■お役立ちコラム特集
2021/07/05
借地権の相続で知らないとまずいこと|評価額に注意
適用対象や評価額など、知っておかないと相続においてトラブルになりかねないので注意が必要です。
今回は、借地権とはどのような権利なのか、借地権の相続で知っておかなければならない点や注意点を解説します。
借地権とはどのようなものなのか?
家や建物を建てようとする場合、基本的には土地も一緒に購入します。
マイホームを持っている方なら、家と土地を合わせた金額を掲示されて、合計金額を支払っているでしょう。
これは所有権というもので、建物も土地も自身で保有しているということです。
ほとんどが所有権付きで売買されますが、借地権付きという場合もあります。
この借地権とは土地を借りて建物を建てるということですので、土地を持っている地主さんが土地の所有をしているという状態です。
所有権と借地権の違いは、土地を自身が保有しているのか他者が保有しているのかという点です。
借主が借地権付き建物を購入するメリット・デメリット
人はメリットがなければ動きません。
全て自身のものとなる所有権の方が、メリットとしてはありそうです。
借地権付きで建物を購入する場合のメリットとはどういったものがあるのでしょうか。
メリットとして、土地の税金がかからないという部分があります。
土地にかかる税金として固定資産税、都市計画税がありますが、こちらは地主さんに支払い義務が生じるので払わなくていいということです。
払うのは建物の税金だけでいいということですので、お得感はあります。
次の部分はメリットにもデメリットにもなりますが、建物の値段は所有権付きの建物と比べるとかなり安く売られています。
安い買い物ができるということですが、その代わりデメリットとして家賃ならぬ地代がかかるという部分が発生するのです。
こちらは毎月支払いが生じますので、建物のローンと合わせて支払わなければなりません。
そして、借地権付きで購入すると、増改築したい場合に地主の許可が必要となる場合があります。
借地権の種類
借地権という言葉だけを聞けば、1種類しかないと思うかもしれませんが、平成4年に法律が改正されたことにより、現在は2種類の借地法が存在しています。
一般的には、新借地法、旧借地借家法です。
改正された理由は、新・旧の借地法は借地権を持つ者が守っているという趣旨が色濃くあり、地主とのトラブルの元だったからです。
そしてトラブルが借地権を使った取引を少なくさせていったのです。
現在はお互いの便宜を図りやすく改正されていますが、依然として旧借地法の契約も多く残っています。
この理由として、旧借地法で契約した際に更新しても新借地借家法には切り替わらないためです。
今後契約する際には、どちらの法律で契約されているのか確認する必要があります。
借地権の適用対象は?
借地権は土地を借りて建物を所有する場合において適用されます。
これは当たり前です。
建物も建てずに土地だけを借りるより、売買した方がいいでしょう。
借地権が適用対象外となる場合、親族間で話をして建物を所有者以外で建てて住んでいる際は適用にはなりません。
また、一時的に使用することを前提とした借地権契約では一部しか適用されないので、注意が必要です。
借地権のトラブル
上記で少し触れていますが、借地権はやはりどうしてもトラブルが多いです。
その理由はやはりお金が絡むからです。
地代、更新手数料、建て替え時の承諾料など、数え上げればきりがないという状況になります。
しかし事前にどういったトラブルが多いのか知っていれば、対処もしやすいでしょう。
まずは地代について考えていきます。地代は明確な基準があるわけでもなく、目安的なものしかありません。
ここは双方で話し合って納得できる金額で折り合いをつけるしかないのが現状です。
更新時の手数料もトラブルが多くあります。
こちらも地代と同じですが、明確な基準が法律で定められているわけではないので、双方でしっかりと話し合う必要があります。
基本的に契約期間が長いので、借地権者と地主との信頼関係に委ねられる部分があるのです。
建て替え時にも承諾してもらう際、承諾料など金銭が絡むのでトラブルを生み出しています。
こちらも契約期間が長いので、双方の話し合いが大切です。
お金についての決まりごとがあれば、ここまでトラブルも多くないのでしょうが法律で定められているわけではないのでトラブルとなってしまうのです。
双方で納得のいく形で収めるという方法でしか現状解決方法はありません。
借地権の歴史とは? 現在の借地権
借地権はどのような歴史を辿ってきたのでしょうか。
元を辿っていくと、所有権が絶対的に強いという理由に突き当たります。
借りる権利より所有する権利が優遇されて、所有者は借主を追い出すことも容易にできたという事実です。
明治29年に制定された民法が所有者絶対の原則としたものが、問題を引き起こしていきます。
戦争時に土地問題で不安を抱える軍人・兵士が安心して出兵していけるように法改正が行われて旧借地法・旧借家法が生まれてきたのです。
しかし戦後の混乱期に旧借地法・旧借家法を利用した契約は多数あり、しかも契約年数が長いので問題は後々に持ち越しになったということになります。
こうして新借地借家法へと改正されて現在に至っていますが、それでもトラブルが絶えないという部分では人同士の関係性は変わらないということを教えてくれているようです。
では旧借地法・旧借家法と新借地借家法について内容を解説していきます。
旧借地法・旧借家法
旧借地法は30年の存続期間で更新後は20年となっています。
これらの期間は堅固建物か非堅固建物かによって変わるので注意が必要となります。
借地権については当事者同士で取り決められなかった場合、初め60年更新後は30年と定められているので長い期間です。
この中にも建物を再築する場合において、地主が異議ありか無しで期間は変わり、堅固建物(石造・土造・レンガ造・コンクリート造・ブロック造等)では許可ありで本来の期間となります。
ない場合は従来通りの期間です。
非堅固建物(木造など)については、ある場合本来の期間で終了しない場合は従来通りの期間です。
更新後についても、再築する際地主の異議がある場合堅固建物・非堅固建物は本来の期間となります。
ない場合は堅固建物・非堅固建物で従来通りの期間です。
この他にも注記がありますので、詳しくは法律事務所にお問い合わせください。
新借地借家法
新借地借家法では法定更新される普通借地権と法定更新がない定期借地権があり、堅固建物と非堅固建物の区別は無くなっています。
建築物の存続期間として、一律で三十年と決められており、この期間より長く存続期間を当事者間で設定している場合はこの契約が優先されます。
存続期間が満了して契約更新をする際は初め20年、次回以降は10年毎に更新となるので以前の旧借地法・旧借家法のように長い期間ではなくなりました。
では、「普通借地権」についても詳細を見ていきましょう。普通借地権は法定更新が可能な契約です。
では定期借地権とはどのような内容となっているのか、次に解説していきます。
定期借地権
新借地借家法で借地権を契約する場合、多くが定期借地権です。定期借地権は法定更新ができないので、期間が満了した場合土地を更地に戻した上で地主に返さなければならないというルールがあります。
50年という基本的な期間があり、この期間以降の更新や建物買取請求権は認められていないので確認して契約する必要があるでしょう。
さらに定期借地権としては三種類あるので、こちらも合わせて確認していきます。
一般定期借地権・建物譲渡特約付借地権・事業用定期借地権
一般定期借地権は、期間を50年以上で設定され上記でも記載しましたが期間が満了となった場合は、更地にして地主に返さなくてはなりません。
建物譲渡特約付借地権は、一般定期借地権より期間が短く30以上からです。
定期借地権の特徴的な部分として、期間が満了した時に、地主が建物を買い上げる契約になっているという点です。
地主に建物を譲渡することで、借地権は消滅となります。最後に事業用定期借地権は、事業としての建物所有を目的としています。
契約期間は10年~50年未満となっており、期間満了の際は一般定期借地権同様に建物を解体した上で地主に返さなくてはなりません。
契約は切り替えた方がいいのか
現在、旧借家法・借地法で契約している場合、新借地借家法に切り替えた方がいいのかという疑問があります。
新借地借家法に切り替え、定期借地権の場合土地を将来的に明け渡す必要が出てくるので注意が必要です。
無理に切り替えをしなくても、旧借地法・旧借家法での契約がメリットになっている場合切り替える必要はありません。
地主がそういった話を切り出してきたのなら、どちらの方がメリットとなるのかを考えた上で結論を出すとよいでしょう。
まとめ
旧借地法・旧借家法と新借地借家法について解説してきましたが、借地権については現在も双方が入り混じった状況です。
契約する際にはどちらが適用されるのかよく確認をした上で契約し、相続が生じた場合もどちらの法律の適用化にあるのかしっかり確認して手続きを行うことが重要です。
はじめての相続編集部
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