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■お役立ちコラム特集

2021/07/06

相続にまつわる税法と民法の違い|正しく理解して損を減らす

相続の世界において「民法。と「税法」には大きな違いがあります。
民法が定めている規定と税法が定めている規定に多々違いがあるのも事実であり、そのために混乱する方も多いのではないでしょうか。
ここでは、民法と税法の違いについて詳しく解説していきます。

相続財産における違い


まずは相続財産における民法と相続に関わる税法(以下、相続税法)の確認をしましょう。

・民法
相続人は被相続人の財産に属した権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に属した者は対象外となる。

・相続税法
無制限納税義務者は相続・遺贈で取得した財産が対象となる。

以下、それぞれの違いを解説します。

養子縁組は何人でも可能


民法と相続税法の違いでまず知っておかなければならないのが、養子についてです。
そもそも養子とはどんな制度なのでしょうか。
具体的には、養子縁組をすることによって「血縁関係のない人同士の間に、親子と同じ関係を成立させる法律のこと」で、血のつながりのある血縁関係とは別に法律によって親子関係を成立させることをいいます。

相続における養子の扱いは、実の子と同じように扱われ、法定相続人になることができ相続できる割合も同じなのです。

ここで気になるのが「何人まで養子と認めることができるのか」という点です。
相続税の計算をする際には、基礎控除の金額が法定相続人の数によって多くなる点が重要なポイントとなります。
つまり、法定相続人の数が多ければ多いほど、支払う相続税は少なくなるということです。
では、5人、10人と無制限に養子縁組をして法定相続人の数をどんどん増やしていけば、相続税を減らすことができるのでしょうか。

民法で定められた養子とは


民法では、養子縁組の数に限度を設けていません。
つまり、何人でも制限なく養子縁組をすることで、養子の数を何院にでも増やすことができる仕組みになっています。

相続税法で定められた養子とは


相続税法でも民法同様、養子縁組で何人でも養子にすることができます。
ただし、相続税法においては、基礎控除が認められるためには養子の人数に制限があるので、養子を無限に増やして相続税を限りなく減らすことはできません。
では、相続税法で認められている養子は何人まで基礎控除が受けられるでしょうか。
実は、実子がいるかいないかで変わってきます。

実子がいる場合


亡くなられた方(被相続人)に実の子がいた場合は、基礎控除が認められる養子は1人まで、と決められています。
たとえ養子が2人以上いたとしても、基礎控除が認められるのは1人だけと決められています。

実子がいない場合


亡くなられた方に実子がいない場合は、基礎控除が認められる養子は2人までです。
仮に養子が5人いても、基礎控除が認められるのは2人だけと決められています。
民法では「養子の人数に制限なし」ですが、相続税法では「基礎控除が受けられる養子の人数に制限がある」という違いがあります。

相続放棄した場合の法定相続人


次は相続放棄について、民法と相続税法に違いがあるのか見ていきましょう。
相続財産には以下のような種類があります。

・積極財産(プラス財産)
・消極財産(マイナス財産)
・相続財産ではない財産

相続人がプラスの財産もマイナスの財産もその他の財産も必ず相続しなければならないということになると、膨大な相続税が必要になったり、その逆に亡くなられた方が生前作った借入金などで、多額の負債を抱えたりすることも想定されます。
そのような事態を防ぐために「相続放棄」という制度があるのです。

相続放棄は、相続が開始された日(故人が亡くなられた日)から3か月以内に家庭裁判所に申請することで、その相続を放棄することができます。
しかし、マイナスの財産だけ放棄するということができないため、相続放棄の申請をしたら「プラスの財産」も「マイナスの財産」もすべて放棄しなければなりません。
では、相続を放棄した場合はどうなるのでしょうか。法定相続人は下記の順位で相続の権利が引き継がれていきます。

第一順位 子ども(直系卑属)・配偶者
第二順位 親(直系尊属)
第三順位 兄弟姉妹

相続放棄において民法と相続税法で扱いが違う点について、事例を用いて解説します。

事例


4人家族(父・母(すでに他界)・兄・妹)の父が突然多額の借金を残して亡くなってしまい、家族に相続が発生しました。
配偶者である母はすでに他界しているので、第一順位である兄と妹が法定相続人となり、プラスの財産もマイナスの財産もすべての財産を相続することになります。
ですが、父には多額の借金があり兄と妹は相続を放棄することを決めました。
すると、法定相続人である第二順位の(故人の)親となりますが、父母(兄・妹から見て祖父母)はすでに亡くなっていました。
そこで、第三順位の(故人の)兄弟姉妹(兄・妹から見ておじおば)へと相続が移り、法定相続人は4人になりましたが、ここで「民法」と「相続税法」との規定の違いが生じます。
養子縁組と同様で、肝になるのは法定相続人の人数なのです。
この事例では、最初亡くなられた被相続人の子どもの兄と妹の2人だけだったのですが、相続の順位が下がっていき最終的にはおじ・おばも加わって4人になっています。
これは民法上では認められますが、相続税法では認められません。
なぜかというと、「法定相続人の数が増える=基礎控除の額が増える=相続税が減る」ことになり、相続税法の基礎控除においては「相続放棄はなかった」とされてしまうのです。
そのため、この事例の場合、相続放棄をして相続人がおじ・おばを含めた4人に最終的になったとしても、基礎控除では法定相続人である兄と妹の2人分しか控除を受けることができません。

「みなし相続財産」の活用


相続とされる財産も税法と民法とで認識が違ってきます。
例えば、亡くなった方に対して死亡保険金がかけられていた場合、民法では受け取る人の固有財産とされて、相続財産にはなりません。
しかし相続税法では「みなし相続財産」となり、相続税の課税対象になってしまうのです。
相続対策を行うのであれば、この保険金の「民法」と「相続税法」との違いをよく理解し活用することが大切です。
これは、円満な遺産分割のための対策として行われることもよくあります。
また、死亡時に会社側から支払われる「死亡退職金」も同様です。

生前贈与の期間の違い


生前贈与もまた相続税法と民法とで異なるので誤解しやすいところです。
相続税法では、被相続人(亡くなられた方)から相続する人(財産をもらう人)が亡くなった日から3年さかのぼって、生前贈与を受けた場合はその財産を相続税の計算に加算することになっています。
贈与を受けてもそれが3年以上前ならば、相続税の計算に含めなくても良いのです。
一方、民法では3年ではなく10年でも20年でもさかのぼって計算しなければなりません。 
もし特別受益が認定されると、生前贈与を受けた相続人はすでに財産を先にもらっているものとされ、相続財産の取り分が通常より減ってしまうのです。

財産の評価時点の違い


相続税法と民法の違いで最もトラブルになるのが「遺産分割の際の財産評価」についてです。
相続税の計算上では「相続が開始された時点」での時価で相続財産の計算を行います。
ですが民法の計算上では「遺産分割の時点」での時価で相続財産の計算が行われるため、われる時価も異なるのです。
たとえば郊外の土地の計算であれば、実際の時価より少し安い「路線価」を使い相続税計算しますが、民法ではその時の実際の時価を使って計算することも少なくありません。
上場株式についても、相続があった日の株価以外に、前々月や前月株価の平均値、さらには当月株価の平均値を比べ、一番低い価格で計算していきます。
一方で、民法での計算は遺産分割時の時価が使われます。
その時々で時価の違いや、相続発生時と遺産分割時での時価の違いにより、民法と相続税法とで評価額に違いが生じ、このことが不公平感につながるためトラブルの原因になります。

ルールの違いに注意して申告しましょう


同じ相続でも、相続税法と民法では大きな違いがあります。
細々とした違いは多くあるので、全てを覚える必要はありません。
その都度確認しながら違いに注意して損のないような申告をしましょう。
よくわからないという方は、専門家にお願いするのもひとつの方法です。




はじめての相続編集部


情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。

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