■お役立ちコラム特集
2021/07/07
【2021年度の税制改正ポイント】4月1日から生前贈与が変わる
今回の改正で、相続に関わるのは、生前贈与、固定資産税、事業承継税。そのポイントを見ていきましょう。
生前贈与の特例が延長に
相続税対策として多くの人が利用しているのが「生前贈与」です。生前贈与に関わる特例が改正されました。
まず、年間110万までは非課税になる「歴年贈与」という相続税の贈与法があります。
110万を越える金額には相続税がかかりますが、110万以下の場合は非課税になる相続税の対策です。
この「歴年贈与」については、改正されておらず、引き続き相続税対策としては、有効な贈与法です。
一方、子供や孫などの直系尊属に対してある条件のもとに「一括贈与」し、非課税になる特例があります。
1.結婚・子育て資金、2.住宅取得資金、3.教育資金と3つの条件があるのですが、これらの特例が改正されています。詳しくみてきましょう。
結婚・子育て資金の一括贈与の改正
結婚や子育て資金を一括贈与した場合は、贈与税が非課税になる優遇措置があります。
受贈者(贈与を受ける人)は50歳未満が対象で、子供でも孫でも受け取ることができます。
この特例期間が2年延長され令和5年度(2023年)3月31日まで適用とされました。
結婚資金の場合はひとりあたり300万、子育て資金(出産や不妊治療、子供の医療費や保育料)の場合は1000万までが非課税になる、若い世代にとってはとても嬉しい制度。
また、一受贈者の年齢の下限が18歳以上に引き下げられたため、孫の年齢が18歳になれば贈与を受けられることになります。
ただし、この特例を適用するためには、金融機関を通じて贈与を行い「結婚・子育て資金非課税申告書」を出す必要があります。
また、学校などに支払いを行った書類(領収書)なども必要になっているので、個人間で贈与をやりとりするのではなく、後日、歴年贈与と認められるための書類が必要になります。
悩んだ時は、金融機関や司法書士などに相談する方がいいでしょう。
住宅取得等資金の贈与
平成27年度(2015年)から、住宅取得や増改築に関わる資金の一括贈与について、非課税限度額が設けられていました。
20歳以上の子や孫(直系卑属)であれば、特例の対象となります。この限度額が改正により変更されました。
住宅取得等資金の贈与税は、住宅の種類によって多少税率が変わります。
耐震・バリアフリー・省エネ対策ができている住宅ほど、資金を贈与した時の非課税限度額が大きく設定されています。
また、消費税10%が導入される前に購入した場合と、導入後の非課税限度額も変わります。
わかりやすく、消費税10%の場合をみてみると、受贈者の年間合計所得金額が2000万以下で床面積が40〜240平米の住宅を取得する場合(40〜50平米の新築の場合は、1000万以下)、省エネ・バリアフリーの住宅なら1500万、それ以外の住宅なら1000万までが非課税となります。
改正前は、省エネ・バリアフリーの住宅なら1200万、それ以外の住宅なら700万(いずれも消費税10%の場合)、住宅面積も50平米以上となっていたので、改正により限度額が増えたといえるでしょう。
また、一人暮らし用などの小さな(狭い)住宅を購入する子供にとっても適用されることになり、住宅購入をしやすい改正となっています。
ちなみに省エネ・バリアフリー住宅は、住宅性能証明書や建設住宅性能評価書の移し、長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写しなどが必要です。
購入の際に不動産業者やデベロッパーに確認しましょう。
教育資金一括贈与が厳格化
教育資金の一括贈与は、令和5年(2023年)3月31日まで適用とされています。
30歳未満の直系尊属(子や孫)の受贈者が、教育資金のために贈与を受けた場合は、ある一定の非課税枠が設けられる特例です。
こんかいの改正でも、学校に支払う教育費なら最大1,500万円、学校以外の教育機関に支払う場合は最大500万円まで非課税になり、非課税限度額自体は変更ありません。
ただし、今までは贈与者が贈与して3年以内に亡くなった場合は、残金については課税対象とならなかったのですが、改正後は、亡くなった時期に関わらず、残金に対して課税されることに改正されました。
例えば、祖父が孫に1,500万円一括で教育資金を生前贈与し、まだ1,000万円を使わないうちに祖父が亡くなったとします。
今までは贈与後3年以降に亡くなった場合は、教育資金が余っても相続税がかかりませんでしたが、今度の改正では、残額の1,000万に対して贈与税がかかります。
しかも孫の場合は、直系の子供よりも相続税が増えることになり、税額2割増しの加算となってしまいます。
また、30歳になり、教育資金口座に残高があった場合も、残額とみなされ同様に課税対象となってしまいます。
教育資金の一括贈与は、今一番注目されている相続税対策です。
極端な話、孫が五人いれば、1,500万×5=7,500万が非課税とできるのです。
ただし、非課税と認めてもらうためには、金融機関を通じて相続を行い、「教育資金非課税申告書」を提出してもらう必要があります。
ただし、学校以外の教育機関に支払う場合も対象となり、習い事(学習塾やスポーツ、芸術など)のレッスン料だけでなく、これに関わる物品の購入代や渡航費交通費なども認められます。
範囲について調べたい場合は、文部科学相のホームページで調べてみてください。
固定資産税の見直しが据え置きに
相続税とは直接関係がありませんが、固定資産税の見直しも据え置きになりました。
固定資産税は3年に一度評価替えが行われ、地価に合わせた税率が決められます。
今年2021年度は評価替えの年にあたりましたが、コロナ禍以前(2020年1月1日)の高い地価が評価の基礎となり、税負担が重くなるおそれがありましたが、地価上昇があっても、2020年の時と同じに据え置きになるか、地価が下がる場合は、固定資産税も下がることになっています。
法人の場合は事業承継税制も確認を
一般の人にはあてはまりませんが、非上場株式会社の後継者に対する相続税の特例も一部改正されました。
家業を継ぐ人、中小企業を継ぐ人にとっては、確認したいポイントです。
事業承継税制とは
会社の経営者が、後継者に自社株式などを譲渡した場合に、一定条件のもとに、一贈与税などの納税を猶予し、後継者から次の後継者に株式を承継した場合に、該当の税金が免除される仕組みです。
2018年度の税制改正時に特例措置が設けられ、株式贈与する時と相続する時に、現金負担なしで承継できるようになりました。
ただし、特例措置が10年間と限定されているため、対象期間内に事業承継できることが大切です。
特例措置が設けられた2018年1月から2027年12月までの間に、3代目に継承しないと相続税は免除されません。
特例措置で変わったポイント
特例措置で変わった大きなポイントは4つあります。
1.対象者が拡充
一人の経営者からひとりの後継者だけが対象でしたが、今回の改正では最大3人の後継者まで対象となりました。
2.対象株式の拡充
今までは、発行された株の3分の2に対して、贈与税の猶予割合が80%でしたが、今回の改正では、全株式(無議決権株式などを除く)が対象になり、猶予割合も100%に引き上げられています。
3.雇用維持要件の緩和
事業承継税制では、事業継承後5年間で平均8割の従業員の雇用維持が定められています。
今回の改正では、雇用8割を維持できなくても猶予を受け続けることができます。
(その場合は、実績報告書を、認定経営革新等支援機関の確認を受けて都道府県庁に提出する必要があります)
4.経営環境の変化に応じた差額免除
第三者への会社の売却、廃業した場合などは、売却・廃業時の株価をもとに再計算し、当初猶予額との差額について免除を受けることができます。
特例措置を受けるためには
特例措置を受けるためには2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県庁に提出し、2027年12月末までに先代経営者から贈与・相続により株式などを得る必要があります。
生前贈与を考えるきっかけに
コロナ禍で経済が停滞している中、贈与税の特例は、引き続き利用できるチャンスが増えることとなりました。
多少、変更点がありますが、祖父母が元気なうちに、効率よく相続を行うきっかけとなります。
国税庁に問い合わせてみたり、HPで調べたりできますが、悩んだ場合は司法書士や法律事務所に相談してみましょう。
はじめての相続編集部
情報提供と専門家マッチングで円滑な相続税の手続きをサポートすることをミッションに掲げた、マッチングWebメディア「はじめての相続」の編集部です。
出版社が運営していることが強みで、「利用者目線」と「わかりやすさ」を心掛けて相続に関する記事を発信しております。
子育て中のママや学生など、様々なバックグラウンドを持つメンバーが所属しています。
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