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■お役立ちコラム特集

2021/07/05

相続税の控除や加算についての制度の概要を解説

多額の財産がある場合には、相続税がかかることが想定されます。
これから相続対策をたてるような場合には、相続税に関する控除の制度を上手に使い、加算には気を付けなければいけません。
今回は、相続税の控除や加算についての制度の概要について解説します。

相続税の概要


相続税とは、相続などによって財産の移転があった場合に、相続人・受遺者に対して課される税金のことをいいます。
その機能は、貧富の差を拡大しないように、富を再分配することにあります。

どのような相続についても相続税がかかるわけではなく、一定の金額以上の遺産がある場合に相続税が課されます。
相続税は、相続人・受遺者が相続を開始したことを知ったときから10ヶ月以内にする必要があり、現金での一括納付が原則になっています。

そのため、納税が必要な人は、事前にきちんと納税できるかどうかをはじめ、相続税に関するプランはきちんと立てておいた方がよいと言えるでしょう。

相続税の控除の制度


ではその相続税には、どのような控除の制度があるのかを確認しましょう。

基礎控除


相続税の概要のところで、一定の金額以上の遺産がある場合に相続税が課される、とお伝えしました。
その基本的な仕組みとして基礎控除というものを確認しておきましょう。

基礎控除はどのような相続においても控除されるもので、この基礎控除を超える遺産がない場合には相続税の申告も納税も必要がありません。
その金額は、以下の通りです。

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)=基礎控除額

つまり、相続人が妻・子2人の合計3人の場合には、以下の金額が基礎控除額となります。

3,000万円+(600万円×法定相続人3人=1,800万円)=4,800万円

古い資料ですと、5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)としているものがありますが、平成27年1月1日以降の相続については、上記の金額に改正されているので、注意しましょう。

なお、相続によって法定相続人の相続分に違いがありますが、ここでの法定相続人はどのような割合で相続をするかにかかわらず人数で計算をすることになります。
養子も法定相続人になるのですが、基礎控除額の計算においては、以下の基準で法定相続人として計算可能です。

・ 子のいない夫婦の場合は2人まで
・ 子のいる夫婦の場合は1人まで

これは、養子をたくさんすることによって課税を回避することを防ぐ目的です。

配偶者控除


相続人の配偶者については、1億6,000万円まで、もしくは法定相続分までであれば配偶者控除が認められています。
これは、相続人の中でも配偶者に関しては、以下の理由から、多額の控除が認められています。

・ 老後の生活を保障する
・ 同じくらいの年代であることが多く次の相続までの期間が短い
・ 被相続人の財産には配偶者が一緒にすごしてきた貢献があるのが通常である

配偶者控除を受けるためには、相続税申告が必要で、相続税申告までに遺産分割が終わっていることが必要です。

遺産分割協議がととのわず、調停・審判などに進んでしまって、10ヶ月の申告期間内に間に合わないような場合には、一旦控除なしで申告を行い、後に遺産分割が終わった段階で更正の請求を行って、納めすぎていた金額を取り戻すことが可能です。

未成年者の税額控除


相続人が未成年者である場合には税額の控除があります。
未成年者については、満20歳になるまでの年数1年につき10万円を乗じた金額が控除されます。

1年未満の期間については切り上げて計算をします。
こちらも古いものですと、10万円ではなく6万円と表示されているものもありますが、平成27年1月1日以降の相続については10万円で計算することになっています。

障害者の税額控除


障害者については生活を維持するのに配慮する目的で、税額について控除の制度があります。
障害者について、満85歳になるまで、1年につき10万円を乗じた額を控除することができます。

障害の程度が重く特別障害者に該当する場合には、1年につき20万円を控除します。
1年に満たない期間については未成年者控除と同様に切り上げて計算をします。
障害者の税額控除については、満85歳までの金額を控除するので、控除の金額だけでは税額を引ききれないケースがあります。

この場合には、障害者を扶養する義務がある人の相続税額から差し引くことも可能です。
「障害者」は次のような人があてはまります。

・ 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされた人で重度と判定されていない人
・ 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人で2級または3級とされている人
・ 身体障害者手帳に3~6級と記載されている人
・ 戦傷病者手帳の交付を受けている人で恩給法所定の第4~6項症とされている人
・ 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定による厚生労働大臣の認定を受けている人
・ 常に寝たきりで、複雑な介護が必要として市区町村長等の認定を受けている
・ 65歳以上の人で、知的障害・身体障害に準じるものとして市区町村長の認定を受けている人
・ 特別障害者とは次の場合をいいます
・ 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
・ 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター若しくは精神保健指定医の判定により知的障害者とされ、重度と認定された人
・ 精神障害者保健福祉手帳に1級と記載されている人
・ 身体障害者手帳に1級または2級と記載されている人
・ 戦傷病者手帳の交付を受けている人で恩給法の第3項症までとされている人
・ 常に寝たきりで複雑な介護が必要でより重度であると市区町村長等に認定されて人
・ 65歳以上で障害が重度の知的障害・身体障害1級・2級に相当すると認定を受けている人
・ 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定による厚生労働大臣の認定を受けている人

数次相続控除


夫婦と子の相続を想定してみましょう。

夫婦にあまりにもの年の差が離れていなければ、夫婦の一方が亡くなり、あまり期間が開かずにもう一方が亡くなることがあります。
これによって子は夫婦の一方・そしてもう一方の相続を繰り返すことになります。(数次相続)

相続が短期間に何度も繰り返す場合に、相続税の負担が繰り返すのは大変ですので、10年以内に生じた数次相続については税額の控除の規定が置かれています。
控除の内容は非常に複雑なのですが、前回の相続で発生した相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した額を控除することになっています。

外国税額控除


資産の所在地が外国にある場合や、日本国籍ではなくても日本に住所があり資産もあるようなケースでは、外国の相続税に関する法律と、日本の相続税に関する法律を二重に課される可能性があります。

このような場合には、外国で課された相続税の一定額を控除することができる外国税額控除があります。
控除される税額は、以下の2つのうち少ない方の金額です。

・ 外国で支払った相続税に相当する税額
・ 相続税の額×(海外にある財産の額÷相続人の相続財産の額)

割加算


控除ではなく加算される場合もあるので注意しましょう。
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の人である場合には、相続税が2割加算されます。

一親等の血族とは、具体的には父母・子がこれにあたりますので、兄弟姉妹・甥や姪が相続する場合や、相続人以外の人が遺贈で財産を受け取る場合についてはこれに該当します。

よく、孫を養子にして相続をさせる手法で、孫に遺産を渡すことがあるのですが、孫については仮に養子にしても2割加算されることになりますので注意しましょう。

まとめ


今回は、相続税の控除・加算の概要を解説しました。
相続税には具体的事情に配慮した様々な控除や加算の制度があります。
上手に利用して、相続税を低く抑えるように、税理士と相談をしながら相続税対策をすすめていきましょう。



はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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