■お役立ちコラム特集
2021/07/05
相続放棄の費用相場|自分or専門家に依頼…どちらがよい?
相続費用を負担できない、遺産が主に借金であるなどの理由で、相続を放棄するケースもあるのではないでしょうか。
そこで今回は、相続放棄をご自分で行う場合と、専門家に依頼する場合の費用の違い、選ぶ基準をお伝えしていきます。
相続放棄について知っておきたい点5つ
相続放棄の費用を確認する前に、まずは相続放棄手続きのルールを知っておきましょう。
事前に把握しておくことで、判断が明快になります。
相続放棄をするとプラスの財産も相続できなくなる
相続放棄をするケースは、遺産の中身が借金などの債権である場合が主です。
しかし、借金があるからと即座に相続放棄をしてしまうと後悔する可能性があります。
たとえば「自宅不動産や土地などプラスの遺産は引き継ぎたいけど、借金などマイナスの遺産は引き継ぎたくない」ケース。
その場合は「限定承認」という形式で相続手続きを行うほうがよいでしょう。
限定承認とは、プラスの遺産の限度内でマイナスの遺産を相続する方法。
つまり、借金の返済の必要がない形式で遺産相続を行うため、自腹を切る必要がなくなります。
なお、限定承認もせず相続放棄を行う場合、遺産を勝手に処分してはいけません。
遺産相続を行ったとみなされるためです。
そもそも放棄する予定ですし、被相続人(亡くなった方)の預金を勝手に引き出す、相続財産の売却・譲渡・取り壊すなどの行為は行わないようにしましょう。
一旦相続放棄を実行すると撤回できない
一度相続放棄が受理されると撤回はできないため、事前に財産を把握しておきましょう。
ご自分で不動産価格や預金額の確認を行うか、難しい場合は専門家に財産調査を依頼します。
複数人と相続について話し合う場合は、共有名義で所有するか、それぞれ放棄手続きをするかなども判断します。
例外的に誰かに騙された場合、認知症や知的障害がある人が相続放棄をした場合は取り消すことが可能です。
しかし、撤回できない可能性もあるため慎重に検討したいところです。
相続放棄は家庭裁判所に申請する必要がある
相続放棄の申請は一般的に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が受け付けます。
そのため、被相続人と居住地が離れている場合、役所や裁判所と郵送でやり取りするために時間がかかります。
相続放棄には期限がある
相続手続きには期限があり、「相続があると知った日から3ヶ月以内」と決められています。
そのため、期限が過ぎてしまうと相続放棄できなくなる可能性があります。
この3ヶ月は「熟慮のための期間」で、この間に財産調査や相続人同士の話し合い、相続の意思決定や手続きを行います。
しかし、前述の郵送手続きも含めて3ヶ月に行う必要があるため注意が必要です。
ただし、相続放棄を期限内にできない場合、家庭裁判所へ申し立てることで、延長できる可能性があります。
認められる条件は明確に決められていません。
ただし、被相続人とほぼ面識がなかった、調べたが借金の存在がわからなかったなどの理由なら認められる可能性があります。
そのため、期限内の手続きが難しそうな場合は事前に家庭裁判所に確認しましょう。
相続放棄を行った後の注意点
相続放棄は相続人がそれぞれ手続きする必要があります。
したがって、借金などの理由で相続放棄をする場合、他の相続人に状況を通知しておいたほうがトラブルにならずに済みます。
また、土地や家屋の相続を放棄した場合、他に適当な相続人が見つからないと最終的に「相続財産管理人」へ引き渡すことになります。
しかし、引き渡しが完了するまでは相続放棄をしても財産の管理義務は残っているので注意しましょう。
相続放棄を自分で行う場合と専門家に依頼する場合の費用の比較
ここからは、相続放棄の費用を確認していきます。
相続放棄の手続きは自分でも行えますが、専門家である司法書士、弁護士に依頼することも可能です。
それぞれ費用が異なりますので、順に解説していきます。
相続放棄手続きに必要な書類と費用
・ 相続人の戸籍謄本…1通450円程度
・ 被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本(死亡の記載のあるもの)…1通450~750円程度
・ 被相続人の住民票(除票)か戸籍附票…300円程度
・ 裁判所に納める費用…収入印紙代800円程度、連絡用の郵便切手500円程度(金額は裁判所により異なります)
相続放棄手続きに必要な書類は司法書士・弁護士に依頼する場合でも変わりません。
しかし、自分で手続きを行えば以下の書類にかかる費用のみで済み、最も安くできます。
合計すると、3,000~5,000円程度がかかる計算です。
金額に幅があるのは、郵送手続きが必要になるかどうかの違いです。
各種書類を郵送でやり取りする場合、往復の郵便切手代、各種書類の発行代金分の定額小為替が必要になります。
なお、郵送で戸籍謄本などの書類を取り寄せる際は定額小為替にて書類の発行費用を支払います。
定額小為替は各郵便局の窓口で発行できます。
また、家庭裁判所に相続放棄を申請する際は「相続放棄申述書」が必要です。
その際、提出した戸籍謄本の返却を申請する場合は「原本返却申請書」も別途必要になります。
ただし、どちらも裁判所のホームページから書類をダウンロードして印刷可能ですので、かかるのは印刷費用と郵送費用のみです。
相続放棄を司法書士に依頼する場合の費用
次に、相続放棄手続きを司法書士に依頼した場合の費用を見ていきます。
報酬額は司法書士や弁護士で自由に決めることができるため、決まった価格はありません。
しかし、一般的には以下の金額が相場価格となっています。
・ 初回相談料(60分)…0~5,000円
・ 司法書士の代理手数料…2万円~5万円
・ 書類作成の代行費用…3,000円~5,000円程度(書類取得費用を含む)
司法書士などの専門家に依頼する場合、実費以外に相談料、出張費、代理手数料などの費用がかかります。
また、3ヶ月以内に手続きができなかった場合、期間延長の申請を代行してもらえますが、別途1万~5万円加算されることがあります。
相続放棄を弁護士に依頼する場合の費用
弁護士へ相続放棄手続きを依頼する場合、2万~10万円程度が相場です。
事務所にもよりますが、司法書士に依頼するより金額が高くなる傾向にあります。
・ 初回相談料(60分間)…0~1万円
・ 弁護士の代理手数料…2万~10万円
・ 相続放棄の代行費用…3,000~5,000円(書類取得費用を含む)
3ヶ月以内に手続きが完了せず延長申請する場合、司法書士に依頼した場合と同じく追加手数料が発生する場合があります。
また、弁護士事務所によっては、先に着手金を支払う、相続放棄完了後に成功報酬を別途支払う場合もあります。
財産調査を依頼する場合の費用
財産調査についてもご自分で行う場合と、司法書士・弁護士に依頼する場合があります。
後者の場合、上記の費用に財産調査の費用が別途加算されるのが一般的です。
依頼する場合、司法書士・弁護士どちらも20万~30万円が目安となります。
財産調査に関しては行政書士に依頼も可能で、その場合は10万~20万円と若干安くなります。
経済的に余裕がない方は、「法テラス」の法律扶助制度を利用して専門家に依頼する方法もあります。
審査はありますが、無料の法律相談や、費用の立て替えも可能になる可能性があるので検討の価値はあります。
相続放棄を自分で行うか専門家に依頼するかの判断基準
それでは、相続放棄を自分で行うか、専門家に依頼するかはどう判断すればよいのでしょうか。
相続放棄を自分で行ったほうがよいケース
相続放棄申請が受理されない場合、相続義務が発生する可能性もあります。
したがって、複雑な条件でなければ自分で行った方が良い場合もあります。
たとえば、以下のようなケースです。
・ 残る相続人が自分のみの場合
・ 遺産の内容が借金など債権のみの場合
・ 3ヶ月の期間内に余裕を持って手続きできそうな場合
上記以外で自分では判断できない場合、法テラスや司法書士事務所、弁護士事務所を調べてみましょう。
相続放棄を専門家に依頼したほうがよいケース
では、相続放棄を司法書士・弁護士に依頼したほうがよいケースも見ていきます。
・ 自分で手続を行うのが不安、あるいは面倒な場合
・ 忙しくて自分で相続放棄手続を行うのが難しい場合
・ 相続人同士の話し合いが難航して、3ヶ月以内に手続きが終了しそうにない場合
・ 相続人が多く、3ヶ月以内に手続きが終了しそうにない場合
・ 遺産が理由の借金の取り立てや督促で困っている場合
・ 特定の相続人に遺産を相続させたい場合
・ 農地など管理に費用や手間がかかる不動産を相続したくない場合
なお、司法書士と弁護士では費用が変わりますが、その理由は司法書士には「代理権」がないためです。
代理権とは、相続人に代わって押印や書類作成・受け取りを行う権利で、弁護士でればこれらの煩雑な作業も行ってもらえます。
また、手続き期限の延長を申請したい場合、弁護士であれば「事情説明書」を作成して裁判所が認める可能性が高まります。
相続放棄の申述書が受理されない可能性も低く抑えられるため、手続きに不安がある方は弁護士に相談しましょう。
そのため、司法書士は相談や戸籍の収集業務など一部しか対応してもらえませんが、反面、費用は弁護士に依頼するより安く済みます。
予算はないけど相談しながら手続きを進めたい場合は司法書士に依頼しましょう。
まとめ
自分で行えばほんの3,000円程度で済んでしまう相続放棄手続きですが、遺産の内容や相続人の状況などによっては専門家を頼ったほうが確実です。
一般の方でも行える行為ではありますが、期限内に済ませる必要があるため、不安もあるでしょう 。
予算と相談しながら、ご自分が納得いく方法を選ぶようにすることが大切です。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
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子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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