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■お役立ちコラム特集

2021/07/05

相続税の申告が必要なとき、不要なとき。その違いは?

自分の家族が亡くなり財産を相続するときに、相続税という税金が発生します。
申告すると必ず税金がかかってくる、相続税は資産家の話、と感じるかもしれませんが、単純に残された財産の金額だけで、相続税の課税率は決まりません。

申告をすれば、相続税がかからなくなることもあり、逆に、相続する財産が0円だったとしても、申告もれになってしまうこともあるのです。
その場合は、追徴課税などを求められることになってしまい、注意が必要です。複雑な場合は税理士に相談するべきですが、まずは最初に、自分で不要と必要の線引きを行いましょう。

本記事では、相続税の申告の要不要をチェックするポイントを解説します。


まずは財産の確認からはじめよう。


相続税の申告は、亡くなった方が持っている財産を調べることから始まります。
財産イコール「課税価格」とみなされるためです。
このとき、現預金などプラスの財産のほかに、債務(借金)などのマイナスの予算も調べる必要があります。詳しく見ていきましょう。

プラスの財産/現預金、株、不動産など


貯金などはわかりやすいプラスの財産です。
これら銀行口座などのほかに、現金などのタンス預金、株や投資信託などの金融商品、土地や家屋などの不動産も財産にカウントされます。

このとき忘れがちなのが、保険。仮に亡くなられた方が、死亡時500万円受け取りの死亡保険に入られていると、これも「みなし財産」としてカウントされます。
(死亡保険にも非課税限度額がもうけられているので、受け取り金額の全額がプラスの財産になるわけではありません。詳しくは保険会社に確認ください)
亡くなられた方の名義のものを、全て揃えて計算しましょう。

マイナスの財産/債務や葬式費用


相続には「マイナス」のものもカウントされます。
例えば仕事上の借入金、個人の借金など、名義が亡くなられていた方のものがある場合は、マイナスの財産となります。
上記のプラスの財産から、引いて合算するようにしましょう。

申告の線引きはまず3600万


相続税には控除(一定の金額を差し引く仕組み)があります。
課税価格(財産の総合計)に対して、免除される金額が一定されているのです。
法定相続人がひとりでも、3600万の控除があるのですが、相続する子どもの人数にもよって控除の金額がかわります。
簡単に計算できるので、まずは自分で計算してみましょう。

基礎控除は3000万


相続税は、所得税同様、基本3000万が控除される、ということになっています。
つまり、財産が3000万以下の場合は、まず相続税が発生しません。
この場合は、基本的に申告が不要になります。
ただし、生前贈与(亡くなる前に財産を贈与する)があった場合は、この限りではありません。

法定相続人数×600万も控除対象に


相続は、亡くなられた方の配偶者とその子供が、法定相続の優先順位「第1順位」とされ、分け合って財産の相続ができることになっています。
(第1順位の配偶者や子がいない場合は、亡くなられた方の両親が「第2順位」に、さらにいなければ兄弟姉妹などの「第3順位」になります)
そして、この法定相続人ひとりにつき、600万が控除と設定されています。

つまり子どもが二人いれば、法定相続人は配偶者と子ども3人になるため3000万+600万×3=4800万が控除対象となります。

財産が5000万あったとしたら、5000万−4800万=200万が課税対象になります。

それでは、亡くなられた方の配偶者がすでに亡くなられていている場合はどうでしょう。
法定相続人は子ども二人だけになるので、3000万+600万×2=4200万が控除対象となります。
財産が5000万ならば、5000万−4200万=800万が課税対象になります。

亡くなられた方に、子どもがいない場合は、3000万+600万×1=3600万が控除対象、財産が5000万あるなら、1400万が控除対象となります。

つまり、相続される方は、誰でも3600万は控除を受けることができるのです。

3600万以上でも、申告すれば控除があるものも


相続する財産が3600万以上あるから、相続税が必ず発生する・・というわけではありません。
じつは申告することで、控除金額が増えるものもあります。
主に遺族が生活を続けていくための特例措置になるのですが、いくつかご紹介しましょう。

配偶者の特例


配偶者には特別に「配偶者控除」という特例が設けられています。
配偶者に限っては、法定相続分(亡くなられた方の半分が、配偶者の法定相続分になります)と1億6000万円と比べて、高い方の金額を控除額として申請することができるのです。

先ほど、3600万が申告の線引き金額と記載しましたが、それはあくまで目安。
申告せずに、控除できる金額は3600万までなのですが、「配偶者控除」を受ける場合は特例になるので、必ず相続税の申告が必要です。

つまり申告すれば、配偶者に限って、1億6000万までは控除対象になるのです。(子どもの場合は対象になりません)
例えば夫を亡くした未亡人などが、これによって大幅に減税対象になり、その後の生活を無理なく過ごすことができる場合があります。

小規模宅地等の特例


亡くなった方と同じ生計でくらしていた親族が、くらしていた宅地(事業用居住用を含む)を遺言や相続によって取得した場合は、軽減特例を受けることができます。
宅地の広さによって減額される金額が変わりますので、詳しくは税理士などに相談しましょう。
家族経営をしている商店などが対象になることが多いようです。

そのほかの特例


ほかにも相続人が未成年の場合の「未成年者の税額控除」、85歳未満の障害者の場合の「障害者の税額控除」、亡くなった方が10年以内に相続を受けていた場合の「相似相続控除」などがあります。

また、「農地の納税猶予の特例」「特定計画山林の特例」など、相続する土地によって特例があることや「相続財産を公益法人などに寄付した場合の非課税の特例」などもあります。
亡くなった方の財産に該当するものがないかどうか、調べる注意が必要です。

相続財産が少なくても、こんな場合は要注意!


相続財産が控除金額より少なく、極端な話0円でも、申告しないといけない場合があります。
それは贈与があった場合です。
贈与とは、現金だけでなく、土地や家屋など財産とみなされるものを他人に譲ること。
これを相続人が先に受けている場合、相続時の申告が必要になることがあるのです。

最近では生前贈与(死亡する前に、親族に贈与を行うこと)を行う人も増えています。
うっかり申告漏れ、追徴課税ということがないように注意しましょう。

死亡三年以内の贈与


財産を贈与すると、贈与税というものがかかりますが、年間ひとり110万までは基礎控除されることになっています。
そのため亡くなる前に、毎年、控除内で生前贈与される方が増えているのですが、亡くなった日から3年以内の贈与は、すべて「相続」として合算されます。

例えば、毎年100万、亡くなられた方から贈与を受けていた場合、3年×100万=300万は、課税価格にプラスされます。

相続時精算課税に関わる贈与


贈与税には、2500万までは非課税になる「相続時精算課税」という制度があります。
これは贈与を受けた時点で税金が優遇され、例えば子供の家屋購入の援助や孫の入学金など、子供や孫に大きなお金がかかるときに、この制度を使われることが多いようです。

ただし、まったく税金が必要ないわけでなく、亡くなって相続が発生したときに相続の金額にプラスして「課税価格」として計算せねばなりません。
「相続時精算課税」とは、言ってみれば税金を納めるのを先延ばしにしているような制度なので、生前に贈与を受けていた場合は、課税価格に合算する必要があります。

申告することで相続税が減税されることもある


相続性の申告には、期限があります。相続開始日(亡くなられた方が死亡したことを知った日から10ヶ月以内)に申告しないといけません。
その申告日を過ぎても、特例をうけることは可能ですが、手続きが煩雑になってしまいます。

居住地によっては税務署より「相続税のおたずね」という封書が届く場合もあるようですが、ご自分が相続人になった場合は、まずは自分で簡単に計算してみて、複雑な場合だったり、心配な場合は税理士に相談してみましょう。



はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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