■お役立ちコラム特集
2021/07/07
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遺贈にかかる税金をシミュレーション!基礎控除と計算方法
遺贈の場合、贈与税とは異なり相続税が発生します。
この時、相続税の計算方法は相続の場合と違う点があるので注意が必要です。
この記事では、遺贈にかかる基礎控除と計算方法について解説します。
遺贈とは
遺贈とは、遺言書によって、故人の財産の全部または一部を無償で譲り渡すことです。
遺言書を書いた故人を遺贈者、故人の遺言書によって財産を譲り受ける人を受遺者といいます。
受遺者は相続人だけではなく、相続人以外の個人または法人を指定することが可能です。
相続は法律で定められた相続人のみが財産を承継することが出来る権利ですが、遺贈によって相続人以外の人にも財産を譲り渡すことができます。
遺贈の種類
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。
包括遺贈
包括遺贈とは、遺産の全部または何分の1といった割合で遺産を包括的に指定して譲ることです。
包括遺贈の場合、相続と同じように負債の遺贈を受ける可能性がありますので、遺贈があったことを知った日から3ヶ月以内に、相続(遺贈)放棄の申述または限定承認の申述をすることができます。
特定遺贈
特定遺贈とは、所有していたマンションや土地といった不動産など、特定の遺産を受遺者に譲ることです。
特定遺贈は、指定されている遺産以外は相続しない為、負債の遺贈を受ける可能性がありません。
受遺者が遺産を受け取りたくない場合、遺贈を放棄することを相続人に書面などで伝えるだけでよく、家庭裁判所への申述は不要です。
遺贈の場合の相続税を計算
例を参考に、相続税を計算してみましょう。
【例】
被相続人A(故人)の遺産総額:1億6,000万円(金融資産1億5000万円・自宅土地建物1000万円)
法定相続人:妻B・長男C・次男D
受遺者:知人E
遺言書の内容:妻Bに金融資産6,000万・長男Cに金融資産5,000万・次男Dに金融資産4,000万円・知人Eに自宅土地建物1,000万円
基礎控除額の計算
はじめに、遺産総額から控除される基礎控除額を計算します。
基礎控除額内の遺産は相続税が非課税となります。基礎控除額の計算式は以下の通りです。
3,000万円+600万円×法定相続人の数
この式で出された金額が基礎控除額となり、遺産総額から差し引くことができます。
法定相続人でない受遺者は基礎控除額に含まれない
法定相続人とは基本的に相続人の配偶者および血族ということになっていますので、今回の場合、知人Eは法定相続人には含まれません。
法定相続人は妻B・長男C・次男Dの3人なので、3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除額となります。
相続税の課税対象となる遺産
遺産の総額から、基礎控除額を差し引いた金額が課税対象となります。
1億6,000万円-4,800万円=1億1,200万円
この金額が相続税の課税対象の遺産総額です。
相続税の計算
相続税の計算の手順は以下の通りです。
① 課税対象となった遺産総額1億1200万円を法定相続人の相続分毎に分けます。
この計算に、法定相続人ではない受遺者である知人Eは含めません。
・妻B 1億1,200万円×1/2=5,600万円
・長男C 1億1,200万円×1/2×1/2=2,800万円
・次男D 1億1,200万円×1/2×1/2=2,800万円
②相続税の速算表をもとに、相続税を計算します。
相続税の速算表とは、相続税を計算するための計算式のことを言います。
速算表は、国税庁のホームページに記載されています。
相続税の速算表
(法定相続分に応ずる取得金額)(税率)(控除額)
1,000万円以下 10% 0円
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
【平成27年1月1日以後の場合】
② ①で計算した相続分毎に分けた遺産に速算表をあてはめます。
妻B 5,600万円×30%-700万円=980万円
長男C 2,800万円×15%-50万円=370万円
次男D 2,800万円×15%-50万円=370万円
相続税の合計は、980万円+370万円+370万円=1,720万円となります。
納付する相続税の計算
被相続人Aの遺産を取得した割合に応じて、納付する相続税を計算します。
法定相続人ではない受遺者の知人Eも含まれます。
相続税額は、以下の通りです。
・妻B 1,720万円×6,000万円/1億6,000万円=645万円
・長男C 1,720万円×5,000万円/1億6,000万円=537万5000円
・次男D 1,720万円×4,000万円/1億6,000万円=430万円
・知人E 1,720万円×1,000万円/1億6,000万円=107万5000円
相続税の二割加算制度
被相続人の財産を取得した人が、被相続人の配偶者または一親等の血族以外の場合、相続税額を2割加算する制度のことを相続税額の2割加算といいます。
被相続人の兄弟姉妹が相続する場合も2割加算の対象です。
今回の例の場合、知人Eは被相続人の配偶者または一親等の血族以外ですので、知人Eが納付する相続税は、以下の通りです。
107万5,000円+107万5,000円×0.2=129万円
相続税以外にかかる税金
遺贈により不動産を取得した場合には、相続税以外にかかる税金があります。
不動産取得税
不動産を取得したときに、購入や贈与など、どのような原因かを問わずその取得した人が支払う税金のことです。
<不動産取得税が非課税となるケース>
・相続によって不動産を取得した場合
・包括遺贈によって法定相続人または祖法定相続人以外の受遺者が不動産を取得した場合
不動産所得税が課税されるケース
・法定相続人以外の受遺者が特定遺贈により不動産を取得した場合
不動産取得税は、固定資産評価額×税率によって求められます。
現在、土地と住宅用の家屋の税率は3%、住宅用以外の家屋の税率は4%とされています。
今回のケースでは、知人Eが被相続人Aの自宅土地建物を取得していますので、知人Eは被相続人Aの自宅土地建物の固定資産評価額×3%の不動産取得税を支払うことが必要です。
登録免許税
不動産を取得したときに、自身が所有者であることを証明するためには法務局で登記手続きをすることが必要です。
登記手続きをする時に支払う税金のことを登録免許税といいますが、相続・遺贈どちらでも登録免許税がかかります。
・法定相続人が取得するパターン
固定資産評価額×0.4%
・法定相続人以外の受遺者が取得するパターン
固定資産評価額×2%
今回のケースでは、知人Eが、「被相続人Aの自宅土地建物の固定資産評価額×2%」の登録免許税を支払う必要があり、法定相続人が取得した場合と比べて5倍の登録免許税を支払うことになります。
小規模宅地の特例が受けられないケース
小規模宅地の特例とは、相続や遺贈により取得した宅地等の不動産について、一定の面積までの部分については、一定の要件を満たした場合に限り相続税の課税価格に算入する価額割合を減額する制度です。
この制度は、相続開始前に被相続人と生計を同じにしていた被相続人の親族しか使うことができませんので、今回のケースの知人Eは小規模宅地の特例を受けることはできません。
また、もし遺言書で長男Cが被相続人の自宅土地建物を取得したとしても、別居して生計を同じにしていない場合は小規模宅地の特例は受けることができませんので注意が必要です。
住民税は対象とならない
相続で取得した財産は相続税の対象になるので、被相続人の金融資産・不動産を取得した場合でも、所得税の対象となる所得に含まれず、住民税は対象となりません。
遺言を作成する前に、相続税を計算してみよう
今回は、遺贈の場合の相続税を実例をもとにシミュレーションしました。
善意で遺言を書いたつもりが、相続税が思いがけず高額になり受遺者の負担となるケースもあります。
遺言書を作成する場合は、ご自身で一度計算し、高額な相続税とならないような配分を検討してみましょう。
相続税の計算が不安な場合は相続に強い税理士に相談することをおすすめします。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
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