■お役立ちコラム特集
2021/07/05
成年後見制度の手続きの流れ&必要書類や申し立て解説
認知機能が低下すると、日常生活時などにおいて必要な法的な手続きができなくなります。
そのような問題を解決する「成年後見制度」があります。
今回は「成年後見制度」の理解を深めるとともに、手続きの流れと必要種類について解説します。
成年後見制度とは
成年後見制度は、認知症などにより認知機能が低下し、契約などの法的な手続きができない人に対して、家庭裁判所がサポートするための人を選びその本人を保護する制度です。
以前まで、認知機能が不十分な人は、家庭裁判所が「禁治産者」として宣告を行い保佐人が選任されていました。
「禁治産者」の人は、重要な財産行為などは保佐人の同意がないと完全に有効と言えないなど制限されていたのです。
しかし、「禁治産者」と宣告されると、その事実が本人の戸籍に記載されるため、社会的な偏見や差別を生むなどの問題が生じました。
上記のような問題を解決するために、平成12年に介護保険制度とともに成年後見制度ができました。
成年後見制度は2つの種類がある
成年後見制度は下記の2つの種類に分けることができます。
・法定後見制度
・任意後見制度
法定後見制度とは
法定後見制度とは、認知症などの影響により、認知機能が不十分になった場合に使用します。
法定後見制度は親族などが、家庭裁判所に対して後見人の選任申し出を行います。
家庭裁判所はその申し出に対して成年後見人を選びます。
多くは親族がなりますが、親族が不在、親族がいても問題となる可能性が高いなどの場合は、法律の専門家である弁護士や司法書士、また社会福祉士などが選出されます。
上記のように、法定後見制度は、本人の認知能力の鑑定、家庭事情の聴取などが必要です。
任意後見制度とは
任意後見制度とは、本人の判断能力がある間に、もし将来認知症などになってしまい、自分自身の判断能力が低下してしまった場合に備えて、事前に後見人となる人を決めておく契約のことです。
任意後見制度にて後見人を依頼する本人を「委任者」といい、後見人になることを引き受ける人のことを「任意後見受任者」と言います。
任意後見制度は、制度自体と利用するか、誰を任意後見人として指名するか、また依頼する内容など全て自分自身で決めることができます。
そのため、もし認知症などで判断能力が低下してしまっても、今までの生活を継続することができるメリットがあります。
法定後見人制度の流れ
上記で成年後見制度について詳しく解説しました。
ここでは、実際に成年後見制度を利用する際の手続きと必要書類について解説します。
まず法定後見人制度の流れについて解説します。法定後見人制度の流れは大きく下記のようになっています。
1.相談する
2.申し立てを行う
3.審理が行われる
4.審判が行われる
5.後見の登記がされる
6.後見人の仕事が開始される
1.相談する
本人の現在の認知能力や、成年後見制度を利用することになった流れなどを検討して、法定後見制度・任意後見制度のどちらを利用した方が良いのかを決めます。
2.申し立てを行う
相談をした結果、法定後見制度の利用が決まったら、必要書類を準備して家庭裁判所へ提出します。
必要書類は下記の通りです。
・医師の診断書
・戸籍謄本
・住民票
・後見登記されていないことの証明書
3.審理が行われる
申し立ての受付が終わったら、家庭裁判所で「審理」が始まります。
この「審理」というのは裁判官が申し立て時に提出された書類を確認し、本人や周りの状況を総合的に判断します。
審理には下記のような内容が行われます。
・本人への面接
・申立人や後見人候補者への面接
・親族への意向確認
・場合によっては医師による鑑定
4.審判が行われる
審理された結果や提出された資料などを総合的に判断して裁判官が決定する手続きのことを「審判」と言います。
審判された内容を書面化にされたものを「審判書」と呼ばれ、成年後見人に送られます。
成年後見人は、審判書が届いてから2週間以内に不服がある場合は「不服の申立て」を行うことができます。
2週間以内に不服申立てがなければ、後見開始の審判の効力が確定されます。
5.後見の登記がされる
審判の内容が確定すれば、その内容を登記してもらう必要があります。
登記してもらうために裁判所から法務局へ登記の依頼を行います。
上記のような一連の登記のことを「後見登記」といい、後見人の名前・権限などの情報が記載されています。
「後見登記」は法務局へ依頼後、約2週間で完了します。完了されたら後見人に対して登記番号が通知されます。
後見人は通知された登記番号を法務局へ持っていき、「登記事項証明書」を取得します。
この「登記事項証明書」を取得すれば、本人の財産の調査・預金口座の解約などを行うことができます。
6.後見人の仕事が開始される
後見人の仕事が開始されたら、1ヵ月以内に裁判所に対して、本人の財産を調べて、「財産目録」という財産の一覧表を作成し提出する必要があります。
後見人はその他にも、金融機関や役所への届出などさまざまな仕事を行う必要があります。
任意後見制度の流れ
法定後見人制度の流れの次は任意後見制度の流れについて解説します。
法定後見人制度は下記のような流れになります。
1. 任意後見受任者を決定する
2. 任意後見人に行ってもらうことを決める
3. 任意後見契約を結ぶとともに公正証書を作成する
4. 認知能力が低下したら「任意後見監督人選任の申立て」を行う
5. 任意後見監督人が選任されたら任意後見人の仕事を開始する
1.任意後見受任者を決定する
任意後見人になるに必要な資格はありません。
そのため、親族・友人・弁護士などの多くの人が結ぶことができるとともに、一人でなく複数人に対して結ぶこともできます。
しかし、任意後見人は下記のような人はなれません。
・未成年者
・家庭裁判所で免ぜられた者
・破産した者
・行方が分からない者
・本人に対して訴訟をした者、又その配偶者と直系血族
・不正な行為など任意後見人の任務に適しない事由がある者
2.任意後見人に行ってもらうことを決める
任意後見受任者が決定したら、次に行ってもらうことを決めます。
もし、自分の認知能力が低下した場合、してもらうことなどは契約に関わる当事者同士の自由な契約となっています。
そのため、自分自身のライフプランに合わせて決めます。
3.任意後見契約を結ぶとともに公正証書を作成する
本人との話し合いで任意後見契約の内容が決定したら、本人の住んでいる一番近い公証役場に行き、「公正証書」を作成します。
「公正証書」は公証人役場で作られる公文書のことで、高い証明力を持っており、公正証書に記載していない任意後見契約は無効になります。
4.認知能力が低下したら「任意後見監督人選任の申立て」を行う
認知症などにより判断能力の低下がみられれば、任意後見契約を開始するため、本人の住所地の家庭裁判所に対して「任意後見監督人選任の申立て」を行います。
「任意後見監督人選任の申立て」を行える人は下記になります。
・本人
・配偶者
・四親等内の親族
・任意後見受任者
5.任意後見監督人が選任されたら任意後見人の仕事を開始する
家庭裁判所が本人の状態や任意後見受任者の状態などを総合的に判断した結果、「任意後見監督人」を選任します。
選任された「任意後見監督人」は任意後見人がしっかりと事務を行っているのかを監視し、その結果を家庭裁判所に報告を行います。
選ばれた後見人は、財産目録の作成、金融機関・役所への届出などさまざまな仕事を行う必要があります。
まとめ
今回は成年後見制度の手続きの流れと必要書類・申し立てについて解説しました。
成年後見制度は、「法定後見制度」と「任意後見制度」に分けることができます。
この2つは認知能力が低下してから後見人を選任するのか、もしくは認知能力が低下する前に後見人を選任するのかという違いがあります。
それぞれの手続きや必要な書類は異なるため、もし検討する場合は今回の記事を参考にしてください。
はじめての相続編集部
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