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■お役立ちコラム特集

2021/07/05

相続放棄の期間は3ヶ月|期間を過ぎた際の対策

親の遺産相続で、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いことが判明した、親族間の相続トラブルに巻き込まれたくないなどの理由から、財産を相続したくないという方もいるのではないでしょうか。

相続人は無条件に遺産を受け継ぐ必要はなく、相続により負担が生じる場合は、相続放棄をすることも可能です。
そこでこの記事では、相続放棄が可能な期間、期間の延長手続きの方法、期間を過ぎてしまった際の対策を解説します。

相続放棄が可能な期間

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の財産の相続を放棄することです。

相続では、被相続人の預貯金や不動産などの財産だけでなく、被相続人に借金がある場合は、その借金もマイナスの財産として相続人に受け継がれます。
よって、相続人は相続により、借金の返済義務を背負うことになります。

プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合には、相続をすることで相続人の生活に支障をきたすことが考えられるため、相続人は相続放棄をすることも可能です。
ただし、定められた期間内に手続きをする必要があります。

相続放棄の手続きは相続開始から3ヶ月以内 


相続放棄ができる期間は、自分に対する相続があることを知ったときから3ヶ月以内です。
この3ヶ月の期間を「熟慮期間」といい、熟慮期間に相続放棄の手続きをしなかった場合は、資産と負債の全財産を受け継ぐとみなされます。

よって、3ヶ月以内にプラスとマイナスの全財産を洗い出して、相続するかどうかを決める必要があります。
なお、財産を受け継がないことが決まったら後から撤回できないので、慎重に考えたうえで行いましょう。

相続放棄の熟慮期間を延長することもできる


熟慮期間内に相続放棄をしたほうがよいのかどうか、なかなか決められない場合は、熟慮期間を延長してもらうことも可能です。

例えば、不動産などの現金ではない財産の場合、査定をしないとどのくらいの価値(価格)になるのかわからず、時間を要することも少なくありません。
このようにプラスの財産の価格がなかなか判明しないと負債との比較ができず、相続をしないほうがよいのか判断に悩みます。

資産と負債の内容を全て把握しきれていない状態で相続放棄をすると、後悔することになりかねません。
財産調査に時間がかかる場合は、家庭裁判所に申立をして期間を延長してもらうことをおすすめします。

相続放棄期間の延長手続きの方法


相続放棄期間を延長したい場合は、熟考期間の3ヶ月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。
申立にかかる費用、および必要書類は以下の通りです。

かかる費用


・ 相続人1人につき収入印紙800円分
・ 連絡用の郵便切手

連絡用の郵便切手の金額は裁判所によって異なるため、申立をする家庭裁判所に問い合わせて確認しましょう。

また、司法書士に依頼する場合は、手続き報酬として2〜5万円程度かかります。

必要な書類


・ 申立書
・ 被相続人の住民票除票、または戸籍の附票
・ 熟慮期間の延長を希望する相続人の戸籍謄本

申立書は、全国の家庭裁判所のHPからダウンロードできます。

延長手続きの注意点


相続放棄期間延長の申立が承認された場合、一般的には1〜3ヶ月程度延長します。
もし延長をしても財産調査の時間が足りないようであれば再び申立をできますが、再延長の必要性があるのか厳格に審査されるため、認めてもらえるとは限りません。
そのため、できるだけ期間内に財産調査を終えられるように努めましょう。

また、相続放棄は相続人の個々の意思表示なため、複数の相続人がいる場合、相続人の1人が相続放棄期間の延長を認められても、他の相続人の熟慮期間は延長されず通常の3ヶ月のままです。
他の相続人も延長したほうがよい場合は、個々で手続きをする必要があります。

相続放棄が認められないケースもある


相続放棄ができる3ヶ月以内であっても、相続放棄が認められないことがあります。
具体的にどのようなケースで相続放棄ができなくなるのか、頭に入れておきましょう。

被相続人の財産を相続人が処分した場合


被相続人の財産を相続人が一部でも処分してしまった場合は、財産を相続したとみなされ、相続放棄ができなくなります。
財産の処分とは、主に以下のようなケースなどです。

・ 被相続人名義の預貯金や不動産を自分名義に変更する
・ 遺産分割協議を行い、手続きを進めてしまった
・ 被相続人の借金を返済した

特に気をつけたいのが、被相続人の借金返済の請求がきて返済してしまうケースです。
たとえ返済額が少額であっても返済すると負債を受け継いだ、つまり相続をしたとみなされます。

相続放棄を検討しているときに債権者から請求書が送られてきたら、ひとまず支払いはせず、債権者には亡くなった事実を伝えるだけに留めましょう。

被相続人の財産を故意に隠していた場合


被相続人の預貯金や不動産などのプラスの財産を故意に隠し、負債が多いと見せかけて相続放棄をしようとした場合も、相続放棄は認められません。

相続放棄の期間が過ぎた場合の対策


熟慮期間の3ヶ月以内に相続放棄を選択しなかった場合は、原則として相続放棄はできません。
しかし、以下のようなケースにおいては、家庭裁判所に申立をすることで例外的に認めてもらえる場合があります。

「特別な事情」がある場合は認められることもある


相続放棄が認められる期間内に手続きをしなかったことに対して、特別な事情がある場合は、相続放棄が認められることがあります。

例えば、生前に被相続人から借金をしていないと言われていたにもかかわらず、実は借金をしており、その事実が熟慮期間を過ぎてから発覚したケースなどです。
借金がないと信じていた理由が正当だと認められれば、相続放棄が可能になります。

被相続人の死亡の事実を知らなかった場合は認められる


被相続人が亡くなっていることを知らなかった場合も、相続放棄を認められることがあります。

例えば、被相続人である父親と何年も疎遠で、父親の友人から1年前に被相続人が亡くなっていた事実を伝えられたとします。
この場合、父親の友人から告げられた日が熟慮期間の起点となり、そこから3ヶ月以内であれば相続放棄が可能で、本来は問題ありません。

しかし、家庭裁判所は、被相続人と相続人が疎遠だったかどうかを知らないので、相続放棄を希望する場合は、被相続人の死亡の事実を知らなかった事情を家庭裁判所に説明する必要があり、認めてもらえば相続放棄ができます。

相続放棄をする際の注意点


相続放棄は、相続人の都合や心変わりで後から撤回できるようなものではない重要な意思表示なので、以下のことも考慮したうえで決めることが大切です。

相続放棄した相続人の子に代襲相続が発生しない


相続放棄をした場合、相続放棄をした相続人の子(被相続人の孫)への代襲相続は発生しません。
代襲相続とは、被相続人よりも先に相続人である子が亡くなっている場合、被相続人の遺産を被相続人の孫に受け継がれることです。

被相続人の子が相続放棄をした場合、はじめから相続人ではなかったと扱われるため、相続権は相続人の子にではなく、第二順位となる相続人に移ります。

代襲相続が発生しないことから、親の負債の返済義務が相続人の子に及ぶことはなく安心です。
しかし、もし不動産などの思いがけないプラスの資産があることがのちに判明した場合、その資産は受け継げなくなります。

このように、相続放棄によって代襲相続が発生しないことによるメリットとデメリットも、相続放棄の手続きを進める前に考慮しておきましょう。

限定承認も検討してみる


被相続人のマイナスの財産もある場合は、限定承認をするのも1つの選択肢です。
限定承認とは、相続した財産の範囲内で被相続人の借金を返済する相続方法です。

相続した資産で借金を返済後、プラスの財産が残った場合はそれを受け継げます。
反対にプラスの財産で相殺しても借金が残る場合、その残った借金は相続をしなくてもよくなります。

限定承認をしておけば、後から負債があることが判明した際に、相続した財産以上に支払う必要がないので、安心して相続できるのがメリットです。

ただし、限定承認の手続きは非常に複雑で、司法書士や弁護士に依頼しないと手続きを進めるのは難しいので、時間と費用がかかります。
メリットとデメリットを踏まえ、相続放棄と限定承認のどちらがよいのか検討してみるとよいでしょう。

遺産相続が負担になる場合は相続放棄の検討を


遺産相続というと、預貯金や不動産などのプラスの財産に意識がいきがちですが、負債も相続の対象です。
そのため、プラスの財産よりもマイナスの財産がはるかに多いことが判明した場合は、相続放棄をしたほうが得策と言えるでしょう。

相続放棄は、受理された後は撤回できないので、熟慮期間に財産調査をしっかりと行ったうえで決めましょう。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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