■お役立ちコラム特集
2021/06/25
贈与税がかからない方法|合法的やり方のみ解説
そのためには、生前贈与をするのも1つの方法です。
贈与税には基礎控除が設けられているほか、特例の適用を受けて非課税になる制度もあるので、それらを上手に活用して生前贈与をすれば相続税対策ができます。
この記事では、贈与税がかからない方法と、生前贈与をする際の注意点を解説します。
贈与税とは
贈与税とは、個人から財産を譲り受けた際に課税される税金です。
財産を譲り渡す贈与者ではなく、財産をもらった受贈者が納税します。
贈与税の目的は、相続税の課税回避を防ぐためです。
相続税は、相続する資産額に応じて課税額が決まるので、資産が多いと相続税は高くなります。
贈与税がないと、生前に財産を相続してしまえば相続税を逃れることができてしまうので、それを防ぐために贈与税が設けられているのです。
贈与税の税率
贈与税は、相続税逃れ防止の目的であることから、相続税よりも税率が高くなっています。
贈与税と相続税の税率を比べてみると、その違いがよくわかります。
贈与税には非課税制度がある
贈与税のほうが相続税よりも税率が高いのであれば、生前に贈与しないほうがよいのではないかと思うのではないでしょうか。
しかし、贈与税には非課税制度が設けられているので、それをうまく活用すれば、相続税対策をすることができます。
もともと贈与税がかからないケース
贈与の内容や金額によっては、もともと贈与税がかからない場合があります。
では、どのようなケースがそれに該当するのか見ていきましょう。
生活費や教育費の贈与
親や祖父母などの扶養義務者から、子や孫に対する必要な生活費や教育費の贈与には、贈与税がかかりません。
生活費や教育費の具体例としては、以下が挙げられます。
・ 学費
・ 教材費
・ 仕送り
・ 家賃
・ 通学のための交通費
・ 学習塾にかかる費用
生活に必要なこれらの贈与は、扶養義務の範囲と考えられるため、贈与税はかからないのです。
ただし、毎月150万の仕送りなど、社会通念上かけ離れた金額の場合は、贈与とみなされ課税されることがあります。
また、生活費として贈与されても、余った分を預金していたり、株式などの購入資金に当てていたりした場合は贈与税がかかります。
年間110万円以下の贈与
贈与税には、受贈者1人当たり年間110万円の基礎控除が設けられています。
そのため、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかかりません。
この基礎控除を利用し、例えば1,000万円の財産を110万円以下の範囲内で毎年少しずつ贈与していけば、本来かかる税率40%が非課税となります。このような贈与の方法を暦年贈与と言います。
しかし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与してしまうと、最初から定期的に贈与する意思があったとして、定期贈与とみなされてしまうので注意が必要です。
定期贈与とみなされた場合は、受贈者に移行した贈与額に一括で贈与税が課せられます。
定期贈与と誤解されないためには、毎年贈与額と贈与する時期を変動させ、贈与を行ったことの証拠となる「贈与契約書」を作成しておきましょう。
また、相続開始から3年前までの贈与は、相続財産として扱われ相続税が課税されるので、暦年贈与は贈与者が健康な若いうちに行っておくことをおすすめします。
特例の適用により贈与税がかからない方法
贈与税には、一定の条件を満たすと非課税になるさまざま特例があります。
贈与税の配偶者控除
贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が20年以上経過した夫婦間が適用対象の控除で、居住用の不動産や居住用の住宅を購入するための資金を贈与する場合、2,000万円までは非課税となります。
なお、この配偶者控除は基礎控除も併用できるので、最大で2,110万円までの贈与が課税されません。
相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、将来相続する財産の前渡しをすることで贈与税が非課税になり、相続時に生前贈与された財産と相続財産の合計額に対して課税される制度です。
60歳以上の親や祖父母が、20歳以上の子供や孫に贈与する場合、2,500万円までは非課税になります。
前渡しした非課税の財産は、相続時に課税対象となることから、この制度で相続税対策は期待できません。
どちらかというと、現在まとまった資金が必要な子供に、相続を待たずに財産を使わせてあげたいという場合に役立つ非課税制度です。
なお、相続時精算課税制度を利用すると、暦年贈与はできません。
教育資金の一括贈与
親や祖父母から30歳未満の子供や孫に教育資金を一括贈与する場合、受贈者1人当たり1,500万円までが非課税になります。
ただし、贈与者が亡くなった時点で残っている教育資金においては、相続税の対象(学校に通っている23歳未満の受贈者は除く)です。
結婚や子育て資金の一括贈与
親や祖父母から20歳以上50歳未満の子供や孫に、結婚資金のための贈与をする場合は、受贈者1人当たり300万円まで、出産・子育て資金の贈与においては、受贈者1人につき1,000万円までが非課税になります。
結構や子育て資金の一括贈与の特例も、贈与者が亡くなった時点で贈与残額がある場合は、相続税の対象となります。
住宅取得資金の贈与
親や祖父母が子供や孫に住宅の購入資金として贈与した場合、最大1,500万円までは贈与税がかかりません。
非課税額は、住宅取得の契約時期、住宅価格に消費税が課税されるかどうか、省エネ住宅かどうかによって以下のように異なります。
・ 住宅取得の契約時期が2021年4月1日〜2021年12月31日の場合における非課税額
生前贈与をする際の注意点
贈与税の非課税枠を利用して節税対策をする際の注意点を覚えておきましょう。
現金手渡しの贈与はおすすめできない
現金手渡しの贈与は、いつ・誰に・いくら渡したのか証拠が残らず、それがリスクとなるのでおすすめできません。
贈与者が亡くなり税務調査が入った場合、被相続人の銀行口座の取引履歴が調査されます。
もし使途がわからない多額の出金があった場合、それが非課税範囲内の暦年贈与であっても、明確に証明できなければ相続税の課税対象になってしまう可能性があります。
また、現金手渡しをして、もし贈与税の申告漏れがあった場合は、脱税行為とみなされペナルティーが課せられます。
リスクのある選択をしなくても、非課税制度を利用すればよいだけなので、合法的なやり方で節税をしましょう。
受贈者が口座を管理する
受贈者名義の口座に資金を贈与しても、贈与者が受贈者の銀行口座を管理していると、子供や孫の名義を借りて作成しただけの口座にお金を振り込んでいる「名義預金」とみなされ、贈与として認めてもらえなくなります。
贈与と認めてもらうには、受贈者の子供や孫が自由に使用できる口座である必要があります。
そのため、通帳や印鑑は受贈者に渡し、贈与者が管理しないようにしましょう。
まとめ
贈与税には、さまざまな非課税制度があります。相続財産や相続人の人数・事情などを考慮して、節税になる贈与の方法を選択しましょう。
また、現金手渡しの贈与は禁止されているわけではありませんが、受け渡しの証拠が残らないことからおすすめの方法ではありません。
非課税枠の贈与であっても否認されることがあるので注意が必要です。
基礎控除や特例による非課税制度を上手に利用して、節税につなげましょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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