■お役立ちコラム特集
2021/07/07
「相続税と贈与税の一体化」とは?メリット・デメリットを解説
今回は、相続税と贈与税について税金の税率をご紹介の上で、相続税土地の贈与税が一体化された相続時精算課税制度について詳しくは説明します。
その上でメリット・デメリットについても紹介していきますので、今後の財産の継承にお役立てください。
相続税と贈与税について
現在の相続税と贈与税について紹介していきます。
生前贈与があった場合に相続税として加算されるのは相続が確定してから3年以内に贈与されたものとなります。
贈与税と相続税では税率が異なる他、年間110万円以下であれば課税対象外となりますので税金対策として少しずつ財産を贈与するという動きもあります。
相続税とその税率
相続税とは、財産の持ち主が無くなった時に、基礎控除額を差し引いた課税対象額に発生する金額です。
基礎控除額の求め方は以下の通りです。
3,000万円+法定相続人の人数×600万円=基礎控除額
この基礎控除額を超過した分に課税されるのが相続税となり、税率は以下のようになります。
相続する財産が多ければ多いほど、税率は高くなっていきます。この税金の対策として生前贈与を長期間に渡って行うという方法がありました。
贈与税とその税率
続いては贈与税についてです。贈与税は生前に財産を相手に贈与する際にかかってくるものです。
贈与税に関しては年間で110万円までであれば非課税となります。
110万円を超過した時の税率は以下のようになります。
値段が上がれば税率も上がるという点においては同じですが、生前贈与の方が金額は発生する金額が相続税よりも低くなっています。
多くの場合は年間で110万円以下の贈与を行い課税対象とならないように財産を譲渡しています。
相続税と贈与税の一体化について
贈与税の課税方式には暦年贈与と相続時精算課税制度の2種類が存在します。
暦年贈与というのが元日から大晦日までの1年間に贈与された財産が基礎控除額である110万円を超過した際に設定された税率に応じて税額を計算して納付するものです。
相続開始より3年以内に贈与されると相続財産に加算されます。
一体化されている相続時精算課税制度は、原則60歳以上の父母祖父母より20歳以上の子か孫に財産を贈与する際に選択できる制度となります。
相続税と贈与税が一体化された相続時精算課税制度とは
この制度は生前に贈与された財産が2,500万円までが非課税になり、相続発生時に過去に生前贈与した文も合わせて相続税が課税されます。相続時精算課税というのは生前贈与を行った際にこの制度を利用するかを選択します。
この制度が選択された場合は、生前に贈与された財産が累計で2,500万円までが非課税となりそれ以上が一律で20%の贈与税が課税されるというものです。
相続が発生すると生前贈与した財産そして相続した財産を合計し相続税を計算していきます。すでに贈与税を支払っている場合は差し引いて行きます。
自分の子や孫に対して生前贈与を行った際に利用するかどうかを選択します。
相続時精算課税はなんのためにある制度なのか
暦年贈与であればまとまった財産には高い税金が発生してしまいます。
しかしこの制度を利用することによって2,500万円以内であれば生前贈与をしても非課税枠となるので、すぐに税金の支払いが発生せずに済みます。
このことからも解るように、贈与税が多く発生してしまうような場合も税金を免除することができるのです。
こうした制度がある目的として、相続の対象である子や孫に早期に財産を移動させることで、消費の拡大を狙っています。
相続税と贈与税の一体化によるメリット・デメリット
続いてはこの相続税と贈与税が一体化された相続時精算課税に対するメリットとデメリットについて紹介していきます。
これから相続する財産の金額によっては、相続時精算課税の方が最適な場合もあります。
反対に金額や財産によってはデメリットの方が大きくなってしまいます。
今後財産を贈与する際は相続時精算課税の方がいいのかそれとも暦年課税の方がいいのか見極める必要があります。
相続税と贈与税の一体化によるメリット
相続時精算課税のメリットとしては、税金を安くすることはできないものの税金の支払いを先延ばしすることが可能となります。
2500万円までの非課税枠であれば、贈与税を気にして財産を渡すことができないという心配が不要となります。
暦年贈与の場合は贈与する金額が上がるにつれて税率も上がっていきます。
しかしこの制度を活用することによって2500万円を超過した場合であっても税率は20%となります。
暦年贈与の場合、4,500万円以上贈与しようとすると税率は55%なので、その差が一目瞭然です。
他の活用方法としては自社株式の評価が一時的に低くなった際に相続時精算課税を利用し、自社株式を後継者に渡してしまうという方法です。
評価額が低い状態で譲渡するので将来的に価値が上がっていった場合には節税の効果も見られます。継続して利益が生まれるものを生前に贈与して、相続税を減らすという活用のしかたもあります。
相続税贈与税の一体化によるデメリット
続いてはこの相続時精算課税のデメリットです。大きなデメリットとしてはこの制度を利用すると以降の贈与は全て相続時精算課税制度の対象となり暦年課税に戻すことができません。
暦年贈与に関しては年間を通して110万円以下であれば基礎控除の対象となり贈与税が課税されません。
この非課税枠がなくなるのが最大のデメリットです。
生前贈与を活用した節税は、この基礎控除額である非課税の部分を活用し長い年月をかけて少しずつ財産を対象に移動させます。
非課税枠を利用し将来的に相続税の負担を減らそうと考えている場合には、相続時精算課税は利用しない方が良いと言えます。
更にこの制度を使用することによって小規模宅地等の特例が使用できなくなります。
小規模宅地等の特例は、相続した土地が対象になってしまうため、生前贈与分は含まれないのです。
相続時精算課税制度を使用する場合は金額の大小にかかわらず税務署への申告義務が発生します。
贈与に関しては基礎控除枠内の110万円以下であれば申告義務はありません。
どちらが良いか迷ったら税理士に相談する
相続税と贈与税の一体化に関してはメリットとデメリットがあります。相続時精算課税制度に関しては節税というよりも相続時のトラブルを回避するという目的も大きく、生前に多くの財産を子供や孫に渡すのに大いに活躍します。
今後値上がりしそうな財産がある場合や、贈与時に評価額が下がっている資産などはこの制度を活用して贈与することでのちのちの利益も期待できます。
一方、一度でもこの制度を使ってしまうと暦年贈与に戻すことができなくなってしまうので、暦年贈与の基礎控除枠を活用し少しずつ財産を移動させる計画がある場合はこの制度は向いていません。
相続時精算課税制度を使用する前に、暦年贈与で財産を継承させるべきかしっかり検討する必要があります。
相続時精算課税を使用する場合に関しては自身で進めるよりも税理士に相談して自身にとってどちらがいいのか見極めてから活用することをおすすめします。
はじめての相続編集部
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