一方、子供2人は、合計2,600万円に対する税金がかかってしまいます。

これを、遺言により、配偶者が全額5200万相続した場合はどうでしょうか。
やはり「配偶者控除」限度額内なので、相続税はかかりません。こうして、配偶者控除を利用して、節税対策を行うこともできるのです。

二次相続でかえって相続税がかかることも


ところが、相続には「二次相続」というものが発生することがあります。
配偶者が相続し(一次相続)相続したものを使い切ってしまえば、次の相続は発生しませんが、使い切らずに、子どもたちに財産を残した場合は、二次相続というものが発生するのです。
上記の事例でいうと、5,200万円を使うことがなく配偶者が亡くなってしまった場合は、そのまま子ども二人に、相続税がかかってしまいます。

子どもだけで財産を相続するときは、「基礎控除」しか使えないため、単純に控除金額が下がってしまうのです。
また、法定相続人の人数が減ってしまうため、ひとり600万の控除額も利用できなくなります。

結局、一次相続で税金を軽減できたとしても、二次相続において、一次相続で支払うべき相続税よりも、高い相続税を支払うことになることが多々あるのです。
安易に、配偶者控除を利用することなく、場合によっては、税理士など専門家に相談しましょう。

こんな場合は相談しよう 注意点


配偶者控除には、メリットだけでなくデメリットもあることも紹介しました。
とくに、一家の主人が亡くなった場合は、相続する財産が大きくなり、相続税も大きな金額になります。注意したい点をまとめてみました。

財産がどれだけあるかわかりにくい場合


財産には、すぐに価値がわかる預貯金や有価証券などのほかに、価値がわかりにくい土地や家屋というものがあります。
とくに事業を経営されている方が亡くなった場合は、借入金や投資など、すぐに財産リストが作れない場合もあります。
この場合は税理士や司法書士に相談し、調べてもらう、という方法もあるのです。

申告後に、新たに相続財産が出てきた場合にも、申告方法を対応してもらえるので相談してみましょう。

申告期限に間に合いそうもない時


相続性の申告には、期限があります。相続開始日(亡くなられた方が死亡したことを知った日から10ヶ月以内)に申告しないといけません。
ただし、相続分割がその期間内に協議できない場合は、一旦「法定相続分で遺産分割した」と仮定し「申告期限後三年以内の分割見込書」を添付して納税を一旦することが可能です。
もちろん、その後、訂正した申告書を提出すれば、税金が還付されることになります。

相続税を申告し、配偶者控除を利用しよう


配偶者控除は、亡くなった方の配偶者が、その後の生活や長い老後の生活を心配なくすごすために、設定された制度といえるでしょう。
ただし、利用する場合は、必ず申告が必要です。
また利用方法を間違えてしまうと、子ども世代の二次相続のときに、大きくデメリットとなることもあるので、上手に利用するようにしましょう。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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