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■お役立ちコラム特集

2021/07/05

成年後見人の費用はいくら?選出する経費・専門家に依頼する費用も紹介

成年後見人を選任する場合には、そのための手数料を負担しなければならず、また、専門家に依頼する場合には専門家に対する費用も併せて負担する必要があります。
とはいえ、どの程度の費用がかかるのか、およそ見当もつかないという方も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、成年後見人を選任する際にかかる諸費用をご紹介します。

成年後見制度とは


成年後見制度とは、精神上の障害により判断能力が十分でない人を保護するための制度です。
たとえば、認知症を患っている高齢者が財産を所有している場合、本人では十分に財産を管理することができません。

そのため、第三者に騙されて財産を手放してしまうといった危険性があります。
このようなことがないように、本人に代わって財産を管理したり、本人に効果が及ぶ行為を管理したりする人を選任するための制度が成年後見制度です。
成年後見制度は、以下の2つの種類に分かれています。

法定後見制度


法定後見制度とは、本人の生活に関わるさまざまな決定や判断などの能力に問題が起きた場合に、本人や近親者による申立てに基づき、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
選任される者は、本人の判断能力の程度に応じて、成年後見人と保佐人、そして、補助人に分かれており、判断能力の欠如が重度である場合には、成年後見人が選任されることになります。

任意後見制度


任意後見制度とは、言葉のとおり、裁判所を通さずに任意で後見人を選任する制度です。
具体的には、将来的に自身の判断能力に問題が生じた場合に、自身に代わって財産管理や一定の行為などを行う後見人を決めておく制度です。

法定後見制度を利用するためには、あくまで本人の判断能力に問題が生じたことが条件となりますが、任意後見制度では、将来に備えてあらかじめ後見人を選んでおくことができます。
任意後見制度を利用するためには、自らが選んだ後見人との間で任意後見契約を結ぶことが必要です。

成年後見人の選任にかかる費用(法定後見制度)


裁判所に成年後見の申立てを行う場合に必要となる主な費用は、申立てに必要な費用と鑑定費用、そして、成年後見人に対する報酬の3種類です。

申立てに必要な費用


成年後見を申立てる際に提出する申立書には、3400円分の収入印紙を貼らなければなりません。
また、成年後見人が選任されると、その旨の審判書を本人に郵送したり、法務局に登記を嘱託したりすることが必要になるため、申立時に3270円分の郵便切手を予納することも必要になります。

鑑定費用


申立時には、医師が作成した診断書も併せて提出しますが、これとは別に鑑定が実施されるケースがあります。
鑑定とは、医学的に本人の判断能力を判定することをいい、裁判所が必要に応じて医師に鑑定を依頼するケースがあるのです。
この場合、鑑定費用として10万円~20万円程度が必要になります。

鑑定費用については、裁判所の判断により実際に鑑定を行うときにはじめて必要となる費用ですので、鑑定が実施されない場合には必要ありません。
また、鑑定費用は本人負担である旨の審判がなされた場合には、本人の財産から精算することができます。

成年後見人に対する報酬


裁判所により成年後見人に選任された者は、職務の対価として報酬を支払うよう裁判所に申し立てることが可能です。
この場合、裁判所は報酬額を決定する旨の審判を行い、その報酬は成年被後見人の財産から支払われることになります。

報酬額の具体的な目安は、月額2万円となっています。
もっとも、成年後見人が管理を任される財産が高額となる場合、業務の負担も重くなることが通常です。
そのため、財産額が1000万円を超え5000万円以下の場合は月額3万~4万円、財産額が5000万円を超える場合は月額5万~6万円となります。

その他に成年後見人の具体的な仕事内容において、特別対応が困難な事情があったような場合には、基本となる上記報酬額の50%に相当する額を上限として、報酬が加算される場合もあります。

その他


以上のほか、申立時に提出する診断書の作成費用として数千円程度、住民票と戸籍抄本の取得費用として数百円程度、「登記されていないことの証明書」の発行手数料として300円分の収入印紙が必要となります。
ここでいう「登記されていないことの証明書」とは、後見記録等ファイルに成年被後見人として記録されていないことを証明するもので、申立時に必要となる書類です。

専門家に申立手続を依頼する場合の費用


成年後見の申立ては、本人で対応することも可能ですが、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することも可能です。

弁護士に依頼する場合


弁護士に依頼する場合に必要となる費用は、原則として20万円です。
もっとも、一律にこの金額で決まっているわけではなく、事務所によって金額が異なることもあります。

成年後見を申立てるためには、成年被後見人に係るすべての財産を調査することが必要になるため、所有財産が多くなればなるほど、弁護士の業務負担も重くなることが通常です。
所有財産が多く、業務量が通常より多くなると想定されるような場合、弁護士費用が20万円よりも高額になる可能性があります。

司法書士に依頼する場合


司法書士に依頼する場合に必要となる費用は、7~8万円が相場となっています。
弁護士に依頼する場合と大きく異なるのは、弁護士が本人の代理人として申立てを行うことができるのに対し、司法書士にはそのような代理権が与えられていないということです。
そのため、司法書士はあくまで申立書の作成や書類収集を本人に代わって対応できるのみであり、申立て自体は本人の名前で行うことになります。
もっとも、裁判所での面談に同行してくれる場合もあり、その場合には、別途数万円の費用がかかることが多いようです。

成年後見人の選任にかかる費用(任意後見制度)


任意後見制度を利用する場合、後見人として弁護士や司法書士を自身で選び、その者との間で任意後見契約を公正証書で締結することが必要です。

弁護士に依頼する場合


弁護士に依頼する場合には、任意後見契約書の作成のみを依頼する場合と後見人の就任を依頼する場合の2通りが考えられます。
任意後見契約書の作成のみを依頼する場合、必要となる弁護士費用は原則として20万円です。
また、これに加え、公正証書作成手数料として数万円程度、登記費用として数千円が必要になります。

後見人の就任を依頼する場合、上記の費用に加え、後見人としての業務に対する報酬を負担する必要があり、5万円程度であることが一般的です。

司法書士に依頼する場合


司法書士に依頼する場合についても、依頼の対象が2通りあることは弁護士に依頼する場合と同じです。
任意後見契約書の作成のみを依頼する場合、必要となる費用は10万円が相場となっています。
これに加え、公正証書作成手数料と登記費用が必要になるのは、弁護士に依頼する場合と同じです。

後見人の就任を依頼する場合、上記の費用に加え、後見人としての業務に対する報酬を支払う必要があります。
報酬額の相場は3万円程度です。

まとめ


成年後見人の選任には、任意で選任する任意後見制度と裁判所に選任してもらう法定後見制度があります。
前者が予防的に後見人を選任しておく制度であるのに対し、後者は実際に判断能力に問題が生じた場合に後見人を選任する制度であるという違いがありますので、注意が必要です。

成年後見人を選ぶ際には、本人が主体となって手続きを行うか、または、専門家に手続きを依頼するかによって、費用も大きく変わってきます。
一部の費用は本人の財産から精算することも可能ですが、あらかじめ費用の目安を把握しておくことで、そのような事態になったときにも落ち着いて対応することが可能です。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
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